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魔王を守る下僕となりて  作者: 絢野悠
英雄の資格 1
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二十話

 セラ、シャロン、ヴェロニカ、それとアーサーがセレスの横に並んでいる。


「お前ら……」

「再会を喜ぶのは後回しです。行きますよ」


 と、セラが静かに言った。


「俺の相手ができると思っているのか。おそらく魔王最強であるハリエットがこの状況で、お前らに」

「ハリエットの言葉よ。やってみなければわからない、ってね」


 こうして、二つの組み合わせができあがった。


「いくぞカレン。師匠超えだ」

「まだまだ負けるわけにはいきませんよ」


 一瞬だけ気を緩めたその時、カレンの姿が消えた。


「これしきっ」


 鋭いハイキックを両腕で受け止める。が、衝撃を緩和しきれずに横にふっとばされた。


 地面を転がることはなかったが、随分と滑ってしまった。セレスたちはセレスたちで森の方へと向かっていった。最後の光景からするにアーサーあたりがふっとばされて、そのまま全員で森の中へって感じか。できれば近くで戦って欲しかったのだが。


「おそらく、アナタのご友人ではエイブラム様には勝てません。良くて善戦です。そしてアナタも私には勝てない」

「だろうな。そんなことはわかってるよ。アイツはちょっと次元がちげーからな」

「わかっていて任せるのですね。非情というか、なんというか」

「エイブラムに勝てないことはわかってる。でも死ぬことはきっとない。俺がお前を倒して合流するまでは耐えるはずだ。信用してるからな」

「味方を信用しながら私を貶すと。なかなか口が回るようになりましたね」

「貶したつもりはねーけどな。でもな、俺はお前を倒すぜ。倒されないようにせいぜい頑張るこった」

「自信ばかりではなにも生まれませんがね」


 カレンの両手が光りだす。


「いきなさい! 〈聖光芯球《セイクリッドオービット》〉!」


 彼女の手から光が離れ、四つの球体になった。そしてそのままこちらへと向かってくる。


「光の布に光の球体。あれが二つ目の賜法か」


 右に避け左に避け、時には前進、時には後退で光の球をギリギリの位置で躱していく。


 しかし妙な動きをする。基本的には直線に動き、必要になればカクカクと動く方向を変える。なんというか、カレンの性格からすればもっと精密で柔軟な操作が可能なのではないか、と思ってしまう。


 その考えが違うと気づくのが少し遅かった。


 あの球体はただの球体ではなかった。球が通った軌道が光の線になっているのだ。直線と直角にしか動かなかったのは、別の部分に魔導力を裂いていたからだ。


「気付いた時にはもう遅い。〈聖光芯球〉は光の球が攻撃を仕掛けるのではありません。球体が通った軌道こそが「置かれた攻撃」になるのです。攻撃力をもった光の檻の中で、アナタはどうするのでしょうね」


 移動範囲を考えながら避けなければ、すぐに行き場を失う。直接攻撃されるわけではない。自分から行動範囲を減らしてしまう。


 光の軌道に肩が触れた。ジュッという音がして、服ごと皮膚が焦がされた。


「めんどくせー賜法使うな……」


 攻撃があまりにも遠回りすぎる。いや違うな。遠回りなんじゃなく「自分から勝手に攻撃されに来る」というコンセプトの賜法なんだ。避けている間に逃げ場がなくなり、自分から勝手に光の軌道に直撃。自らの手を汚すことなく敵を倒す。


「お前らしくねーな。こんな拷問みたいなやり方なんてよぉ」

「これが本当の私ですよ。自分の手を汚すことなく相手を倒す。そうでなくてはエイブラム様と共にはいられませんから」


 あくまで自分は補助ということだろう。完全なるサポーター。陰から支える力持ちってか。


「でも、そんなんで俺を倒せると思うなよ」


 時間を止める。〈世界掌握〉ではない。〈座標停止(スペースポーズ)〉だ。特定の場所のみの時間を止める賜法。


「そんなことをしても意味はありませんよ!」

「さあどうかな。こっからは目ひんむいてよく見てな。さあ〈座標逆行(スペースバック)〉、俺が歩く道を拓け!」

〈座標停止〉からの〈座標逆行〉。まだカレンには見せていないとっておきだ。


 特定の場所、最大半径五十センチ程度の球体の中の時間を戻す力。〈聖光芯球〉で作られた軌道の時間を巻き戻し、軌道が作られるよりも前に戻した。こうすることでカレンへの道が作られていく。


「そんな賜法をいつ……!」

「さあ、いつだろうな!」


 そしてまた肉弾戦へ。


 このやり取りでも俺とカレンの間には「経験」という溝がある。はっきり言ってしまえば経験を埋めるには経験しかない。


 だが、経験以外でも別の方法で埋めることはきっと可能だ。いや、可能でなければ俺が今までやってきたことが無駄になってしまう。


 こちらの拳をひらりと躱し、俺の攻撃がなかったかのようにショートフックを放ってくる。左腕で防御するも、ビリビリと痺れたような感覚が全身を突き抜けていく。これもこいつの賜法か。電気を使うみたいだが詳細がまったく掴めない。


 腕を下から捕まれて引っ張られた。延髄への手刀を無理矢理回避。そのせいで腕を捻ってしまった。


「言ったと思いますが、アナタは私には勝てません」

「できればお前には本気を出して欲しかったが、本気になられるといろいろ厄介だ。そのまえにこっちの本気でぶっ潰すぞ」


 深呼吸を一つ。


「〈時空隠蔽(サーフィスリザーブ)〉、解除だ」


 俺が一つの賜法を行使した。性格には使ったわけじゃなく、元々使っていたものを解除しただけ。しかしみるみるうちにカレンの顔色が変わっていく。


「アナタは……いったいなにをしたの……」

「さあ、自分で考えな。俺がお前に勝ったら、その時はちゃんと教えてやるよ」


 力が漲ってくる。あまりやらないものだから、これを制御するだけでもかなり苦労すした。


「いくぜ。ちゃんと口閉じてろよ。舌、噛むかもしれないぜ」


 足を踏み込み地を噛んだ。一瞬でカレンの懐に潜り込み、目一杯の力で拳を突き出した。


 吹っ飛んでいく華奢な体。まだ戦意は失っていないだろう。本当はエイブラムとの戦いまでとっておきたかったがそうもいかなくなってしまった。


 短時間で終わらせる。そして、セレスたちを助けに行くのだ。


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