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魔王を守る下僕となりて  作者: 絢野悠
英雄の資格 1
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十話

「さあ来ましたよ。魔獣です」

「数は……七体か」


 二足歩行で毛むくじゃらのが一体。四足歩行で、前に戦ったやつの上位互換っぽいやつが四体。頭上を飛行するのが二体。


 魔獣のレベルが高くなり、カレンも俺にばっかり構ってはいられないはずだ。俺は自分の身を守らなきゃいけない。口で言うのは簡単だが、実際にはそう上手くもいかないだろう。


 魔獣を倒すためのチャンスはいくらでも作れる。それは俺の賜法がそういうふうにできているからだ。俺が魔獣を倒せない理由は、俺自身に攻撃力が備わっていないから。


 最初は四苦八苦していたが、攻撃力を上げる方法もカレンの助言から学ばせてもらった。


 魔獣もまた、無意識であるにしても魔法を使っている。その魔法は基本的に身体強化であり、逆を言えばそれくらいしか使えない。身体強化がかなり高度であるから、俺の攻撃が通らないのだ。


 じゃあどうするか。


 魔法でその身を覆っているのならば、魔法を剥がしてやれば生身になる。ただそれだけの話だ。


 魔法や賜法で作られた壁や結界などを破壊するのには、分析や分解の特性が必要になる。当然俺は持っていないわけだが、そもそも俺の魔法は普通の勇者や魔王とは格が違うのだとカレンに言われた。


 魔法とは、勇者や魔王が使える特殊な力である。自分の魔導炉に特性を付与するのはその特性を強化するためで、必然的に魔法も強くなる。逆を言えば魔導炉に特性を付与しなくても、勇者や魔王ならば全ての特性を使えるということになる。


 しかし、魔導炉に特性を付与していない状態では、特性はかなり弱くなってしまう。だから魔導炉を使う。


 俺は魔導炉を一つしか持たない。本当は三つあるのだが、一つは時間の特性を、一つは父さんが勇者の秘術で自分の霊を俺に入れ、最後の一つは母さんの魂が魔導炉に入っている。


 勇者の秘術とは、勇者が自分の命を他人の魔導炉に託すもの。魂と融合した魔導炉は、全ての特性に対して効果を発揮するという優れものだ。魔導炉に特性を付与するよりも効果は弱い。だが全ての特性が対象となるため、勇者ならば喉から手が出るほどに欲しい。と、カレンに言われた。


 全部カレンから聞いた話だが、勇者の秘術を二つも付与されている俺は、その辺にいる勇者など目にならないほどに強くなれる。そういう素質があるらしい。


 勇者の秘術は人の命を使う。本来は死に際の勇者が仲間のために使うものらしいが、死に際の勇者にそんな暇はなく、勇者の秘術を受けられる者は多くないと言う。その秘術を二回も受けた俺はかなり稀有な存在だ。


 俺は使い方を知らなかっただけ。やろうとおもえば四光モードも目じゃないらしい。


 なので、分析や分解という特性を持たない俺でも、勇者の秘術のお陰で分析や分解の魔法を使えるのだ。


 魔獣に対して、最初は普通に駆け出していく。目測十メートルまで接近したら〈限界突破〉で自分の時間を加速させて更に近付く。


 肉薄しても攻撃はしない。魔獣の頭に触れ〈時層切断〉と〈座標停止〉を併用して魔獣の頭部だけ時間を止める。胸に触れて心臓の時間も止める。横っ腹に手を当てて分析、分解して強化を解く。あとは全力で拳をぶつけるだけだ。


 もう一つの戦闘方法としては、突っ込んでくる相手の時間を〈座標加速〉で急激に進め、同時に〈座標停止〉で切り離す方法。四足の魔獣で例えるならば、飛びかかってくる魔獣の上半身だけを〈座標加速〉で突っ込んでくる速度を上げる。〈座標停止〉を下半身に使用することで、加速した場所と停止した場所で時間のネジレを作る。こうすれば無理矢理物理攻撃しなくても賜法だけで魔獣を倒せるということだ。


 だが、後者ばかりを使っていては訓練にならない。そんな戦い方では対人戦でまったく効果を発揮しないのだ。だからこそ戦い方をいくつかにわけたのだ。


 この二つ以外にも、賜法を組み合わせながら魔法を使って戦闘スタイルを確立してきた。


〈時層断裂〉と〈座標停止〉も、ほとんど同じような能力に見える。けれど生物に対して使う賜法と、空間に対して使う賜法で使い分けができる。〈座標停止〉ならば範囲の拡大や縮小もできるので、これはこれで作っておいて正解だと思う。


 身体の強化もだいぶ様になってきた。眼球を強化することで、まるで時間の流れがゆっくりになったような感覚が得られる。相手の機微も見逃さない。耳を強化すると、相手の呼吸音などもわかるようになった。どういう行動で息が切れるのか、今は疲れているのか、これからどういうふうに攻めるのか。そういった情報を取り入れるのには大変重宝する。


 今までは肌の上に膜を張る感じで身体を強化していたのだが、それだけでは弱いとカレンに言われた。筋肉の細やかな部分、骨の一本一本、爪の先や髪の毛の先まで、神経を張り巡らせるようにして強化することを覚えた。


 膜を作るのは悪いことじゃない。しかしそれだけではダメなのだ。膜を張った上で、根本となる部分の強化も必要だった。


 自分でもわかる。強くなっているという実感がある。だから、自分よりも高レベルの魔獣を目の前にしても問題ない。へっぴり腰にもならなくなった。吠えられても後ずさることもなくなった。


 今だってそうだ。駆けてくる魔獣に対して「どうやって出し抜いてやろうか」と考えている。そう、出し抜く自信がある。勝つ自信がある。


 賜方を駆使して四足歩行の魔獣をさっと片付けた。そして自分から四足歩行の魔獣へと向かっていく。


 魔獣の表情がわかる。驚いている。困惑している。そうだ、それでいい。レベルはお前の方が高いけど、戦闘力はこっちの方が上だ。


 怯えろ、恐れ慄け。


 魔獣の右腕が振るわれた。


 直前で身体を反らしてそれを避ける。振るわれた右腕に触れて、右腕の時間だけを停止させた。


 魔獣の思考が一瞬固まった。その間に背後に回り込んで背中に触れる。分析、分解、攻撃。巨体が若干よろけた。


 後ろを振り向くが、もうすでに俺はいない。魔獣の前方に回り込んで胸に触れた。〈時層切断〉で動きを止め、同時に胸部の強化を剥ぎ取る。


 右拳を力強く握り込んだ。


 思い切り右拳を打ち出すと、更に巨体が揺らめく。


 魔獣の身体を伝って上空へと飛び上がる。飛び上がった際に頭に触れて強化を解いた。


「悪いな、これで終わりだ」


 重力、光輝の魔法を拳に付与した。


 そして、あとは頭部に叩き込むだけだった。


 俺が地面に着地するのと、魔獣が地面に倒れ込むのはほぼ同時だった。


「三発か、まだまだ先は長いな……」


 できれば一発で仕留めたい。そのためになにをしなければいけないのか。これが今後の課題になるだろう。


「もう、なに勝手に終わった気になってるんですか?」


 ちょっと怒った感じのカレンが歩いてきた。頬を膨らませているが、なんというか可愛いという感想しか出てこない。


「過半数を任せたのは謝ろう。でも俺とカレンのレベル差じゃこれが普通だろ?」


 俺が倒したのは四足歩行の魔獣二体と二足歩行の魔獣が一体。しかしカレンは四足歩行二体に鳥類二体。飛行系の魔獣は速いだけじゃなく攻撃も鋭い。それを二体も倒したっていうのは、さすがにレベル差を感じざるを得なかった。


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