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7.成長とお誘い

 薬学の専門学校に進学したい。


 そう両親に伝えた。「女が通う必要はない」などと反対されると身構えたが、あっさり快諾してくれた。

 期待していたお兄様が薬学の道に進まなかったことが大きく影響したようだ。


 それからは、入試対策にありとあらゆる科目を毎日勉強する運びとなった。

 薬学の基礎知識に応用知識、実技練習。魔法学校の方で学ぶ予定だった、マナーレッスンや教養、更に魔法の座学や演習など……様々な勉強をし、急に忙しくなった。


 勉強に追われるということは、リオと会える時間も減るということに繋がってくる。



「最近、全然クレアに会えないね」

 久々に会ったリオは、不満気。それもそうだ。今まで週に三回は会っていたのに、今は週一で会えれば良い方。不満を漏らすリオの気持ちも分かる。


 リオに会う日、勉強は全て午前中に詰め込む。入試対策を初めて三ヶ月。まだまだ覚えることはたくさんあった。

 一分でも惜しいのに、それでもリオとの時間は必ず確保する。私にとってリオと過ごす時はとても大切だし、モチベーションにもなる。


 しかし最近は、会えば会うほど彼との時間を増やしたいと欲張ってしまう。勉強漬けで疲れているからよりも、彼と会うと焦るからだ。

 

 リオの性格は全然変わってないのに、見た目は大人っぽくなってきた。

 ついこの前まで同じ目線だったのに、ちょっと見ない間に背も追い越されていたし、髪も少し伸びて色っぽく見える。

 十二歳を過ぎれば成長するのは当たり前。でも日に日に成長していく彼を見ると、なんだか置いて行かれそうな気がした。


「ごめんね。いっぱいやることがあって」

 ちなみにリオには専門学校を目指していることを伝えていない。本当のことを伝えると、何故と問い詰めてきそうだし、下手な嘘をつける自信も無かった。


 多分彼は、私がまた新しい植物を手に入れて育てたり実験したりするのに没頭しているのだと思っている。まぁ、そうだとしたら時間を作っている方だけど。本当に没頭したら一ヶ月ぐらい誰とも会わないことだってあった。

 今回、急に会えなくなっても怪しまないのは、そんな過去の私の行動からだろう。


「今度、二人で出掛けようよ」

いきなりリオがそう提案してきた。突然の発言に動揺が隠せない。

 彼の感じだと、従者もつけずに、だと思う。それってもしかして、デートなのでは……?


 自覚すると何だか無性に恥ずかしくなってきた。

 今まで会うとなれば家だったし、出掛けても母親たちと一緒だった。二人でなんて初めてだ。


「たまにはいいでしょ?」

 相変わらずの甘え上手で断りづらい。いや、断る理由なんてないんだけど。

「大丈夫かな、二人でなんて……」

 一応牽制してみたが、彼は私の心情なんてお構いなしでニッコリと笑った。

「大丈夫、俺が守るから」

 あぁ、カッコいい。

 昔は格好つけた発言をすると頑張っているように見えて微笑ましかったが、今はそんな台詞も似合う。

 そして知らない間に一人称が「俺」になっている。


 ますますゲームのレナードに似てきたなぁ、なんて頭の片隅で考えつつ、私は首を縦に振った。

「分かった。楽しみにしてる」

 私の返事に大喜びの彼。無邪気なその姿にデートだと意識しているのは私だけでは、と恥ずかしくなった。

 私はそんな気持ちを悟られないよう、彼の空いたカップにお茶を注ぐ行動で誤魔化すのだった。


 今日用意したお茶は、声変わりが始まって辛そうな彼のために特別にブレンドしたものだ。

 このソプラノボイスを聞けるのも、あと何回だろう……なんてね。


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