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魔王を守る下僕となりて  作者: 絢野悠
英雄の資格 2
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七話

 気がついた時、俺はベッドに寝かせられていた。


 痛む身体に鞭を打ち、腕で無理矢理上体を起こした。いや、起こそうとしてもダメだった。


「起きましたね」


 声がして、右を見た。セラだった。本に栞を挟み、膝の上に置いた。


「あれから、どれだけ経った?」

「一週間です。魔力切れと疲労が重なって一週間寝たきりでしたよ。喋った時はびっくりしました」

「あー、起き上がれないわけだ」

「これからリハビリですね」


 セラが立ち上がり、こちらへと身を寄せてきた。背中とベッドの間に手を入れて上体を起こしてくれた。水も飲ませてくれたし、しばらくは至れり尽くせりだろう。


「鎮事府がなくなって、なにか変化はあったか?」

「そうですね……魔王デバイスも勇者デバイスも壊れました。それによって賜法が使えない状況にあります。一応魔法ならば使えますが、微々たるものです。前のような激しい戦闘には使えないでしょう」

「魔王と勇者っていう存在が消えたのか」

「そういうことになりますね。ただ、鎮事府がなくなったことで世界を束ねる組織を作る必要が出てきました。集落には統率者がいても、共通の認識やルールがないので」

「その辺は誰かが上手くやってくれるだろうよ」


 ふと、カレンの顔を思い出した。彼女ならなんとかやってくれそうだ。


「セレスは?」

「帰ってきてません。なにか、知っているのでしょう?」

「それは皆が来てから言う。集めてもらえるか?」

「わかりました。少々お待ちを」


 セラが部屋を出ていった。


 窓の外に視線を移した。見覚えがあるな、と思ったらここは俺の部屋か。セレスティア城も懐かしい。


 セレスとはちゃんとした話ができなかった。今までどれだけ大変だったとか、どんなことをしていただとか、そういうこともちゃんと話したかった。


「おまたせしました」


 と、セラが皆を連れてきてくれたみたいだ。


「やけに早いな」

「ライが起きるのをずっと待ってたんです。早くてもおかしくないかと」


 なるほど、さすが愛され上手だな。


 その後、セレスがメイトラに取り残されたこと、絶対に戻って来ると言っていたことなどを話した。


 が、全員思ったよりも普通の顔をしていた。もっと悲しがるとかすると思っていたが。


「まあ、お嬢ならなんとかするんじゃないか?」


 と、シャロンが当然のことのように言った。


「なんとかするって、メイトラは魔法が使えないんだぞ? 魔法力がないから生きていらるかもわからないのに」

「でも帰るって言ったんだろ?」

「まあ、言ったけど」

「モニターの中にいたやつもなんとかするって言ったんだろ? だったら、たぶんなんとかなるんじゃないの?」

「いやいや、そういう問題じゃないだろ」

「そういう問題なんじゃないのか」


 今度はアーサーが言った。


「お前もテキトーなこと言うなよ」

「テキトーではない。あの女がそう簡単に死ぬとは思えないしな」

「だから、魔法力がないと生きていかれないんだよ俺たちは」

「その辺はわからん。だが、お前は余計なことを考え過ぎだ」

「考え過ぎ?」

「帰ってくると言った。それだけでいいだろ。あとは信じて待っていればいい。あれは俺たちの主人だろ?」

「主人って、もう魔王とか勇者とかは……」


 そう言いかけてから気付いた。全員がなぜか笑っている。


「ああ、そうか」


 魔王と従者とか関係ないんだ。たぶん、セレスが帰ってきても、この主従関係は変わらないままだ。


 そうだ。彼女のことを主人だと思っているから。


「待つしか、ないんだな」

「ええ。ですから、お嬢様が帰ってくるまで元気でいてもらわなければいけません」

「帰ってきて城がなくなってたとか、発狂するかもしれないしな」

「そういう意味ではないのですが、まあよしとしましょう」


 シャロンが手を差し伸べてきた。


「んじゃ、今日から早速リハビリだな」

「ああ、世話かけるよ」


 俺はその手を取った。


 いつまでも落ち込んではいられない。きっと帰ってくると信じて、俺は俺にできることをするんだ。


 きっと帰ってくると信じて、俺は前に進まなければいけない。


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