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第3話:山賊焼の山賊は、『取り上げる』と『鶏揚げる』の語呂らしい。

 前回、スライムの頭突きで死んでしまった主人公カイト。ドワーフたちは確認できたことから、その汚名は一生残り続けるんじゃないかと思われる。

 まあ、幸か不幸か、【協会】の中でも最も【王都】に近いらしい。山を一つ越える、それはカイトにとって些細な事のように思えたが。

「それが難しいんだけどな」

 そもそも、カイトって5年間ロクに運動してこなかったんでしょ。そうです、ふくよかな25歳、そう言う設定があったんです。

 初めての戦い、彼の無力さを思い知らされる第3話……。


_「人に天賦の才何てもんがあるんなら、それは差異って書くべきだぜ」

「銀貨1500枚で良いよ」

 それが高いのか、低いのか分からない。

「一回目は、初回サービス価格で半額にしといたんだよ」

 へっへっへ、2番目のおっさんが言った。

 復活に、価格サービス何てあるのか。そもそも、値段を付けるというのも、どうも。


「あんたが自分で死んだんだろ?」


 顔に出てしまっていたらしい。

 今思い返せば、何の躊躇もなく自分の首を掻っ切っていたわけだ、そりゃあ戦々恐々とする。僕は訓練された敵国のスパイか何かかな? それとも、5年にわたる修行の成果か。

 自分が少し、恐くなった。


 バックから硬貨の入った袋を取り出してみる。が、丁度いい額が無く、金貨を一枚ぽいと投げる。

「お客さん、持ってるね」

 3人の声がぴったり揃った。商人の目であった。

 よく考えてみれば、僕は金銭システムが分かっていない。これは致命的なことだ。


 例えば、この金貨一枚で何ができるのだろうか。


 冒険者として、装備の購入や雇うという行為は必須になるだろう。他に、洗礼にもお金を要求するかもしれないし、まして王都に関所がある可能性だってある。

「はいよ」

 ドスンッ、壺でも売りつけられるのかと思った。

 目の前に、膨れた革袋が2つ並んでいる。ちらと見える中身は、銀貨……?

「数えてみてくれ。ざっと6000枚はあるよ」

 嫌だよ、嫌がらせかよ。

「次の復活は、銀貨1000枚で良いんですね?」

 するとざっと、27回ほど復活できる。

 マリオで考えれば造作もないが、そもそも死とは一回限りのはずなのだ。十分におかしい。

 3人の口が、同時に開いた。

「いいや、金貨一枚だ」

「値上げだとっ?」

 安直だった。そりゃあ一万円札をちらつかせる様なことをしたんだ、食いつくに決まっている。認識を改める必要があった。


 コイツらは、商売相手である。

 前の金銭システムを持ち込んではいけない。まだ株価の様に動いている可能性もあるんだ。


「よし、それでだ。今日中に【王都】に行きたんですが」

 山を一つ越えた先だって!?

 そんな絶好のチャンス、今すぐにでも手に入れるべきである。

「今日はやめときな。時間が遅い」

 ああ、村を出たのが午後。スライムで死ん……、が夕刻だった。

「けど、明かりがあれば……」


「いや」

 3人が困った顔つきになる。


 3人目がやっと口を開いた。

 どこか苦しげだった。

「俺たちがやっていることは、商売だ。だから誰に何を言われようが、喩えあんたに嫌味謂われようがやるさ。切り掛かられたら、多少は魔法も心得ているしな」


「だから、アイツらがやっていることも咎めはしない。」

 2人目も続ける。


「山には山賊がいるんだ」

 1人目は直接言った。


 一つの、生き方。

 驚きはしない、日本にだって昔は普通にいたという。山賊も、海賊も。

「避けては通れませんか?」

「無理だな」

 即答だった。

「奴らにとって、山は体の一部なんだ。たとえ相手が冒険者であっても、多少の不利なら地の利でなんとかしちまう」

 そうでなきゃ、とっくに淘汰されている。強敵、それだけが情報だった。

「それに」

 2番目が言う。


「奴らの頭は、元冒険者。王立勅撰騎士団にも選ばれていた、相当の手練れなんだ」


 生きる為だけじゃない。

 彼らに、いや彼にとって、山賊とは憎しみのやり場でもあったのだ。

「そんな事、言われてもなあ」

 僕には、知らぬ存ぜぬなのであった。

 そもそも、爺の話にもあった【王立勅撰騎士団】とはどんなものなのか。どう考えても、相当の手練れが集まった専門集団っぽいけれど。

 僕でも入れるだろうか。

 【王都】には、無限の可能性があるように思えた。失敗の匂いだった。


「キュッキュキュ、っぎゅ!!」

 うるさい、うるさいうるさい。


 ガツンッツ! ……、カイトはスライムの頭突きで死亡した!


っは、はあ。

 土の匂いに少し咽る。

 相変わらずの湿気た空気に、ランタンの火が影を落とす。石壁に、太い木の根が見え隠れしていて、お洒落だなあと思う。気持ちが、落ち着いた。

「大丈夫ですかい?」

 多分、2番目のおっさんだった。

 緑色の木のドア、向こうから声だけが聞こえる。

「魘されていましたぜ、向こうまで声が聞こえてきやした」

「起こしてしまったなら、申し訳ない」

「いや」

 ドアの向こうで、軽い嘆息があった。

「だんだんと死んでいくんです」

 穏やかで、もの悲しい口調だった。

「いや、確かに死んでいる。そして、復活するわけだ。皆、最初はその一回一回に感情があって、例えば悔しいとか悲しいとか。時には嬉々としている。ただ、だんだんと死んでいくんです」


 人間の死には、3種あるという。

 一つは、肉体的な死。

 二つは、精神的な死。

 三つは、誰からも忘れ去られるという、存在の死。


 これは、二つ目の死の話なのだ。

「ある者は、故郷に帰っていく。ある者は、何も言わずにどこかへ行ってしまう。【王都】に辿り着けるのは、僅かな人間なんですよ。此処に限らず、ね」

 僕は考えなかった。

「それでも、僕は行くよ」

「そうでなくては、いけませんね」

 木のベッドなのが、気が利いていない。受刑者みたいで、落ち着かない。そんな夜に、僕はどうして眠りたかった。


 夢を見た。

 気持ちの良い、渓流を滑っている。

 それは何時にか感じた、不思議と心地よい感覚。その中で、その流れに身を任せている。そしてその流れに、終わりを感じたその刹那。

 ざぶんっ、僕は着水していた。

「よくぞ、此処まで来てくれました」

 聞き覚えのある、温かい声だった。

「決断してくれたこと、嬉しく思います。此処に来たことで、貴方は何も失わなうことはありません。だからどうか、恐れないで」

 貴方は誰? どうして、僕なの?

 そう聞くことに、僅かながらの躊躇をして、僕は気付いてしまう。

 そこは湖の様な水の中で、僕は中心に浮いていて。

 僕を中心にして、墨汁みたいな黒が、水を汚していってしまうのを。

「待っていますから」

 声が消えていく、恐れが充満する。溺れてしまっ……。


 起きた時、まず木のベッドの硬さを感じた。

 背中もバッキバキだ。

 もしかしたら、彼らは素で気付いていないのかもしれない。これが人間にとっての最善と、必死に硬い巨木を切り倒してくれているのかも。

「云わない人間達が悪いな」

 起き出して、用意された小部屋を後にする。


「ベッドの調子はどうでした?」


 1番目だった。

 いやあ、ひどかったよ。そもそも僕ら、ドワーフじゃないからね。


「うん、素晴らしかったよ」


 ああ、明日もあのベッドかもしれない。

「ええ、そうでしょうよ。最高級のカロの原木ですからね」

 ええ、そうでしょうよ。

 あんたらはそういう奴等だったよ。


「で、どうやって此処から出ればいいんですか?」

 3人が真面目な顔になる。

「もう、行くんですね?」

「ああ、勿論」

 この意志が、闘志が失われないうちに。兎に角、ぶつかっていくしかないのだ。

「だったら、これを持って行くと良い」

 そう言って、3番目のおっさんは鍵を渡してくれた。小さな、金の鍵だった。

「これは?」

 手に取ると、小指くらいしかない。

「鍵、此処の入り口のカギですぜ。」

「死んじまうより、傷だらけでも帰ってきてもらった方がいい。扉の前で、手をかざすんです。それは貴方の一部、所謂、称号として権利を持たせてくれるんです」

 Suicaの様な感覚だろうか。

 称号という言葉に引っかかった。道具ら実物と、一線を引いているのだろうか。

「それなら、硬貨の様に奪われはしないだろうし」

 相手は山賊なのだ。

 確かにただの鍵なら、奪われるだけだ。最悪、此処を襲撃されたりでもしたら……。

「まあ、彼らにとって俺たちは商売仲間みたいな関係だ。皮肉なもんだがな。だから最悪は無いにだろうし、持って行ってくれ」

 

〔カイトは、『ドワーフの兄弟』の称号を得た〕


 カイトの文字の横に、『ドワーフの兄弟』なる文言が付いている。

 その真下のスラ……、とまあ、残っているのが不覚ではあったが。ただ純粋に、僕は嬉しかった。


 家族何て、血が通っているだけで全然違うのよ。比べないで。


「頭に気を付けて下さい」

 何回、この言葉を聞いただろうか。

 その数だけ、頭上には太い木の根が張っていた。土の壁に、足場までもが隆々と変化していくので、歩きづらい事この上ない。

 目の前の一番目のおっさんは、それこそ慣れたもんだった。そもそも、大きさの違いもあるか。

 幾つもの部屋を通った。

 多分、今まで戦った冒険者たちの数と同じなのだ。これは、ただの僕の推論だけれど。


「光だ……」


 本当に自然に、そう呟いていた。

「覚えておいて下さい、あれが帰りの入り口になります」

 何の変哲もない、強いて言うならちょっと小さすぎる。こげ茶色の、木のドア。

 開けると、そこは木の根と根によって隠されていた。とある、巨木の下に出た。

「これが、カロの木です」

 しっかりとした幹だった。地下の根も、彼の生命線なのだろう。

「行ってくるよ」

 そう言って、背後に手を振る。

「行ってらっしゃい」

「またお会いしないことを願って」

「どうか噛ませ犬にはならないで」

 3人が小さくなっていく。森の中を進んでいく。と言っても、ほんの数分。


『此処から先、インプ・ラ・キャブラ様の支配地である。立ち入る者、容赦ないうえ立ち去るべし』


「ご丁寧にまあ」

 想像と少し違うが、まあ。

 今までの数分、カロの樹林帯だったのだろう、背の高い木ばかりであった。

 ただ、この先……。

 木に刻まれたこの文字から先、小川を隔てた向こう側。

 まず木が、違う。

 明らかに、背が低く毒々しい。此処から見たところ、ざっと2種類。紫色っぽい木と、あとオレンジ? っぽい、やはり背が低い。

 葉は茂っているので、向こうから丸見えという訳でもなさそうだが。

「行こうか」

 そう自分に言い聞かせるように言って、僕は小川へと一歩を踏み出す。ひんやりとした、ごく普通の小川だったように思う。幅も狭い。


 ポキンッツ、小枝を思い切り踏みつける。

 次の瞬間には、僕は彼らの森の中だった。


_大抵は、自分で呼び寄せているものである。触らぬ神に、祟りは無いのだ。


 



 作中にもあった通り、やはり勢いって大切だなあと思います。

 一億円の稼ぎ方、みたいな本をブックオフ様で立ち読みしたところ、あっ。

【早さとは情熱である。】

みたいに書いてあって、ちょっと違う形で応用している今でゴザイマス。

 同じ本の中に、

【早起きは、六文の得!!】

みたいに書いてあって、12時起きの自分を反省したりしました。


 おおう、全く作品に触れていない。

 強いて言うなら、今回で本当は戦ってもらいたかったのですが……。

 自分の時間の都合上、俺たちの戦いはこれからだ! みたいな終わり方になってしまいました、次回作にご期待ください見たいな終わり方だけは勘弁ですね。

 ふでは、次回でお会いしましょう!!

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