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地球とは関係の無い話  作者: 冬不純黄昏
壱章 私と彼女とこの物語
33/66

(32話)私と

    雨    雨    雨      

雨   が雨   が  雨 が     太

が 雨 降が 雨 降  が 降 雨   陽

降 が る降 が る  降 る が   は

る 降  る 降    る   降   東

  る    る 雨      る   で

雨        が    雨     佇

が    雨   降    が     ん

降    が   る    降     で 

る    降        る     い

     る              る




「雨がうるさいな…」

(かさ)の下、秋野はそう呟いた。

 目の前を、ランドセルを背負った子供が通ってゆく。

「秋野さん、ここからが(しょう)(ねん)()です。」

「はい…!」


 そのすぐ後だ。メタ・ステイトは『人を動かす』ことになる。

(こん)()(いろ)に白い水玉の傘、ランドセルは濃い目の赤だ。朝宮ちゃんの登場だ…!」


 作戦開始。


 ステイトのテレパシーを(かわ)()りに、5人は一斉(いっせい)に動き出す。

 最初に金田と機堂の2人が、朝宮の後ろから声をかける。あたかも偶然帰りに出会った風にだ。

「ん?おーい!」

金田が雨に負けない程度の声を出す。

「…!金田くん!!あ!ギークくんも!」

「おぉ、朝宮。奇遇(きぐう)やなァ。…って、お前まで俺のことギークって呼ぶようになったんか…」

 無事に合流だ。

 そこへ、少しして秋野が加わることになる。


「お〜い!」

 3人の(もと)()けていく。

「やっぱお前らか!」

まるで、偶然そこで出会ったかのように。

「まえお姉ちゃん!」

 雨の中で彼女の笑顔が輝く。

「おー秋野やん」

「よう」

「や、やぁ。せっかくだし、一緒に帰ろうか」

「うん!!」

秋野の隣で、小さな傘が可愛らしく揺れた。

 朝宮を壁側に歩かせ、車の通る道の側に秋野が歩く。そして、その後ろで金田と機堂が歩いていた。どんな者だって見逃さない心意気だ。

さらにその後ろにはステイトとアークがいる。規律使いであるアークが『神になるための権利』の数を見て神候補を見つけたら、すぐにステイトのテレパシーの魔法である『人を動かす』で秋野らに伝える。当然、ステイトとアークの2人も、誰も見逃すまいとして目を光らせていた。


「まえお姉ちゃ〜ん!」

「ん?どーしたー」

「あのね!ポストは見た!?」

「ポスト?」

 普通の会話をして道を進む。会話をしている途中も、気を抜くことは決してなかった。


…が、



 雲が少しずつ開いてゆく。元々薄かった部分が、切り開かれていったのだ。

 ()()()()は、本当に些細(ささい)なことが多い。



まるで、タンポポの花一輪(いちりん)の信頼が欲しくて、チサの葉いちまいのなぐさめが欲しくて、とある文豪(ぶんごう)が人間を()めたように、



まるで、聖母(せいぼ)が身に覚えのない子を身籠(みごも)ったことから、世界で最も有名な教えができてしまったように、



まるで、火の球の近くで石ころと石ころがぶつかったことから、生命を宿(やど)す星が生まれたように、



まるで、()()したかのように、





光が差した。





 ヒュン。

その瞬間。自分の肉の数センチ横を、ナイフが走る。

…なぜ朝宮から目を()らした?そんな後悔が頭を()(めぐ)る。光が(まぶ)しかったからか、光に見惚(みと)れていたからか、もう覚えていない。ただ、今は目に映ったナイフが。

 鮮血。腹に、深く。黒い()に銀の(やいば)。紅く染まる。



「うっ、うわぁぁあああああ」

()える秋野。傘が地面に落ちる。バシャッ!血の映った水溜りの、水が飛ぶ。

「「しまった!?」」

アークとステイトは、その状況を理解すると同時に、絶望をしていた。

 ニタ…。ナイフを握ったその男は不気味(ぶきみ)に笑っている。

「う…ぐ…」

絶対に朝宮から出してはいけなかった(うめ)(ごえ)。男はナイフを突き立てたままだ!

 ブン!

2人の手が(くう)()る音を(かな)でる。機堂と金田だ。

「クソがァっ!!」「離せぇ!!」

殴りかかる機堂と金田。魔法を使っている時間など無い!

 ズボッ。ナイフを抜く!そして、不気味な男は、笑いながら2人の手を腕で受け止めた。

 アークは見てしまう。男の()()()()()

「ッ!逃げるんです!!あなた達じゃ(かな)わない!!」

男は神候補だった。『神になるための権利』の数は、37。

 が、そんな言葉は聞こえるわけもない!秋野は(かま)わずにぶん殴りにいった。

「てめぇええええ!!」

しかし、(こぶし)は、その男の顔があった空間の虚空(きょくう)(つか)むだけだった。

 カウンターの準備。

不気味な男は、3人を()(ほど)いて、ナイフを強く握り直した。

 テレパシーではない、ステイトの直進(ちょくしん)する肉声(にくせい)がする。

「アーク!『箱』だ!病院へ!!」

「はっ、」

「早くしろ!!」

「はい!『箱』!!!!』


 ドン


 空間が入れ替わる!

どこだか分からないが、屋内に移動したようだった。

「キリクさん!」

ヴン・アークは名前を叫ぶ。

すると、近くにいた一人の男がこちらへ駆け寄ってきた。右半身が黒く染められた白衣をした男。灰色の髪の毛がよく目立つ。

「く、…()()は的中してしまいました![きっかけ]の治療を頼みます…!」

言葉を矢継(やつ)(ばや)に飛ばす。

「チッ!わかった!……秋野ちゃん、かな?詳しいことは後で説明する。朝宮ちゃんを運ぶのを手伝ってくれないか?」

キリクと思われる者が、優しい声でこちらに言った。

 秋野は、コクンとうなずいた後、朝宮に声をかけながら運ぶ準備に入る。

「もうちょっとだけ頑張ろうな…!絶対大丈夫だから…!!」

秋野の声に返事はこない。

こちらを見ながら泣いている少女の、ランドセルと傘を床に捨てさせる。そして、やわらかな肩に手を回す。

 それを見て、遠のく意識の中、アークはボソ…と(つぶや)いた。

「後は頼みますよ…!」




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