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51.鋭意作成中

 呪い魔法の免疫抑制薬は完成に近づいているのに、全く異なる薬の開発でまた最初からになってしまった。

 しかし今までの培ってきた経験が役に立っているのも事実だ。


 薬の作り方は非常に単純で簡単である。

 既存の魅了魔法解除薬に、使えそうな物を片っ端から調合していくだけだ。

 良さそうなものは完成した段階で、色や匂いで何となく分かる。素人目にはさっぱりだろうが、それなりに薬学者としての技術があれば見分けることが出来るようになる。


 呪い魔法用免疫抑制薬開発で、私に白羽の矢が刺さったのは、そのためである。

 調合するだけなら、どの生徒に手伝わせてもいい。大切なのは見極める目と調合のセンスだ。


 良さそうなものが出来れば保存し、悪ければ捨てる。完成して早々に処分するのは心が折れるが、もうそれにも慣れてしまった。

 私はものすごい勢いで試作品を作っていった。


「僕の研究もそのペースでやってくれればいいのにね」

 頬杖をつきながらお茶を飲む先生に嫌味を言われた。文句を言う前に手を動かしてほしいところだ。

「これは私の研究ですからね。先生の分は先生が主体となって動いてください」

「そんな正論なんか聞きたくない!」

 子どものように駄々をこねながら耳を塞いでしまった。この人、本当に講師なんだろうか。


 しかし先生がこうなってしまうのも無理はない。現在、呪い魔法の薬の研究が煮詰まっているからだ。完成まであと一歩というところまで来ていたのに、その一歩がなかなか難しい。

 先生の言う通りハイペースで作業をしたいが、先生の指示が無いと動けない状況だ。

 まぁ、これ幸いと言わんばかりに、私の実験を進めさせてもらっているんだけど。


「どうせ、どっかで僕と同じ目に遭うよ」

 悪魔のような囁きをしてくる。やっぱりこの人、本当に講師なんだろうか。

 そんなこと言われなくても分かっている。私の実験もどこかで停滞するに決まっている。それでも私は一日でも早く完成させなければいけない。


 使えそうな試作品がある程度完成したら、治験をしないといけない。どうせまた先生が「僕が実験台になる!」とか言い出すんだろうな。魅了魔法にかかった先生なんて、呪い魔法より見苦しいかもしれない。


 そこまで考えて、ハッとした。

「待って! 大問題が残ってるじゃないですか!」

 私は思わず大声を上げてしまい、驚いた先生がお茶をこぼしかけていた。

「ど、どうしたの?」

「抗体薬作ったところで、魅了魔法をかける人がいないと実験が出来ないですよ!」

 すっかり忘れていた。いつも当たり前のように投薬実験をしてきたから、そこまで頭が回っていなかった。


 魅了魔法は光属性しか使えない魔法だ。つまり光属性を連れてきて実験しないといけない。この国にもう一人、光属性がいるのは知っているが、そんな偉い人に頼めるのだろうか。というより、ただの伯爵令嬢がそんな人にお会い出来るほどの人脈なんか持ってない。


 どうしよう、と頭を抱えていると先生は「なんだ、そんなことか」と涼しい顔をしていた。

「大丈夫だよ。魅了魔法をかけられる知り合いがいるから」

 思わぬ発言に、再び大きな声を上げそうになるのを必死で抑える。

 もし先生が親しい友人だったら抱きついて喜んでいるところだ。


 さすが元王宮勤めといったところだろうか。すごい人脈だ。

 でも相手は、国の重役のような存在だ。元王宮勤めとはいえ、今は小汚い薬学講師である。

 ……よく知らない光属性のお方、付き合う人は選んだほうが良いと思いますよ。


 チラリと先生に目をやると、お茶を飲んでいただけのくせに、目が疲れたとか言いながら眼鏡を外して目頭を押さえていた。

 こんな眼鏡を外すときにレンズに触れるような人と知り合いだなんて……公言されないように口止めしといたほうが絶対に良いですよ。


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