MRI
「さて、と……」
小さく呟いて私は彼女の横。
ベッドの淵へと腰掛ける。
そして両手を優しく彼女の肩へとかける。
その途端少女はびくりと体を竦ませた。
どうやら警戒は解けていない様だ。
まあしょうがない。
私は別にお菓子あげてないし……
決して顔だけの事では無いだろう。
乙女としては、出来ればそう思いたい。
まあとにかくそれほど時間があるわけでもないので。
さっさと用件を済ませてしまおう。
「少しの間だけ目を瞑っていて貰えないかしら?」
「!?」
少女が驚いた様に此方へと視線を向ける。
その眼は明らかに怯えている。
正直怯えている子供に無理強いするのは少しあれだが、どうしても調べておかなければならない。
何故なら彼女は余りにも不可解過ぎるから。
それを確かめずに放置するわけにはいかなかった。
「ね、お願い」
少しでも安心して貰おうと笑顔を向ける。
まあ効果の程は殆ど期待できない気もするが、それでもやらないよりましと割り切って笑う。が、案の定彼女は怯えたままだ。
やはり無駄だったか……
もう別に魔法を見られても良いかという気になって来た。
例え彼女が私の魔法の事を周りに漏らしたとしても、小さな子供の妄想として周りは片付けてくれるだろう。
只その場合、彼女は自分の言葉を周りに信じて貰えず悲しい思いをする事になってしまう。
それは流石に可哀そうだ。
うーん、困った。
もういっそ手刀を叩き込んで気絶させる?
こんな小さな子に?
……それは……ちょっとねぇ……
王子相手なら遠慮なくぶん殴れる私も、流石に小さな子供が相手では躊躇われる。
取り敢えずもう一度だけお願いして。
駄目なら諦めてそのまま魔法を使うとしよう。
「お願いなんだけど、駄目かな?」
彼女の目を覗き込んで出来るだけ優しく囁きかける。
すると彼女は小さく頷いて瞼を閉じてくれた。
「やったぁ!」と嬉しさの余り声を出しそうになったが、慌てて両手で口を押える。
折角上手く行ったのに、驚かせて目を開けられてしまっては意味がない。
私はそっと彼女の顔の前に手を翳し、魔法を使う。
手から放たれた淡い光が彼女を覆う。
特に痛みが伴う訳ではないので、目を瞑っている限り、彼女は自分に何が起こっているのかは分からないだろう。
……!?
これは……
MRIの結果で思わず私は絶句してしまう。
だがこれで多くの謎は解けた。
バラバラに散らばった点が線を結び私の中で繋がっていく。
なぜ彼女が家の警備に引っ掛からず侵入できたのか。
目覚めてから一言も話さない理由。
そして全裸だった理由も。
一体誰が彼女を……
いや、それも何となく予想はつく。
だがとにかく今は……
彼女の体は酷い状態だった。
このまま放置すれば、彼女の命は……
そうならない様、私は別の魔法を彼女にかけ、同時に私の魔力を彼女へと注ぎ込む。
これでもう大丈夫なはず。
「もういいわ。ありがとう 」
私のが少女に言葉をかけるのとほぼ同時に、コンコンと扉をノックする音が聞こえてきた。
彼女達が返って来たのだろう。
どうぞと言うと扉が開き、侍女達が雪崩れ込んでくる。
その手にいっぱいのお菓子を積んで。
「お待たせ!」
少女の方をちらりと見ると、大量のお菓子に目を輝かせている。
こうしてみると普通の可愛らしい女の子にしか見えない。
そんなこの子を使い捨てにしようとするなんて……
私の中で怒りがこみあげてくる。
犯人には厳しいお仕置きをぶちかまして上げるとしよう。




