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百物語  作者: 和槻
3/8

三つ巴



[お兄ちゃん、早く!七草先輩に聞きたいことがあったんじゃなかったの?]



聞こえはいいが俺は今死ぬ気で自分の身を守っている。



昨日あったことが加奈も気になっていたらしく何か些細なことでいちいち魔法を乱射してくる。



その癖に連携や土地を有効活用した攻撃は悪質極まりなく朝食を食べていない俺にとってはこれはなかなかハードなことなので遠慮した。



秀才と呼ばれるだけあって全ての攻撃が急所や主要部なのでこちらも少しでも気を抜けばさようなら決定。



なので今日は実技での週末テストがあるにもかかわらず俺の中の魔力は着々と削がれている。



ちなみにこういう加奈からの攻撃があるからこそ俺は魔法実技の成績だけは学院でも上位に位置している。



人間殺されそうになったら強くなるものだと言うことかな。



しかし今日は一段と激しい。



普段なら急所に2,3発入るといつものお兄ちゃん大好きっ子に戻るのにまだ納得がいかないらしくて軽めに見積もっても二桁はゆうに越している。



それに血の繋がった兄弟である俺たちでも加奈には生まれつき火系統の魔法には異常な性質がある。



同種(どうしゅ)開口(かいこう)



同系統、加奈で言うところの火系統の魔法以外の五大魔法『風・水・雷・土』と先天魔法『闇・光・重力・変換』、常用魔法『無』などの9系統の魔法は効かない、という反則的な能力があるのだ。



俺の生まれつきの魔法は風。



つまり昔からいつも俺は妹であるはずの加奈に敗北を喫している。



ひたすら負け続けるわけにもいかず、子供の頃からの努力によって加奈に対抗するために火系統、治癒を主にした水魔法、本来は大学院二回生の必修実技である肉体強化のための無魔法を習得したので今となっては体調のいい日などには引き分けに持ち込めるようになった。




俺の強さは加奈に屈服しないために生まれたといっても過言ではない!!!




まぁ、兄弟ゲンカでは怨むべきその同種開口だけど調査資金という名目の補助金が出ているから俺たち兄弟は普通に生活できているわけであってなんとも言えない。



つまり俺は妹に負け続け、なおかつ妹のヒモになっているのだ!!!



どうだ、引きこもりたくなるような事実だろ?



だが俺は慣れたのさ、しくしく。



これでも俺執行委員の三天王の一人なんだぜ?中途半端だといつも思うけどそれは先代のネーミングセンスを疑って欲しい。



ちなみに三天王の上には四神っていう執行人のトップがあってそのうちの一人は加奈。



二つ名は狂華。ぴったりだろ?狂った華なんて。



七草も四神の一人、二つ名は後悔処刑。




何も言うまい.....




俺の二つ名は付き人。



四神は三天王をパートナーにできる。一人四神のうち誰かはパートナーなしになる。



だけどそうはいかず俺は七草と加奈に選ばれてどうなるか協議した結果、約一名のバカ教師の推薦と言う名の脅迫によって可決された。



その一人については何も言うまい。



そして気付いて欲しい、こんなに常識を頭の中で復唱する時間があるのかと。



「お兄ちゃん、いつまでも床に這ってないで朝ごはん食べたら?」



加奈は紅茶を飲みながら自分の隣の席を指差している。



どこで決着がついていたかと言うと『削がれている』の直後に加奈の代名詞でもある同火魔法『狂火』によってパジャマを全て焼き尽くされて終わり。



つまり俺はパンツ一枚で寝そべっている。



この狂火っていうのが反則的な能力なのだ。



対象物を焼き尽くすまでひたすら追尾する、という、つまりは使われたら終わりな訳。



しかも加奈の同種開口によって火魔法しか効かず、魔力総量も加奈が俺の2,6倍あるので相殺すらできずにお陀仏なのです。



この兄弟ゲンカ(小規模な戦争)の被害は対魔法材が使われているマンションに被害はなく、まだ手もつけていなかった俺の朝食は消し炭となってさらに存在している。



ガリガリと口の中で言わせながら発ガン性物質を食べながら加奈によって教室に強制送還されるのであった。






扇状の教室では宮元のショートホームルームが始まっていた。



といっても週末実技のある日にはいつも注意事項を話して終わりな訳である。



宮元のめんどくさくなってきたらしく去年の夏前には「説明始める、以下略」と教頭が聞けば教員指導にかけられるような手の抜きようっぷり。



だけど俺たちは必ずこの注意事項を守る。



なぜなら初めての実技で宮元と手合わせを行い、身をもって経験したから。



かく言う俺は宮元に一撃入れて血祭りに上げられたのは別の話。




七草が打ち負かし、才がボロ雑巾にされたのもまた別の話。



そんな週末恒例の静かな時間も今は当てはまることがない。



と言っても理由は決まっている。



昨日の緊急放送のことだ。放送の後も一時間毎のニュースには一番初めに放送されていた。



朝もそんなことを言っていた気がするから多分大半の国民は知っている。



他国からしたら別に王様と王女様がいてもおかしくないだろ。でも俺たちの国ファーズ王国では以上なのだ。



この国は王権政治が行われてきた。



この国のトップは二種類ある。



『国王』と『妃』、別にこれはあまり他の王国でも変わらない。



違うのは国王と妃は絶対にどちらかが政治を行ってきたこと。



だから国王は第31代だし、妃は第15代だった。



今は国王が居るけど、その前は妃、国王、国王、妃、国王、だった。なのに急に国王と妃が出てきたらどっちを敬えばいいか分からない。



俺たち国民は王家を尊敬している。それは家系じゃなくて実績。



高官の汚職問題などを率先して取り上げてきたのは王家だった。戦争を回避したのだって王家。いくらでも尊敬に値するところはあった。




だから混乱しているんだと思う。今の国王が玉座についたのだって12歳のときだった。



不安だって、批判だってあった。でもそれに屈せず国をまとめたから俺たちは認めたのに。



だからこれはこれまで以上の混乱と反乱を買うことになると思う。



それを聞くために俺はKMBの中枢に居るあいつに聞くために早く学校に来た。まぁ、その本人はいつも通り遅刻ぎりぎりに来たから意味はなかったけど・・・




「な〜な〜くさ〜どういうことなのか話してけれ〜」



俺と同じことを考えていたらしく才が七草の席に突っ込んでいくのが見えた。



あ、手から電気出してビリビリしてる。さておれも行きますか。



七草に聞きに行くために椅子から立ち上がって歩いてると愛名がこっちにきてるのが見えた。



もちろん、ここは知らん振りをして歩くことを心に決めた。



「七草、俺も聞きたいんだけど聞いても平気か?」



転がっているゴミを踏んでしまったけど汚れていなかったいいっか。



「別にあんまり隠すことないからいいけどとりあえず移動するぞ、次模擬室だから急ぎ目に動いとかないと遅刻するぞ。」



ココアを飲みながら立ち上がった七草に賛成なので愛名と武器を取りに入き、待ってくれていた七草、愛名と歩きながら模擬室に向かった。



七草の話を整理すると、国王の病状があまり良くないので妹である花煙という人が補佐に入ったらしい。これからは国王が政治を行って式典などの行事には二人そろって出るらしい。



国王が政治について教えて、一人でもできると判断した時に政権を妃に渡すらしい。



「今回のテストくじなに引くのかな。」



愛名が誰に言うわけでもなく呟いた。



「そうだな〜俺は前『スタート地点から動いてはいけない』を引いたからそれよりはましだと思うけど。また同じのは引きたくないな。」



攻撃されて爆風で失格になりそうになったし。それにあの補習だけは嫌だ。



くじって言うのは上位層の生徒が引くハンデを書いた紙のこと。



普通は一枚だけど七草みたいに十枚引かされる奴もいる。



ま、七草は平気な顔してクリアーしてたけど。



着いたのは部屋と言うよりも広場と言ったほうが正しい広さを誇る部屋。




ここでは戦闘がメインなので普通の部屋よりも強度は5倍強はある。



1階から6階まであって模擬をするのは2階から6階までの五部屋。一階は監視室と模擬終了者の待機室。各部屋にも待機室があって待機しつつ他の部屋の様子も見れる。



去年は何回か七草とタイミングが被ってしまってあんまり七草の戦いを知らない。



まぁそれは七草にも言えることなんだけど実力差があるから俺が不利なのは変わらないけど。



俺は6階の一番目、ハンデは自分の先天性魔法を使わないこと。まぁ楽なほうかな。



今回は上位層が誰も重ならず部屋が一緒だったから負けたら惨めだな。



『各部屋の一番目の生徒今から10秒後に開始するからとっとと位置に着け。



もちろん開始時にスタート地点に居なかったら問答無用で失格にするから急いで準備しろよな。



あらかじめトップ層のハンデは…あ時間になったな、よし模擬開始。



2,4.5階にいてる生徒はスタート地点にいなかったので補習決定。二番目の奴これから2分後に開始する。では残りの二人、健闘を祈る』




俺はこうなることを見越してすでに準備していたのさ、伊達にクラスで一番弄られているって訳じゃないぜ☆



なんて余裕を持ちながら召喚されてくる模擬相手を見て驚きを越して殺意すら湧いてきた。



ゆっくりと、普通に歩いているのと対して変わらない、いや普段よりも若干遅いくらい。



それが逆に恐怖心を煽ってくる。



「お兄ちゃん。首ちょうだい。」




俺はゆるい口調には似つかわしくない言葉を言ってくる加奈から逃げ出すように緊急用のインターホンへ向かって全力で走り出した。



『は〜ろ〜面白そうなことになってるわね。私も生で見たいからそっちに行っても良い?』



ゆら〜と何事もないように言っているバカに憤りを感じずにはいられなかった。



「お前、今回も普通にコピードールじゃなかったのかよ!!なんでよりにもよって加奈なんだよ!!部屋を血の海にでもするつもりなのか!!??」



このクラスで生き残ってるの七草ぐらいじゃないかな?才なんてリアルに逝ってしまいそうだし…



『ごめんごめん〜学年期末用のデータ送っちゃってたわ、あんたにだけ。



まぁ一応期末レベルだからハンデなしでも良いよ。



あったほうがポイント高いけど。』




「黙れ!!こっちは死活問題だよ!!!ただでさえ今日は朝から疲れているってのに…」



『そう言わずに、これが終わったらお酒でも…』




宮元の言うことを最後まで聞けないままその場から離れた。



そのすぐ後に俺の頭があった位置にあるインターホンは消滅した。



なぜなら加奈の魔法が直撃したからだよ。ちなみに避けれたのは気配を感じたとかそんなカッコいいものではなくて長年にわたっての学習。



で、その魔法を放ってくれた加奈さんはブツブツとお兄ちゃん、お兄ちゃんと呟いている。



実際の加奈はそんなことをしたりしないからマジで恐い。



俺は飛んでくる火の玉を避けながら肉体強化魔法を足に重点を置くことを考えながら詠唱破棄してひたすらに逃げることにする。



もちろん詠唱破棄も加奈のおかげである。



ひたすらに逃げ回っている俺だけどブーイングとかはない。



なぜなら加奈の強さはみんなが認めているからだ。



兄弟でも俺が落ちこぼれているわけではない、加奈がおかしいのだ。



でもいつまでも俺は逃げているわけには行かないのだ!!



なぜなら俺の魔力の残力は半分に近付いてきているからだ。



今朝のことで半分近く消費し、栄養剤で回復力を補ったって所詮人間だし仕方がない。



でも現実でも遊ばれて、仮想の加奈にも遊ばれる俺って・・・




20メートル先にいる加奈が何かを呟くのが見えた。



次のうちには加奈の周りから純白と深紅の焔が湧き出て周囲を伝うように俺に向かって跳んでくる。



数歩下がりながら防御のため詠唱を始める。



肉体強化は解き、粉塵の楯に魔力を注ぎ込みながら地面に跳ねながら跳んでくる狂火を見据える。





狂火は三つの能力がある。



一つは絶対昇華。簡単に言うと必ず対象を燃やし尽くす。


もう一つはホーミング。ある程度までなら対象が逃げようとも追いかける。俺のわかっている限りでは誤差0.009秒よりも遅ければ追いかけることができる。


最後はコントロール。狂火は使用者の神経とシンクロしており、シンクロ率が高ければ高いほど反応速度は上がるが途中解除したときの反動も大きくなる。




一つ目はまぁ本気を出せばなんとかなるし、ホーミングだって当たりそうなときに肉体強化して反応速度を上げればいい。



でもコントロールだけは不可能だ。だって俺、アイツよりバカだし。



地面に着地したときに三つに分かれた。



あれは無理。



前面だけに展開しようとしていた楯を中断した。



詠唱不完全でキリきりと脳に痛みが伝わってくるけどそんなことに構っている時間なんてない。





()(りゅう)(うろこ)()(しょう)(じん)(そう)(えん)息吹(いぶき)(われ)(めっ)そうとせん(じゃ)(はら)いのける城壁(じょうへき)となれ『寂寞(せきばく)(ほう)(もん)(そう)式四季紋天界衣(しきしきもんてんかいころも)





蒼い焔が俺の頭上に上り正十二角形を描くように形付く。



地面に接している点を解いてから位置固定のために使う。



俺は自分の集中砲火用の楯と全てを燃やし尽くす火焔がぶつかるのを見ていた。



魔力過剰消費が原因の頭痛を堪えながら前を見ていると加奈が人差し指を指揮棒のように振り回しているのが見えた。



それも楽しそうで無邪気な笑顔を振り撒きながら。



ここに来るまでに三つから六つに解かれていた深紅と純白の焔が三方向に分かれて楯に当たる寸前で赤と白の光がお互いに触れ合い無数の火となって舞った。



よし、魔力を使いすぎたのは辛いけど継続時間が短くなったから勝機はある。



とりあえず解除して肉体強化してから停止ボタンを押そう。ポイントは下がるけどこれ以上魔法を使ったら倒れちまう。



「解―」



除と言う前に寂寞の鳳門に凄まじい衝撃が襲ってきた。



けど見えているのは微弱に光っている狂火の微小な残り火だけ。



残り火、



考える暇もなくいつの間にか近付いてきていた加奈に首を捕まれていた。



「か、はっ」



苦しくて息をしようとすれば喉が押さえつけられていくので頭が霞む。



「お兄ちゃんダメじゃない。私がたったの六つの焔をコントロールするくらいでミスを犯すと思っていたの?

そんなんじゃいつか殺されちゃうよ。

それとも私が今ここで壊してあげようか?」



指先に純白のビードロみたいな球体が表れて開けられている口の中にゆっくりと近付いてくる。



七草が入り口にある防犯扉を鞘を抜いて壊そうとしているのが見えた。



押しに行くことができないので空気を膨張させてヒントのボタンを押す。



壁が明るくなって辺りが少し暗くなった。





『今回の終了ボタンは相手の左内太ももの付け根。いくら相手が愛名ちゃんだからってセクハラしたらコンクリートで埋めてあげるからね(ハート)』





普段の俺なら絶対に再起不能にする道を選んでいたと思う。



でもそんな力もなく、ハートを生徒に使ってくる独身教師(31歳)に文句の一つでもくれてやるのだけどそんな余力のない俺はスカートの中に躊躇いもなく手を入れた。



ニーソックスの生地が当たりその先に進めると温かみを感じた。



そのまま上に手を挙げていくと何もなかった。





そ、うか。お、れ、と加奈は、向、かい合っ、てい、るか、らはん、対側、に、ボ、タンがあ、るのか。




段々と近付いてくる白いビードロ。



朦朧としてくる頭。



感覚が消えていく全身。




俺は押したかもわからないのに意識はそこで途絶えてしまった。






意識が戻って目を開けるとまだ動いているテスト体の加奈がいた。




そうか俺、まだ押してなかったんだな。



とっとと押して今日のところは早く寝よう。




スカートの中に手を突っ込み、今度はきちんと左手で左内太ももにあるボタンを探した。



そして感じた暖かくて柔らかな感触。



それは暖かくて柔らかくて弾力があった。



「あれ?ないぞ。」



でもテスト体は停止することなく拳を握り締め震えていた。




「このセクハラバカスケベ兄貴!!!

心配してきてやったら公共の場で妹相手にセクハラか!!!


十回死んで一回生き返ってきなさい。」




それって9回も足りなくないか?



考えている間に俺は睡眠を取ることができた。



睡眠か昏睡かは聞かないで欲しい。




長い間更新が滞っていてすみませんでした。

インフルエンザやH.Hのボイコット等など多くの試練が待っておりまして

他作品もなかなか更新できませんでした。

なので多くなりすぎた作品の更新日を決めることにしました。

日曜日:薄幸教師と天災少女  月曜日:現在無し

火曜日:鬼神再生日記     水曜日:僕は彼女のボディーガード。///

木曜日:百物語        金曜日:一度きりのSEXで得られるもの

土曜日:現在無し

とさせていただきます。

また、それ以外の日にも更新することがありますが上記の予定に変更はございません。

新規小説に関してはその小説の注意書きに書かせていただきます。

これからもよろしくおねがいします。


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