意外
キィンと乾いた金属音が響き、剣がクルクルと宙に舞う。
剣を弾かれた男の首元に剣が付きつけられた。
「勝負あり!勝者ペペロン王子!」
勝負はあっという間だった。
開始と同時の一瞬の勝負。
私は王子の圧倒的な剣の腕前に息を飲み、思わず唖然としてしまう。
そしてコロッセウム上の会場へと響く大歓声。
その大半が女性による黄色の――まるで発狂せんばかりの雄叫びだ。
はしたない声ではあるが、気持ちは分かる。
あの見た目にロイヤルな立場、そして鮮やかな周りを魅了する剣技と強さ。
これに狂うなと言う方が無理がある。
気づけば私も顔を紅潮させ、席から立ち上がっていた。
「やっば、ペペロン王子超かっけぇ」
「これ、カルボ。その様な口ぶり、はしたないですよ」
「あ……ご、ごめんなさい。お母さま」
思わずつぶやいた言葉を母に咎められてしまう。
両親の前でやらかしてしまったと思いつつも、だが正直あんな姿を見せられたらしょうがないと思わずにはいられない。
太陽の王子。
その言葉の意味を私は今はっきりと理解する。
人々を熱狂の渦に巻き込む姿は、正に世界の中心ともいえる太陽そのものだ。
まじかっけぇ……
「ははは、婚約者である王子が活躍したんだ。それぐらいは許してやりなさい」
「はい、あなたぁん」
母が父にしな垂れかかる。
人の事を注意しておきながら、母のその姿も大概はしたないとは思うが、黙って置く。
夫婦仲が良好なのは良い事だしね。
ちらりとラーの方へ眼をやる。
すました顔をしているが私には分かる、これは少々不機嫌な時の顔だ。
大好きな相手が別の誰かといちゃつくのを見せつけられるのだ。
きっと辛いに違いない。
そんな彼の恋を見てると切ない気分になる。
やはり私が一肌脱いでハム子との仲を取り持ってあげないとと、心の中で強く誓う。
「しかし王子は大層な剣の腕だねぇ。ラーから見て王子の腕はどう見える?」
「かなりの腕前かと存じます」
父がラーに王子の剣術的技量を訪ね。
ラーが笑顔で答える。
何故にラーに尋ねる?
彼に技量どうこうの事を聞いても、詳しく分からないと思うのだが。
私がそう思い首を傾げていると、父から意外な事実が聞かされる。
「そう言えばカルボは知らなかったね。彼は剣の達人なんだよ。だから彼は君の執事兼護衛を兼ねているのさ」
「え!?」
初耳だ。
そもそも私は彼が剣を手にしている所を見た事がない。
帯剣だってしていないし。
あ、いや。
執事なんだから帯剣なんかしていないのは当たり前か。
いやでもそれだと護衛の任務が果たせないし。
そんな事を考えていると、父が私の考えを呼んだのか言葉を続けた。
「彼は体術においても敵なしでね。帯剣していなくても、護衛としては十分すぎる程の実力を持ち合わせているんだよ」
体術迄納めているのか。
剣術の事と言い、彼の意外な一面に驚かされる。
正直ラーは細身だから、そっち方面はからっきしだとばかり私は思っていた。
ラーを思わずまじまじ見つめてしまう。
そんな私の視線に気づいて、彼ははにかみ照れ臭そうに微笑んだ。
「少し嗜んでいるだけです。そう大したものではございませんよ」
「はっはっは。謙虚だな、ラーは。もっと誇ってもいいんだぞ?」
「いえ、己が立場は弁えているつもりです。私はカルボ様の下僕で、只の執事でしかありませんので」
父の言葉にラーは恭しく傅く。
主に騎士が忠誠を誓うかのようなその光景に、周りの侍女から溜息が聞こえてくる。
しかし王子の件と言い、ラーの件といい。
今日は驚きばかりだ。
私の周りっていい男ばかりで困っちゃうわ、まったく。
ブスには心の毒ってもんだ。
ちょっと思うところあってタイトルを変更します。
呼んでくださっている人を混乱させてしまったら申し訳ないです。




