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悪役令嬢??

「ようこそいらっしゃいました。カルボ様」


「ご招待ありがとうございます。マルゲ様」


真っ赤な瞳と腰まで伸びた、これまた真っ赤なサラサラ髪を持つ勝気な顔立ちの美少女。

マルゲ・リータ嬢へと挨拶を返す。

ここはリータ侯爵家の誇る豪華な講堂。

私はそこで開かれるお茶会に招かれ、やってきていた。


私はもう16才だというのに、社交界に顔を出した事は一度もない。

こういったお茶会にもだ。

貴族の子女ならば、16にもなればとっくにデビューしているのが普通である。

だが私は頑なに今までそれを拒否し続けて来た。


勿論理由はこの顔のせいだ。

こんな顔で大勢のいる前に出たら、どれだけ陰で笑われる事か。

それが憂鬱で今まで断り続けてきたのだが――

王子との結婚が決まり、お前も社交を実践で学んでいきなさい。

と、父の鶴の一声。

そこで私の引きこもり生活は終わりを告げる。


丁度お茶会からの誘いがあるから行って来いと命じられ、最初は渋りまくったのだが。

そんなにお茶会が嫌なら、別にいきなり社交界デビューでもいいんだぞと脅され。

私は渋々リータ家主催へと顔を出す羽目になったと言う訳だ。


「ふふ、一度カルボ様とはお話がしたいと思っていましたの。来ていただけてとても嬉しく思いますわ」


「こちらこそ、マルゲ様とあえて大変光栄です」


ふふふふふと2人の笑い声が大きな講堂に響く。

しかし本当に広いな、ここ。

お茶会には広すぎるこの講堂の奥には舞台があり、そこにはオーケストラでも開くのかと言わんばかりの楽器の数々が設置され。それを繰る大人数の奏者が楽器の前に着席していた。


まじでオーケストラ始まりそうなんだが、お茶会ってこういうものなの?

私はてっきり庭とかでキャッキャウフフと楽しく談笑するものとばかり思っていたのだが。


「あの?所で他の皆さんの姿が見当たらないようですが?」


「ええ、今日はカルボ様と私。二人でお茶会ですわ」


2人?

え?出た事ないけど、貴族のお茶会ってそんな小規模でやったりもするの?

それもこんな広い場所でオーケストラ付きで!?


そう言った事に疎い私ではあるが、流石におかしいと気づく。

そう言えばリータ家ではペペロン王子との縁談を進めていると、以前噂好きの侍女から聞いた事を思い出す。まさか手を引けとか言ってこないでしょうね?


流石にそれは無いか。

もう婚約は決まっている。

仮にそう言った交渉をしたいなら、相手は私ではなく王家にすべき事だ。

王家相手に侯爵家側からの離縁なんて、早々できる訳が無い事は相手だって重々承知のはずだし。


「さあ、どうぞお座りになってください」


マルゲ嬢はニコニコしながら私に着席を進めてくる。

何だか凄く帰りたい気分だが、とんぼ返りするわけにもいかず、軽く会釈して席へと付いた。


彼女が席に着くと同時に音楽が流れ始めた。

その音色から、用意された楽団が超一流だというのが伝わって来る。

楽器は余り得意ではないが、私も一応貴族の子女として色々教育されて来たのだ。

流石にそれ位は分かる。

高々お茶会に、大げさな物を用意した物だ。


「今日の為に特別に用意させたお茶なんですのよ」


「頂きます」


目の前に花柄の愛らしいティーカップが並べられる。

どうぞと勧めれたので、お茶の香りを楽しんでから一口すする。


「どう?お気に召して頂けて?」


「ええ。とても薫り高くて。素晴らしい物を御馳走頂きありがとうございます」


まあ正直私はお茶の美味しさというものが良く分かっていなかったりする。

その為、普段飲んでいる物との差が分からない。

そもそも家で出る物も基本的に超が付く程の高級品だ。

だから特別製を出されたとしても、普段飲んでいる物とそう変わり映えはしない筈なので、本気で差が分からない。

勿論そんな無粋な事を口にする気はないので、適当に褒めておいた。


しかし五月蠅いな、このオーケストラ。

音楽として楽しむ分にはいいのだが、こう音が大きくては相手の声が聞き取り辛くて敵わない


「お口に合ったのでしたら、良かったですわ」


またもや二人のほほほほ笑いが講堂に響――いや、響かない。

そこで気づく、このオーケストラは外部に音が漏れださない様にする為の防音だと。

周りに聞き耳を立てられたくない話か……

何か嫌な予感しかしないんですけど――


不吉な予感を感じつつも、私とマルゲ・リータ嬢のお茶会は続く。

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