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霜月さんはモブが好き  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻
第二部

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第百十話 哀れで惨めで可哀想なヒロイン

 今は空き教室で、キラリと二人きりの状態である。

 彼女は男の俺にはよく分からない化粧道具を手に取って、色々と俺の顔や髪形をいじりだした。


「前はごめん。アタシ、ちょっと変な感じになってたじゃん?」


 手を動かしながら、口も動かす。

 俺は望んでいないのに、キラリは会話を試みる。


 無言を嫌うような態度が、悲しかった。

 中学時代は逆に無言を好むくらい、しっかりとした自分の世界観を持っていたのに……。


 あれだけ俺に言われても、まだ媚びようとしている。

 前までの彼女なら、真向から立ち向かってきただろう。自分の思いを、信念を、思いっきり俺にぶつけてきただろう。


 そんな彼女は、本当にかっこよかったのに。

 今はもう、見る影もなかった。


「別に、こーくんのことを怒らせたいわけじゃなかった。あの時はちょっと、おかしくなってただけ……だから、ごめんね? アタシはただ、中学の時みたいに……気軽に話したかっただけっていうか……」


 ――この子も、ダメか。

 竜崎と同じようにキラリもまた、ただのサブヒロインでしかないのか。

 梓みたいに、メインヒロインに食ってかかるような片鱗はまったく見えない。どこまでいっても、主人公様に都合よく扱われるだけの、可哀想な女の子でしかない。


 仮に竜崎の物語が通常のハーレムラブコメであれば、キラリはただの数合わせ要員になっていたかもしれない。それくらい彼女は、惨めなキャラクターになっている。


 そんな彼女に今更強い言葉をかけるのは、可哀想だ。

 申し訳ないが……俺はキラリに同情していた。俺も別に、こんな風になってほしかったわけじゃない。もしかしたら奮起してくれるかもと思って、厳しい言葉をかけた――という側面もある。


 だけどキラリは、乗り越えてくれなかった。

 だからもう、これ以上責めるのは可哀想だと思ってしまって……俺は、口をつぐむことしかできなかった。


「…………あ、あのさっ」


 でも、キラリはなおも言葉を続ける。

 一生懸命、俺の気を引こうとしている。モブキャラあった俺に媚びを売るなんて……哀れなヒロインである。


「そういうわけだけど、別にこーくんが嫌なら無理しなくていいし? アタシは、不快な思いをさせたいわけじゃなった、ってだけだから……」


 知ってるよ。

 俺も意地悪したいわけじゃないよ。

 だからもう、何も言えない。

 君を傷つけたいわけじゃないんだ。


 だから……お願いだ。もう、黙ってくれ。

 これ以上そんな可哀想な姿を見せられたら、泣いてしまいそうだ。


 それくらい今のキラリは、痛々しかった。


「えっと……で、できた! ほら、見て? アタシ、結構メイク上手でしょ? こーくん、めちゃくちゃイケメンになってるじゃんっ!」


 口も動いていたが、同様に手も止まることはなかったので、メイクはきちんと終わっていた。手鏡を見せられて、俺は思わず目を大きくしてしまう。



「上手だな……」


 まるで、俺じゃないみたいだ。

 鏡に映っていたのは、なかなかの男前な顔の人間だった。


 竜崎ほどではないが、その一歩手前くらいには見える。

 少なくとも、普段の俺よりははるかにかっこいい。


「そ、そうでしょ!? アタシ、高校生になってメイク頑張ってるからっ。にゃははっ、こーくんに褒められたら嬉しいかも?」


 思わず発してしまった一言で、キラリはすごく嬉しそうな顔をした。

 その表情がまた、心を痛くする。


 まるで、道端に捨てられた子猫を、一度抱いてしまった後のような。

 色々と考えて飼えないことを悟って、箱に戻した子猫が呼びかけるように鳴いているような……そんな姿が、今のキラリと重なった。


 やめろよ。

 この程度の一言で、そんなに喜ぶなよ。


 なぁ、キラリ……君はそんな人間じゃなかっただろ?

 なんでこんなに、弱くなってしまったんだろうか――

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― 新着の感想 ―
[良い点] 葛藤がよく書けていると思う [気になる点] 幸太郎がキラリに求める姿になったとき、幸太郎はしほが居るからと突き放すだろうに、なぜ自分の理想を求めるのか? その辺のちゃんとした理由に気が付く…
[気になる点] ヒロインの気持ちが自分に向いているって知ってから調子にのって露骨に周りを見下すようになったな。 まるで自分の思い描く過去の理想の幼馴染みでなければ失敗作みたいな思考を押し付けてくるか…
[一言] 皆、上から目線と言うが単純に主人公の思考がロボよりで 家庭環境のせいで情緒があまり育ってないからでは……?
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