親の前で叫びたい異世界文学(挿入編)
鎮珍珠三郎は悩んでいた。既に性癖は三周目を周り、四周目を迎えたところでそれが珠三郎の感性に届くはずがない。
「あーダメだよー……駄目だ駄目だほんとダメ」
それは0と1で表示された手の届かない彼女へでもないし、彼の視線は既に天井のほうを向いていた。
ふーっとため息をつく。表しようもないもどかしさを珠三郎はひとまず「老い」と呼ぶことにした。
彼は目を瞑りそのまま半裸のままに動かなくなってしまった。
だが珠三郎の眼前に青空が広がる。
「うおあっ!どこだここっ!?」
見つめていた天井が突如として青空に変わったのだ。そして珠三郎の口からは変な声が出た。
「なんで俺の部屋に青空が……ん?」
それは瞼の裏側に映る景色なのか。否、手にはシーツの感触がない。その代わり陰毛の如く弾力のある無数の草が彼の生尻を撫でていた。
「………ッ!」
珠三郎はすばやく起き上がる。彼はイクとき声を圧し殺すタイプだった。
「こっ……ここは?」
無限に広がる草原。地平線を挟んでどこまでも伸びる青い空。白い雲。太陽。つまり珠三郎の知る場所ではない。
「気がついたか珠三郎よ……」
不意に後ろから声をかけられる。
「……誰ッ!?」
珠三郎は素早く後ろを振り向き言った。
「ほっほっほっ……」
長く伸びた白い髭。それに合わせた白髪の長髪。顔のいたるところに皺がある爺が立っていた。
「お前は……?」
珠三郎は恐る恐る聞く。
「ワシの名前は金たま仙人……」
金たま仙人と名乗る爺はそう言った。
「由来は?」
「一射精で金玉千人分の特濃ザーメンを出せる」
「なるほど……」
珠三郎は納得する。しかし聞きたいことは山ほどあった。
「ここはどこだ?俺はどうしてここにいる?」
「説明は不要。異世界の導入とチンコの挿入の言語化など不毛。故に説明は不要。」
金たま仙人はそれだけで話を止めた。
僅かな沈黙が流れる。
「納得できるか!むしろ異世界には理由がいるんだよ!」
当然珠三郎は喰ってかかった。
「ならば問いたい……。珠三郎よ、なぜお主は下半身まるだしなのだ?」
金たま仙人の鋭い質問。珠三郎は言葉に詰まる。
「うっ…それは……」
「おおかた自慰いやオナニー……マスターベーションとでも言うべきか。シコシコとシコってたんじゃろう」
「くっ……三回も言い直す必要があるか?」
苦し紛れの反論は自白の他にない。珠三郎はそれ以上なにも言えなかった。
「では珠三郎よ。なぜお前は同じ過ちを繰り返す。その行為になんの意味がある。」
金たま仙人は尋ねる。その目は鋭く真剣だ。
「それは……」
だが金たま仙人は知らない。本日、珠三郎は未だ達していなかった。数多くの経験を経て、最中にもかかわらず賢者になっていた珠三郎。否、賢者のままに色を楽しむ珠三郎は既に答えを持っていた。
「この行為が無意味だとするならば、もはや生そのものが無意味である。だが無意味だと知りつつも繰り返す理由は……。それが死への抵抗だと信じているからだ!」
「ほっほっほっ……ならば進むのだ珠三郎よ!ならば…お……よい……!お…お…ほぉ……!い……いく…………よ……っ!」
珠三郎の意識が、夢の菊門を潜るが如く遠いた。金たま仙人の声がとぎれとぎれになり、やがて彼の全身は光に包まれる……。