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憂鬱

憂鬱だわ……

姿見の前に立ち、これから行われる顔合わせに沈んだ気分で溜息を吐く。


自分で言うのもなんだが、私は可愛くはない。

不細工と言っても良いだろう。

それもがっつりと。


そんな私が王子様と結婚だなんて……

きっと彼は私の顔を見てがっかりするに違いない。

そう思うと憂鬱で溜息が止まらなくなってしまう。


「大変お綺麗ですよ、カルボお嬢様。もっと胸をお張りください」


本日何度目か分からない溜息を吐くと、背後から心にもないお世辞が飛んでくる。

私は振り返り、背後に居た黒い燕尾服をびしっと着こなした執事。

ラーを睨み付ける。


彼の名はラー・メン。

私付きの執事だ。

少々細身ではあるが背は高く、手足も長くてスラッとした体格をしている。

顔は中性的でまるで美女にも見える美青年。

短めに刈り揃えられた髪は漆黒の濡れ羽色で、その瞳も吸い込まれそうな程に黒く深い。

その瞳を見ていると、まるで魂を持って行かれそうだ。


「自分の事は自分が一番分かっています。お世辞は結構よ」


睨みつけたは良いが、彼の整った美しい顔を見ると気恥ずかしくなって目線を逸らしてしまう。血が頭に上って顔が熱くなる。

何を隠そう、私はイケメンに弱い。

その為、主人であるにもかかわらずラーには強く出れないでいるのだ。


「私の言葉に嘘偽りはございません。お嬢様は今日も大変美しゅうございますよ」


ラーはにっこり笑うと、優美にお辞儀する。

只お辞儀しただけだと言うのに、それだけで周りの侍女達から漏れた吐息がが聞こえてくる。


本当に美形は得だ。

私も美人でなくとも、もう少し平凡な顔で生まれたかった。

そうすればこんな風に憂鬱な気分にならずに済んだというのに。


「もういいわ」


彼の立場上、言葉を訂正するわけにはいかないのだから。

これ以上の突っ込みは不毛でしかない。

私は諦めて部屋を出る。


「王子様をお待たせするわけにはいかないから、早めに向かって待ちましょう」


「畏まりました」


侍女たちが急いで扉に向かい、頭を下げて私を送り出す。

彼女達は私の部屋担当。

ここから先は他の者達が従事する事になっていた。


残った者は私のいない間に片付けや掃除を行い。

いつ主が帰ってきても良い様に待機し続ける事になる。

きっと待機中は私の悪口大会に違いない。


……まあ流石にそれは被害妄想が過ぎるか。

我ながら卑屈過ぎて嫌になる。


通路に出ると2人の侍女が私に傅き付いてくる。

彼女達が外出時の担当だ。

私は2人の侍女とラーを連れて、王子様との待ち合わせ場所である庭園へと向かう。


王子様。

ブス専だといいなぁ……

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