表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百物語  作者: 和槻
5/8

一国一城一騎士二国主




俺はみんなに一つ質問がある。




そうたとえば、聖職者であるはずの教師が一生徒を一教師の持っている権限の限りを尽くしていじめるのはいかがなものかと思う。





それが勉学に励む生徒達の授業時間に当てるなどもってのほかだ。





たとえば、ある一生徒が学園以来の天才だったとする。




成績優秀・品行方正





実技試験で大学院の最終予選に残るほどの実力があったとしても、筆記テストで過去に取ったことのある点数が100か98だったとしても、夏季休校の課題と出された論文が学会の最終選考に残ったとしても学園側から授業を受けなくても良いといわれていても、他学年の、それも実兄の学び舎である教室に入ってきて、かつ兄を拷問するべきではないと思う。






というかこの国は拷問を禁止しているから。





つまり、何が言いたいかというと






「教室に入ってくるな!!そしてこの拘束道具を外して俺を解放しろ!!てかその無意味な詠唱を止めろ!!!」






ウフフフフと不気味な笑い方をしている実の妹である加奈は普段ならば詠唱破棄しているであろう拘束魔法をのんびり、じっくり、時間をかけて詠唱している。





ちなみに今の授業は忌々しきことに宮元の魔法実技の時間で入ってくるや否や宮元の191連束縛魔法、才の強襲、愛名の58連捕縛魔法、及び70連追尾魔法、フィナーレは上級同火捕縛魔法の順で俺は見事に捕まった。





いちおう俺の名誉のために言わせてもらえば宮元の捕縛魔法は全部打ち落としてやったし、才の強襲だって防いで有効打は14発入れてやった。





愛名の捕縛魔法も全て才に当たって、70連は相加相乗のロジックで破壊力を上乗せして才に当たった。





ざまーみやがれ。





ただ、加奈の魔法だけは守護符も紙一枚の防御力しかなく呆気なく捕まってしまった。




俺のことをザコだと思った奴出てきやがれ!





全方位から神経系遮断の焔を1度に付き169発撃たれて避けれるのか?





それも一発あたりの魔力が初級もあるのに・・・





流石に疲れたらしくて亜次元からレモンスカッシュを一口飲んでから回復してまた詠唱を始めやがった

けどね・・・




「今は深海人ポシャルヌティーこと約1100年前の国家テロ集団のトップだったユリテリ・マラニィーを捕まえるときに実行された陣形で彼の二つ名を皮肉って『ポセイドン』と呼ばれている。




私達では役不足で、当時の傭兵隊長であった『J』、隣国の国軍総大将『ファル・ジ・エラナ』、我が国の国王であられた乖離かいり国王の懐刀『カーム』、乖離前国王の四人が事実上の三立討伐を行った出来事だった。




そのせいで戦場となった孤島に隣していた半径1000マイルが焦土と化した。」






などと長々と説明してくれるのは良いんだけどこの拘束といてくれねぇかな?




そろそろ感覚がなくなってきたんだけど・・・




「そして、今日の授業で行うのはちらほらと使われていた捕縛魔法についてである。




捕縛魔法は二種類あって一種類目は愛名の使った純捕縛系魔法だ。




特徴は三つあって初・中・上・特上・古代・禁全てのレベルに魔法式があること、属性によって捕縛効果が違うこと、多少捕縛側にはダメージが蓄積されてしまうこと。




加奈が使ったのは二つ目に当たる封殺魔法。特徴は上からしか存在しないこと、捕縛側のダメージを操作できること、封殺後も形状変化可能なことの三つ。



加奈。」




言い終えると小説を読んでいた加奈に首で俺のことを指すと読んでいた本にしおりを挿むことなく近付いてきた。





「加奈、どうしてそんな笑顔を俺に向けるのかな?




え、無視?




無視ですか?



イヤだ!!近付いてくるな!!無言で笑うな!!ごめんなさい!!




だから許して、お願い。な、加奈ちゃん?




いやぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


加奈が人差し指と人差し指を繋げてから中に円を描いてゆっくりと近づけていく。







それに合わせて俺を捕まえている赤色の縄が緩くなっていく。




自由が利くことにささやかな幸せを感じていると加奈の指が止まった。




ニッコリと笑って、




笑ってから一気に指を離した。





「イタイイタイ、痛い、痛いって!!ダメだ、ダメダメ!!腰が女の子に羨ましがるくらいにくびれが

出来ちゃうから!!人の身体はミカンのようには絞れないぃぃぃいぃいいいぃぃいぃぃいぃぃっぃぃぃ!!!カハッ!!」





あ、楽になった。ふう。




「ちなみに火属性の封殺能力は『昇華』だ。




だから今加奈の奴はその効果を使っている。



その効果は偉大で、あんな不憫な身体になっても平然としていられるんだ。



みんな、力とは時として罪ともなるんだよ。」





なあ、宮元教諭?



なんで柄にもなく悟りキャラなわけ?みんなのその憐れな動物を見る眼はなに?不憫な身体?五体満足の俺が?




ゆっくりと視線を下に下ろしていく。




普通の胸に、普通の鳩尾、くびれ過ぎた腹、普通の腰、普通の足・・・




俺はゆっくりと疑問に思った部分に視線を戻した。




「なんだよこれぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」




三段くらい使ってしまうような悲鳴を上げた。




いやまぁ仕方ないと思うよ、うん。




だって腹の部分が普段よりも20センチくらい締め付けられすぎて青白くなってきてるし。







「あら、意外と驚かないのね。」




不思議そうに、若干気持ち悪そうに。




「不思議そうな顔はわかる、でも気持ち悪そうな顔って酷すぎない?」



いくら俺でも凹む。




「そう、ならいいわ。」




何が?




「今日のことはやりすぎたと思うし休んどいて良いわよ。



実験体には何気にノリノリだった才でも使うから。」




()(づか)いは(いのち)(みなもと)(はじ)めの()(げん)()(けい)(とお)(みち)(みなもと)()(ゆう)(うば)い、()(げん)(ほん)(しつ)(さら)()し、(とお)(みち)(そく)(しん)す。()(はん)(らん)(いのち)(せい)()(こころ)()(はく)(ぼう)(きゃく)(みず)(けい)(しょう)()(ほう)(ぼう)(かぜ)。『(けい)(りゅう)(とむら)()(きょう)(ふう)』」




俺は宮元の言った言葉に反応してコソコソと逃げようとしていたとかいてハクジョウモノとよぶに向けて追尾効果と封殺効果に特化した上級魔法をくれてやった。




才は中級魔法しか使えないからなす術もなく捕まった。




もちろん俺が合ったように腹の辺りがキュッと15センチ弱キュッとくびれるようにしてやったさ。




何かがこける音がしたけど俺は気にしないで眠ることにした。




ちなみに俺が起きたのは午後8時になってからだった。








「しつれ〜しま〜す、ってうわ〜今日も派手にやらかしてますね〜」




「別にいいでしょ?それにこれを譲ってくれたのはあなたでしょ?黒樹さん?」




女は暗闇にうっすらと黄金色に光る刃渡り16センチのナイフを真っ赤な舌で、ペロっと舐めた。




真っ赤な舌がさらに純粋な赤色に変わっていく。



部屋には灯りなど対してなく、あるのは一陣の風が吹けば消えてしまうような弱々しい灯火だけ。



黄金色のナイフも深紫色の炎を燈す蝋燭も国宝で呪具の禁具として封印されているはずである。



鍵を持っているのは現国王の水面と幽閉されていた深海人ポシャルヌティーの持つ二人だけ。



深海人ポシャルヌティーの持っていた王鍵は深海人ポシャルヌティー死の際に紛失してしまい、行方知らず、のはず。



この二つの呪具が封印されている理由は至って簡単。



危険だから。



黄金色の小刀の名前は『原罪の刀』、深紫の灯りを燈す蝋燭の名前は『延命の砂時計』。



原罪の刀の能力は『切断不可』と『苦痛投下』。



簡単に言えば切れないが苦痛を与えられる、ただ字のまま、意味のまま。



禁止される理由は苦痛を与えるのが切断面積に比例して、ということ。



一ミリ四方を普通の刀と同じ痛みだとすれば一センチ四方で10倍、とあまりにも効果があるからそのた

めに封じられている。



延命の砂時計の能力は対象者を衰弱させていく、怪我はなくても天命は尽きていく、だから禁止。



一秒が天命を一年殺ぎ取る、早すぎるからダメ。



「でも、こいつ本当によく死なないよね。普通ならとっくに死んでるよ。ねぇ、今までの使用面積と使

用時間は?」



女は男に聞く。男はクスリ、と笑って這い蹲っている男を観察しながら口を開く。



「そうですね、総面積は2975センチメートルメートル、総時間はここ五年で57秒。明日にも死んじゃい

ますかもね。フフフ。」



「お兄様、ごめんなさいね。本当はしたくないのだけど、身体がそうさせるのですよ?本当ですよ。でも、お兄様は許してくださいますよね、だって私と血の繋がった兄弟ですものね。私達は深いところで繋がっていますものね、総て、が。」



そう言って、頬をゆっくりと切りつける。



血が流れて、落ちる。



赤い舌がさらに赤くなる。



果てている男の顎を持ち上げて唇と唇を交える。



舌と舌が絡まる。絡み採られる。



唾液が交わる。唾が交える。



血を絡める。血を絡ませる。



「お兄様、愛していますわ。お兄様は?」



女は聞く。



「妹なんだから、大好きだよ。」



男が答える。



そしてローブを羽織って三人は部屋を出た。



部屋には暗闇を置き去りにして。





更新が遅くなってすみません。

一日のぎりぎりでしたね。

明日はがんばります。

HHでした


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ