表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の傭兵団  作者: メガネ右
一章《初仕事》
7/12

《初仕事》5話

 シュウとレイナが戦闘を終えた頃、砂埃はすっかり消えていた。

 これからしなければならないのは死体の焼却だ。


 シュウは火をおこす道具を持っていなかった。

 

「レイナ、何か火をおこす道具もってる?」


 とシュウが聞くと、


「あんたもしかして火魔法使えないの? 傭兵団なら一つぐらい覚えときなさいよ」

 

 シュウは苦笑いしながらレイナとともに死体を集める作業に入った。


「にしても多かったね。どうしてかな」

「私に聞かれてもわかんないわよ」


 と、シュウとレイナはたわいない会話をしながら散らばる死体が確実に死んでいるか確認しながら一箇所に集めて行った。



 死体の回収も終わり、レイナが一箇所に集めてた死体に向け、詠唱を始める。


「その身に業火を宿し、全てを燃やし尽くせーー【火球(ファイアボール)】」


 レイナは魔法を使って戦うことはないのだが、この魔法、「火球」は先程レイナが言ったように、傭兵団なら覚えておかなければならないものだ。

 なぜなら火は暖をとったり、このように死体を焼いたりとあらゆる目的に使うからだ。




 焼却が終わった後、シュウたちは馬車に戻った。

 そしてジンを見つけるとシュウはすぐに報告を行った。


「ジンさん、砂埃の原因は魔物でした。一応片付けておきましたが、数が異常に多かったです」


 確かにこの数は異常だった。人の通る道に魔物が迷いこむことがあっても大勢の魔物が襲ってくるということはほとんどないからだ。

 それに対してジンは、


「こりゃ仕事の内容にも関係してるのかも知れねえな」


 と、いかにもな顔で答えるのだった。





 しばらくして日も沈んだ頃に一行はヤマズに到着した。

 本当は夕方ごろに到着する予定ではあったが、予想外の出来事が起こったからだ。

 しかしそれはそれ、これはこれでシュウたちの仕事には関係なかった。

 いや、到着が遅くなったという意味では関係したが、けがをした訳ではないので仕事内容自体にはさほど悪影響はない。

 シュウはそのことに安堵した。




「ガルさん、ここまでありがとうございました」


 と、シュウが言うと、ガルも別れを惜しむでもなく明るく話し出した。


「いやいやこっちこそ助かったぜ! あれはベラだけじゃちときつかったかも知れねえからな」

「私だってあれぐらいなら処理できたわよ! ……多分」

「多分じゃねえかよ」


 シュウはガルとベラとの痴話喧嘩のようなものに苦笑いを返しながら、


「今度会った時はまたお世話になりますね。ありがとうございました!」

「おう! お前ら仕事失敗しないようにがんばれよ! じゃあ達者でな!」


 ガルたちが手を振りながら馬車で去っていくのを見ながらシュウは絶対に依頼を成功させると心に決めるのだった。




 



 シュウたちがガルたちと別れ、村に入っていく時、シュウは村の住人からみられていることに気づいた。


「ジンさん、なんか僕たちみられてませんか?」

「ん、そうか?……ま、俺らが来たから驚いてるんじゃねえか?実際この依頼曖昧で受けにくいしな」


 そう、今回の依頼はシュウたちドラバルド傭兵団であれば大丈夫だろう。

 しかし、他の傭兵団ならこのような調査などの依頼はあまり受けない。なぜなら基準が曖昧だからだ。討伐依頼なら難易度はわかりやすい。

 しかし今回のような調査依頼の最も危険なところは敵がわからないということだ。あまりに強敵だった場合普通の傭兵団には手に負えない場合がある。


「ま、そんな依頼をこなすために俺らがいるんだけどな」


 ジンの言う通り、依頼が詳細不明でも受けない訳にはいかない。

 誰も受けずに村が崩壊など最も怒ってはいけない事態である。そのようなことがないようにドラバルド傭兵団などの上位に君臨する傭兵団が依頼を受けるのだ。


 しかし、全く分からないという訳にもいかないため、まずシュウたちは村長の家に行くことにした。






「というわけで、今回の依頼の詳細を確認したいんですけど」


 シュウたちは村長の家に来ていた。ここでもやはり交渉するのはシュウだ。

 相手の村長は初老の男だった。男は頷き話し出した。


「分かりました。まず今回の経緯ですが、うちの村の若いもんがこの村の東側にある森に入った時に、いつも見ないような巨大な熊がでたと報告してきたのですよ。その後うちの村のもので搜索に出たのですが魔物の数が多すぎて奥にまでいけなかったのです。なので傭兵団に依頼を出しました」


 シュウたちとしてはその熊の詳細を知りたかったのだがそれはできそうになかった。


「そうですか、詳細は不明か。……巨大な熊か、ジンさん何かわかりませんか?」


 ジンは一瞬考えた後、口を開いた。


「そうだな……熊の魔物ならグリズリーがいるが、普通の熊と大きさはあまり変わらないはずなんだよな」


 するとそこにレイナが、


「なら考えられるのはグリズリーの凶暴種ね」


 凶暴種とは魔物が普段より大きく、そして名前の通り凶暴になるという現象だ。その原因には諸説あり魔力溜まりが現在の最も有力な説だ。


「だったら大丈夫だろうな。グリズリーの凶暴種ならシュウとレイナでも十分倒せる」


 ジンの言った通りではあるが一応の確認のために、3人は熊を見たという村人のところに行った。





「ああ、すげえでかい熊だったぜ!俺もびびっちまってさ、すぐに逃げ帰って来ちまったよ」


 そう言うのは発見者の村人の青年だ。彼は熊を見たとき、何も考えずに走って帰ってきたと言う。



「結局わかったのは敵が多分グリズリーの凶暴種っていうことだけか」


 ジンのため息混じりの声にはシュウも無駄足だったと肩を落とすしかなかった。






 夜になり、シュウたちは次の日の予定の確認をしていた。ちなみにこの村では村長が家に泊めてくれることになっていた。


「まずは明日の確認だ。明日、シュウとレイナには森の調査をしてもらう。そこでグリズリーを発見したら討伐だ。俺はその間村に魔物が入らないように警護だな」


 まず最初に切り出すのは団長であるジンだ。

 しかし、いつものようにレイナが反対する。


「だからなんでいつもいつも私とシュウなのよ! 団長がひとりで行けばいいじゃないの!」


 確かにそうだ。ジンがひとりで行くほうが早いし、確実だろう。

 しかし今回はそれではいけない理由がある。


「あのなレイナ? 今回はシュウの初仕事っていう意味も兼ねてんだ。シュウに行かせなきゃ意味ないだろうが。それを考えるとこうするのが一番いいんだよ」


 それを言われてレイナが黙るのと同時にシュウも申し訳なさを感じていた。


「ごめんレイナ、僕のせいで」


 それを聞くとレイナもそっぽを向いて答えるのだった。


「別にあんたのせいじゃないんだからいいわよ。……私とあんたなら十分だろうし」


 ジンは2人をニヤニヤしながら見ていたが、2人はそれに気づいてはいなかった。




 そして話し合いも終わり、夜はふけていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ