最終話
町の前までやってきて、ここでも異常な事態が起きていることに気がついた。
「また武装してる……」
町の中からたくさんの人が出てくる。住人たちの手には大きめの銃が握られていた。
セレスティアは舌打ちを一つしてから左の森の中に入っていった。ここでもまたレーザービームが背後から打ち出され、為す術なく逃げることしかできなかった。
『ようやく確認できた』
「で、これはどういうことなの?」
『メイトラの管制塔でもいろいろあってね。その、派閥争いみたいなのがあるんだよ。んで、オルトバに目くじら立ててるタカ派がキミを葬ろうとしていたみたいだ』
「その結果がこれってわけ?」
『そうだ。本来下等、中等種族は武器を持つことが許されない。しかし管制塔からの指示があれば、町に常設されているる。その全てがキミに攻撃しようとしている』
「もう、最悪としか言いようがない」
『魔力の残りはどれくらいある?』
「四分の一ってとこかしらね。そろそろ戻らないと魔力切れになる」
『それが、とても言いにくいんだけどね……』
イヤな予感がした。同時に、悟ってしまった。
「エレベーターが封鎖された? 壊された?」
『……エレベーターの周囲を住民が囲っている。どうやっても、今のキミの魔力じゃ突破はできそうにない』
レーザービームを避け続け、頭の中を整理しようと試みた。けれどどうやっても整理がつかなかった。
魔力は底をつきかけ、戻ることも許されない。こんな状況でなにをすればいいのだろう。こんな状況でなにに縋ればいいのだろう。
ここで、従者たちのことを思い出した。セラ、シャロン、アーサー、ヴェロニカ。そして、ライオネル。
「私は帰らなきゃいけないのよ。帰るって、ライに約束したんだから」
『でもその帰る可能性がゼロに近い。住民たちは武装してるんだよ。今のキミじゃ蜂の巣だ』
「可能性を広げる。私に魔力を供給する方向ではダメ?」
『そんな、方法がないよ』
「一人だけその方法を知ってる人がいる」
『つまりその人にコンタクトを取ればいいんだね?』
「上手くいくかはわからないけどね。名前はハリエット。私の身体に魔導結晶を埋めた張本人。彼女なら魔導結晶の扱いに詳しいし、魔導結晶に魔力を込めて、それが私の手元に来ればなんとかできると思う」
『わかった。すぐに対応する。でも魔力を供給してどうする? 住民たちを倒すのかい?』
「できれば住民たちに攻撃はしたくないわね」
『その気持ちを尊重できるように努めよう。しばらく身を隠せるか?』
「魔力さえ使わなきゃ、一日二日は保つと思う」
『よし、それじゃあ。ボクはハリエットに連絡を取るよ。キミはそこで待機。わかったね?』
「ええ、わかったわ。ちょっとキツイけどなんとかするわ」
立ち止まり、空を見上げた。
天井から降り注ぐ光が眩しく、手で光を遮った。戻りたい場所には戻れず、見上げることしかできない自分。しかしそれが今の自分の立ち位置だと理解してしまった。
勇者にもなれない、魔王にもなれない。そんな自分ができることなど多くない。だから、今やれることをやるしかない。
心に決めたことがあった。誰にも言わず、ただ一人で歩むと決めた道。しこりを残さず、自分の気持ちにケジメをつける道だ。
そう、これが魔女としての使命だと、ゆっくりと深呼吸をした。




