四話
「さて、別のヤツを助けに行くか」
身体は痛む、疲れも溜まっている。だが今はそうも言っていられない。
この混乱に乗じて、野心に溢れた勇者が出てこないとも限らない。味方は高レベルの勇者が多い中で戦っているのだ、早く合流すべきだと判断した。
勇者の魔王たちの群れに身体を向けた。
その時、背後から強烈な魔力を感じた。
「まさか……」
ゆらりと、誰かが立ち上がる。誰か、ではない。
「世の中、簡単にはいかないよなぁ」
白い煙をまとい、ブラッドフォードが立ち上がってきた。
いつの間にか傷も癒え、見た目には服がボロボロになっているようにしか見えない。
傷を急速に治しているのだ。あの白い煙が傷を塞いでいるのだ。
「お前と遊んでいる暇はないんだがな」
「遊びのつもりはないさ。ただな、見せしめってのは必要なんだよ」
完全に回復された。
もう一度剣を出す。癒えたのは傷だけであり、魔力や体力までは回復していないはずだ。それならばもう一度倒せばいい。
重心を下げて一歩踏み込んだ。
「遅いな、もう限界か?」
気がつけば、目の前にブラッドフォードがいた。
首元を掴み上げられた。
「くっ……!」
振りほどくよりも前に、右へと投げ飛ばされた。
宙を飛んで、木にぶつかった。
顔を上げると、またブラッドフォードが目の前にいる。
「お前のような弱者が、俺に勝てるなどと思い上がるなよ」
即座に立ち上がって右へとステップを踏む。が、そこでまた首を掴まれる。
「逃げることなど」
引き寄せられた。
「思わぬことだ」
腹部に衝撃。あまりにも強烈で焦点が定まらなくなった。
四つん這いになって腹を抑えた。じわりじわりと体内を侵食するような痛みが広がっていく。
「お前は、どこに向かうつもりだ……」
「どこへ? 決っているさ、勇者の頂きだよ」
顔面を思い切り蹴り上げられた。
最後に見たのはブラッドフォードのニヤニヤとした笑顔だった。
まだダメだと思いつつも、意識は彼方へと飛んでいく。必死に抗うも意味はなく、眼前は黒く染まっていった。




