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地球とは関係の無い話  作者: 冬不純黄昏
壱章 私と彼女とこの物語
29/66

(28話)主人公と円卓の大団

-気持ち良く眠っている[彼女]を、カーテンから漏れた日光がからかう。

 今日は土曜日だ。今日は朝宮ちゃんと遊ぶ予定があったな、と寝起きの頭からぼんやり浮かぶ。

「あ〜…」

ふと、近くを見渡すと、いつも宿題をしている机の上に携帯電話がある。寝ぼけた目蓋(まぶた)を擦りながら、それを取る。


 丁度朝食が用意されていたところだった。食事中は食事に関係のないものを触れないので、今のうちにリモコンを触ってテレビをつけておく。いつも通りこの時間帯はニュースくらいしかやっていない。いつも通りパンにジャムを塗って食べることにする…。

「いただきます」

擬音をつけるのならば、「もっ、もっ」といった感じだろうか、パンを頬張る。

もっ、もっ…


「ん゛ッ⁉︎ガッ、ゲホッ…」

ニュースを見て()せる。ニュースを見て咽せる…なんてことは、かなり思い入れや思い当たる節があるものにビックリするときくらいだが、どうやらかなり思い入れと思い当たる節のあるニュースが流れたようだ。

 え?え、あ…。この前の、魔法使いと規律使いを殺した、多分神候補のやつ…自首したのか?!ちょっとビックリした…。

咳込みを落ち着けさせて、続けてニュースを見る。

「警視庁では、午前6時過ぎに40歳の男が『男2人を殺した』と自首しました。警視庁は…」

今 画面の真ん中に座っている美しい女性が、淡々(たんたん)とニュースの続きを読み上げる。「男は8月22日に天水都(てんのみなと)府の馬河(うまかわ)で58歳の魔法使いと56歳の規律使いの2人を殺した犯人で間違いがない」のようなことを言っている。

 まずは自首してくれてよかった…って思わないとな。何が起こったのかわ分からないけど、よかった…よな?

少し違和感を覚えたが、そんなものはパンとミルクと一緒に口へ流し込まれた。

 

 食事と歯磨きを終えた秋野は、朝宮家に向けて、チャリンコを飛ばす。今日はなんと(ゆう)()ちゃんの家で遊ぶことに決定したのだ!

 いや〜、昨日の夜、電話で誘われた時はメチャクチャ嬉しかったな〜。何がって、「わたしのおうちであそぼう!」って言う優奈ちゃんの声が嬉しそうで…もうこっちまで嬉しく…

「あ!何かお菓子とか買っていった方がいいな!!」




「みんなだ!わ〜い!!」

 愛らしい少女が笑顔でお出迎えしてくれる。その笑顔を受け取って、3人の中学生は次々と「お邪魔します」的挨拶をして家へと上がっていった。

「んー?…わッ!そのふくろどうしたの?」

中学生共が共通の柄をした袋を持っているのに気づき、優奈ちゃんはびっくりした様子だ。

「あ、これは…」

秋野は先程起きた光景を思い出す。朝宮家の近くのスーパーで、優奈ちゃんたちと一緒に食べれるようなお菓子を選んだ時のことだ。パッと周りを見て、一番混んでいないレジへ並んでお会計を済まそうとしたその時、なんと前にいたのは…

「こいつら2人とはスーパーのレジでバッタリ会ったんだよ」

微妙な表情で後ろを(ゆび)()す。そこには同じスーパーの名前が印刷されてあるレジ袋をぶら下げた男2人が、彼女の後ろでヘラヘラ笑っていた。

「へ〜!なんでみんなスーパーに行ったの??…あ!今日はたまごが安いからだ!」

振り返ってドヤ顔を見せる。

「う、その歳で私よりしっかりしてるのはやめてくれ…」

「お前はしっかりしてなさすぎや」

「まぁ俺達も同じレベルの買い物だったけどね」

(ゆず)のお菓子のチョイスと同じレベルは悲しくなるからやめろや!」

「え、俺ってそんなに…」

そうやっているうちに優奈ちゃんの部屋に着く。

 廊下や他の部屋は白地の壁紙が使われていたが、この部屋だけは薄いピンクの壁紙が使われていた。他にも、本棚、勉強机、ベッド、どれも女子小学生相当の可愛げのあるものばかりだった。

「どうぞ!」

優奈ちゃんはそこにあるベッドや床にでも座ってくつろぐよう(うなが)す。


 プルルルル…プルルルル……

3人の睨むような真剣な眼差しが一斉にこちらを向く。遊び始めてから2時間ほど経った頃。今、優奈ちゃんの部屋から出てきたトランプでババ抜きをしていたとこなのだ。

「…すまん、ちょっといいか?」

その場の緊張が一瞬にして解ける。そしてみんなへにゃっとした顔で「早く電話に出てこい」と言いたげだ。ニヤ…と笑った後、秋野は部屋から出ることにした。

JOKER(ババ)という字と、何かのアニメキャラクターが印刷されたかわいらしいカードを見る。そのカードを含む手札を裏向けて、パサッと床に置く。

「じゃ、失礼〜」

 ふ〜。私がババ持ってるからめっちゃ緊張した〜。ナイスタイミングだな、電話。

「…あ、アークさん?……もしもし」

 電話の相手はヴン・アークだった。

「もしもし!」

ずいぶん興奮している様子だった。

「は、はい…」

「あ!すみません!今、何かしている最中でしたかっ!?すみません!」

…興奮こそしていたが、疲れも(かい)()見える。

「…はい。友達と遊んでいる途中です」

「あ…そ、そうでしたか!また後で電話をかけてもいいでしょうか…」

「あぁ、はい。それじゃ、また後で」

通話が切れる。

「ふぅ。何だったんだ?」

まぁいいや、と思い扉を開けて部屋へ戻る。

 その後もトランプは白熱したらしい。

 

「はー、今日は遊んだー」

 もう家に帰って風呂も済ませた秋野は、テレビをボーっと見ながらそんなことを言った。

優奈ちゃんの部屋で遊んだ、幸福な一日もそろそろ終わりを迎えようとしている。

「ふー…」


プルルルル!プルルルル!


古いタイプの携帯だが、着信音はやけにデカい。ガラパゴス携帯が鳴る。

「早くガラケーやめたいもんだな。……もしもし?」

相手はアークだった。

「もしもし。秋野さん?」

「あ、どうも」

「こんばんは。今、電話する時間はありますか?」

「はい。今なら…」

晩ご飯までまだまだ時間はある。命の恩人からの電話だし、断る理由は探すまでもなく、無い。

「それはよかった。それでは…少し、私のお話を聞いてくれませんか?」

「はい!」

「はっきり言って、これから言うことは都市伝説よりも曖昧(あいまい)で、まず信じることはできないと思います」

ずいぶんともったいぶる。それに、都市伝説よりも信じられない ということが秋野にはひっかかる。一体、何の話だろうか。

「もったいぶっていても仕方ありません。言いますね…!」

固唾(かたず)()んで、耳をガラケーにくっつける。

「私の友人に、予言書を持ってる方がいるんですよ…」

「……」

「信じられる訳がないですよね?今から、今から順番に説明します…」

予言書と聞いて黙るしかなかった秋野に、これから説明をしてくれるらしい。

「まず、その予言書の信憑性ですが…そうですね、明日は6チャンネルのテニス世界大会を見ていただけませんか?なんと()(こよみ)が優勝しますよ」

「っえ、ま、マジですか…」

それにはビックリだ!秋野はテニスに詳しくないが、()(こよみ)が…この国がテニスの世界大会で優勝したことがないくらいは知っている。有名なことだ。もし、「兎暦が優勝する」とかいう妄言(もうげん)が当たったのなら、それはもう信じるしかない。

「そして、火曜日…9月の12日ですが、伊鳩(いばと)の方で急な大雨が…嵐が起きますよ」

アークは、立て続けに予言する。西の方のとある地域で、集中豪雨が降るといったものだ。

「…」

「そして…」

その後もアークは予言をやめなかった。


「も、もう分かりました!」

予言が4つ目に入ったあたりで、たまらず、予言をやめさせる。もう秋野は少し怖くなっていた。

「あ!すみません…」

アークもハッと我に帰る。

「いや、こちらこそ、話をやめさせてしまってごめんなさい」

「いいんですよ。少し話しすぎましたね…」

「まぁ、はい。でも、アークさんは、なんでその予言を私に聞かせたんですか?」

「それは…今は、言えません。『この予言は本当だ』と信じられるようになったら、電話を下さい。その時に全て話しましょう」

「はあ…」

…一日の最後によく分からない話を聞いてしまったが、とにかく良い一日が終わる。

-[優奈ちゃん]が確実に寝ているであろう時間に、秋野はベッドの上でそう思った。




9/ 9 (土)

今日は秋野お姉ちゃんと、かね田くん、キドーくんと遊んだ!!!!!!わたしのお部屋で遊んだ!!

みんなおやつをもってきてて、みんなで食べた!!♡♡とってもおいしかった♡♡

(メモ!→9月16日は秋野お姉ちゃんの たん生日!!キドーくんもかね田くんもプレゼントをあげるんだって。わたしも何かプレゼントがあげれればいいな)




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