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目の前で不細工だと王子に笑われ婚約破棄されました。余りに腹が立ったのでその場で王子を殴ったら、それ以来王子に復縁を迫られて困っています  作者: まんじ(榊与一)
王子のターン

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幼馴染

王子様専用に控室の前まで行くと、扉の前に立つ警備兵がノックして私の来訪を室内に伝える。するとドタドタと控室から騒がしい足音が響き渡り、勢いよく扉が開け放たれた。


「おお、ハニー。来てくれたのかい。嬉しいよ」


中から王子が満面の笑顔で現れ。

両手を広げて勢いよく私に近づいてくる。

どう考えてもハグする気だ。


周りの目が無ければ正面から受け止めたい所だったが、いちゃつく姿を見られまくると婚約破棄する時あれな感じになっちゃうので、涙を呑んで回避する。

ああ、ほんと勿体ないわぁ。


「王子、お戯れを」


「ははは、照れなくてもいいじゃないか」


バカップルじゃあるまいし、人前でそんな真似して恥ずかしくない訳が無い。

この王子には羞恥心と言う物が無いのだろうか?


「お久しぶりですカルボ様」


部屋の中から真っ赤なドレスを纏った貴婦人が姿を現す。

マルゲだ。

王子に気を取られて全く気付かなかったが、どうやら彼女も王子に会いに来ていたらしい。


しっかしドレス良く似合ってるなぁ。

彼女の勝気な美貌と相まって凄く映える。


それに比べて私はオレンジのワンピースと、普段着の延長の様な何とも地味な姿。

しかも乗ってるのがこの顔と来てる。

正に彼女と私は月とスッポンならぬ、大輪の薔薇と道端に落っこちてるオレンジ状態だ。


これでこっちが第一夫人候補なんだから、世の中狂ってるとしか言いようがない

まあ正確には、狂ってるのは世の中ではなく王子の頭の中なんだけどね。


「なんだ?マルゲとハニーは知り合いだったのか?」


私とマルゲが知り合いだったのが意外だったのか、王子が驚き――つつも私の手に肩を回す。


この状況下でこの男は……

呆れて声も出ない。


「ええ、以前一度彼女とはお茶会で顔を合わせた事がありますのよ」


顔を合わせるどころか、貴方の家のお茶会で完全に1対1状態だったけどね。

ま、そんなくだらない突っ込みを入れる気など更々ないが。

さっきから彼女の視線が痛い。


まあ今の私と王子の密着具合を目にすればまあそうなるわよね。

このままでは視線だけで射殺されそうだ。

仕方ないので、私はさり気無く彼女に近づくふりをして王子の手から逃れた。


「お久しぶりです。マルゲ様も王子の応援に来られていたのですね」


”も”とはいったが、私の場合は半強制で。

しかもここへは両親に言われて渋々顔を出しただけだから、真剣な彼女を私と一緒くたにするのは失礼な気もしたが、まあ細かい事は考えない様にしよう。



「ええ、王子様には幼い頃から懇意にして貰っておりましたので」


ええ!?幼馴染なの?

だったらなぜ自分が婚約者に選ばれたのか全く理解不能だ。


格付けはほぼ五分。

相手の方が遥かに美人で王子とも気心も知れていてる。

この状況下で何故私に婚約の話が周って来たのだろうか?


考えられる可能性は3つ。


1、王様がぼんくらで、何も考えずそれこそ候補一覧の相手をあみだか何かで決めたとか。


2、お父様が超やりてで無理やり婚約者の席へと捻じ込んだ。


3、リータ家の侯爵――つまりマルゲの父親が無能すぎて私の父に良い所を持ってかれた。


4、3つ考えているうちに思い浮かんだことだが、マルゲ自身に致命的な何かがあるとか?


「そうだったんですね。幼い頃の王子様を知ってるなんて羨ましいですわ」


マルゲをしげしげと眺めてみるが、特に問題点は見当たらない。

前回といい、今回といい、立ち居振る舞いにも問題はなさそうに思える。

ひょっとして何らかの病気?

いや、そんな物抱えてるんだったらそもそも第二夫人だって怪しい筈だ。

となるとやはり1~3のどれかって事になるわね。


「実はこいつとの縁談話が持ち上がった事があるんだぜ」


知ってる。

噂を耳にした事があるから。

ていうか現婚約者とその当人の前で何故その話をする?

空気が読めないにも程がある。


早く何とかしなければ不味い。

このまま空気の読めない珍妙な行動をさせ続けたら、王子の頭の不具合を直すころには周りから嫌われまくって酷い事になっていそう。

以前の中傷はグーパンで水に流したから、もう余り恨みはないし。

王子が余程の状況に追い込まれるのは私の望むところではないのだ。


「けどまあ、無いよなぁ。子供の頃から兄妹の様に育ってるのに、今更結婚だなんてあり得ないぜ。だからハニーも安心していいよ」


別に心配などしていない。

寧ろくっつけと思ってます。

はい。


しかし何故縁談が纏まらなかったのかこれではっきりした。

何もかも全て ペペロン王子(あんぽんたん)のせいだったという訳だ。

マルゲの方に視線をやると、なんともやるせない切なげな表情でをしている。

あれだけはっきり出ている彼女の表情にも気づかないとか、兄妹が聞いて飽きれるわ。


私が呆れ果てていると、王子はサラリと肩に手をまわし私を抱き寄せる。


「王子、お戯れを」


「ははは、照れるな。俺達はもう夫婦の様なものだろ」


うん全然違う。

逃れようにも、今度はがっちりホールドされて王子の腕から逃げられそうにない。

普段なら興奮物のシチュエーションなのだが、流石に彼女の気持ちを考えると喜ぶ気には全くならない。冗談抜きで勘弁して。


更にキスまで迫って来る王子。

お戯れを連打して躱す私。

顔を引きつらせるマルゲ。


正に地獄絵図。

久しぶりに本気で王子の顔面をぶん殴ってやろうかと思ったわ。

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