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魔王を守る下僕となりて  作者: 絢野悠
勇者の資格
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一話

 アーサーが仲間になってから数週間が経過した。が、馴染むどころか城内が険悪になるばっかりだ。それもこれも、アーサーがいちいちセレスに突っかかるのがいけない。セレスだけじゃなくて俺たちにも突っかかってくるので誰も味方をしない。後継者だったころのプライドだろうけど、従者になった以上は従って欲しいものだ。


「だから! もっといいベッドが欲しいと言っているんだ」


 自室にて、イスに座って読書をしていると大声が聞こえてきた。アーサーだ。


「またやってんのかよアイツは……」


 いつもいつも、なんか文句があればセレスのところに怒鳴り込む。そしてすぐに撃退される。


「おい! 俺はまだ――」


 物凄い爆音が城内に響いた。


「おー、揺れる揺れる」

「なんだよ、私の乳を見て言ってんのか?」


 ズイっと、シャロンが目の前に現れた。目の前にはメロンが二つ。


「ちげーよ、っていうか他人の部屋に勝手に入るんじゃない」

「今となっては二人の部屋でしょ? 私とライのさ」

「どこから出てきた設定だよ……」

「さあ? こういう方が面白いでしょ?」

「面白いとか言っちゃうのね。とりあえず助けに行ってやるかな」


 本を閉じ、テーブルの上に置いた。重い腰を上げてセレスの部屋に向かう。当然のようにシャロンもついてくる。


「あーあ、またやっちゃったかー」


 案の定、セレスの部屋の前ではアーサーがノビていた。


「もう我慢できない。やっぱりコイツは簀巻にして海に流す」


 セレスはそう言いながら、気絶しているアーサーに向けて手の平を向ける。


「申し訳ありません。よく言って聞かせますので、命だけはご勘弁を……」


 その二人の間に割って入ったのはヴェルだった。何度も何度もセレスに深く頭を下げていた。もう勇者でもないし、ヴェルがアーサーよりも格下というわけでもないはずだが。


「ちゃんと手綱を持っていられる?」


 不機嫌そうというか間違いなく不機嫌なセレス。一応通常モードなんだろうけど、それでも虫の居所が悪いと迫力がある。ずっと魔王としてやってきたのだから当たり前と言えば当たり前だ。


「大丈夫です。次こそは、必ず」


 セレスは手を下ろした。諦めたようにため息を一つ。


「わかった。それじゃあアーサーの方はヴェルに任せるわ。私だっていつまでもアーサーばかりにかまけてもいられないし」


 基本的にセレスは、城の中にいる時つまり通常モード時ははぐだぐだしていることが多い。というか魔王モードの時に気を張っているので、城内では素の自分でいたいのだろう。ようは「城の中では休止状態」ということだ。


 それなのに、アーサーのせいで気が立っている。これでは疲労も取れないだろう。特にと言ってはなんだが、アーサーがこの辺の魔王を駆逐してしまったせいで、集落を守るのがクロムウェル家だけになってしまった。毎日毎日いろんな集落に出向いている。


 セレスは自室の中へと戻っていった。バタンと大きな音を立ててドアを閉めた。あー、イライラしてるなこれは。


「しっかりして、アーサー」


 ヴェルがアーサーの肩を掴んで強めに揺らした。ややあって彼が意識を取り戻す


「ここは……」

「セレスティア様にお仕置きされて気絶してた」

「ああ、そうか。ってそうじゃない! ベッドだ! あんなギシギシとうるさくて弱々しくて薄いマットレスのベッドなんてあり得ない! 今すぐ変えさせるんだ!」

「落ち着いてアーサー。私たちはもう勇者じゃないの。魔王の従者なのよ」

「納得して従者になったわけじゃない!」

「納得とかそういうのは二の次なの。私たちは二人共セレスティア様に命を救われたのよ。ワガママも大概にしなさい」

「くっ……! お前は拾われた恩も忘れたのか……!」


 勢い良く立ち上がるアーサー。


「待ちなさいアーサー!」

「うるさい! この裏切り者が!」


 彼女の手を振りほどいて走り去ってしまった。こういう痴話喧嘩みたいなのって、外野の俺たちはどうすることもできないんだよな。アーサー自身が変わらないとどうしようもない。


 眉根を寄せて、ヴェルは地面を見つめていた。


「なあヴェル」

「ああ、ライ。見ていたのね」

「この城に住んでて見てない人間はいねーけどな。向こうにはセラもいるし……って、追いかけなくていいのか?」

「今はそっとしておくのが一番だと思うから」

「そっとしといてどうにかなるのか、あれ」

「たぶん」

「たぶんて。それよりお前、なんでアイツに入れ込むんだ? もう勇者じゃないんだぞアイツ。従うことも守る必要もないだろうが」

「例え勇者じゃなくなっても、アーサーが私にしてくれた過去は変わらないから。私はどれだけ虐げられても、一生彼を守っていくと誓ったの」

「守るって、従者になってもヴェルよりもアーサーのが強いと思うけど」

「世の中、力だけが全てじゃない。それは私もアーサーも知っているわ。力を持つということは恨みを買うことにも繋がる。現に私はセレスティア様からアーサーを守った。これでいいの」

「つってもセレスはアーサーを殺したりしないだろうがな」


 俺がそう言うと、口に手を当てて彼女はクスリと笑った。


「海に流そうとはしたけどね」

「流すというか落とすってのが正解だと思うがね」

「アーサーならいいんじゃない?」

「その言い方よ。そうだ、お前らが一緒にいるようになった経緯とか訊いてもいいか? 嫌なら別にいいんだが」

「いえ」と、彼女は首を振った。

「アーサーがいない時にしかできないし、面白いかどうかはわからないけど、それでもいい?」

「ああ、問題ない」

「話は決まったな。んじゃライと私の部屋に行こう」


 横からヌッと出てきて、シャロンは話を勝手にまとめてしまった。


「では私も」


 今度はセラだ。いつの間に近づいてきたんだよ。


「それじゃあ私も」


 ドアが開いてセレスが出てきた。聞き耳たててやがったな。


「わかったわかった。それと俺とシャロンの部屋じゃない。俺の部屋だ」


 女性四人を引き連れて自室に戻った。若干の背徳感があるような気がするけど、色気があるような状況じゃないのですぐにそんな感じはなくなった。

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