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伝説の傭兵団  作者: メガネ右
一章《初仕事》
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《初仕事》3話

 朝起き、シュウは既にベッドにジンがいないことに気づいた。もともと最上階である3階の部屋を2部屋借りており、レイナとは違う部屋だったのでレイナについては分からなかったが、きっとレイナも起きているだろうと思い起きて素早く身支度を済ませるとジンとレイナを探しに下に降りていった。



 一階の酒場に着くとジンが宿屋の店主の男となにやら言いあっていた。



「ジンさん、何かあったんですか?」

「おう、シュウ起きたのか。いやな、昨日の夜だったのかは分からねえがうちの傭兵団の馬が盗まれたらしいんだ」

「え!? 馬が盗まれた!? でもここの宿の馬舎に預けていたんじゃないんですか?」

「預けてたよ!だけど、ここの店員が朝様子を見に行ったらいなくなってたらしいんだ」


 シュウは呆然としてしまった。馬がなければヤマズまでの移動手段がない。期間が設けられているので歩いていくという選択肢はない。


「そういえばジンさん、レイナはどこに行ったんですか?」

「ああ、レイナにはいま馬が近くにいないか探しに行ってもらってる」


 先程から姿の見えないレイナはどうやら馬を探しに行ったようだ。



 しばらくしてレイナが帰ってきたが、


「ダメだったわ、どこにもいなかったし、一応村の人にも聞いたけど誰もなにも知らないって」


 と、報告するのだった。

 そしてこの後どう動くかの緊急会議が始まった。


「というわけでこの後どう動くかなんだが何か意見のあるやつはいるか?」


 というジンの発言に答えたのはシュウだった。


「商人に頼んで乗せて行ってもらうというのはどうですか?」


 それに対してレイナも賛同したのだが、ジンは違う意見だった。


「ヤマズの近くを通るような商人が居たとして、それまでの金はどうするんだ?そんなに余分な金は持ってきてないぞ」


 それに対しては唸ったシュウを見てレイナが咄嗟に思いついたように口を開いた。


「私たちの護衛と引き換えにしたらどうかしら?それなら乗せてくれると思うんだけど」


 レイナの発言は自分たちがドラバルド傭兵団であることを最大限にいかした案だった。ドラバルド傭兵団の名前は王国中に知れ渡っており、そんな傭兵団が護衛してくれるというなら了承してくれる商人もいるだろうからだ。

 そこで会議は終わり、後は商人を探すだけとなった。ジンが宿の店主に聞いたところどうやらガルという商人が目的地のあたりを通るかもしれないという情報が得られた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「は? うちの馬車に乗せて行って欲しいだァ?」



 ガルという商人は犬の獣人だった。どうやら彼はストランド王国へ商売をしに行くらしい。

 交渉しているのはシュウだ。ジンやレイナも一緒にいたが、2人は交渉が上手くないと言ってシュウに押し付けた。



「そう、途中のヤマズという村まで乗せて行って欲しいんだ」


 ここでシュウがいつものように丁寧な口調じゃないのは丁寧な口調だと舐められるかもしれないと宿の店主から教えられたからだ。

 しかしやはりガルも商人というだけあった。


「ヤマズまでならいいが、タダでって訳にはいかねえなァ。そっちはなにをくれるんだァ?」

「僕たちの護衛です」


 と、シュウは事前の会議通りに返事をした。しかし、


「あのなァ坊ちゃん、俺らがここまでどうやってきたと思ってんだ?護衛なら既にいるんだよ」


 そう、ガルたちがここまで護衛もなしに来るはずがないのだ。

 護衛もなしに商人が旅をするには危険すぎる。魔物もそうだが、盗賊に出会すこともある。

 しかしシュウたちもただの護衛ではなく、


「僕たちはドラバルド傭兵団っていう傭兵団なんだけどさ、聞いたことない?」


 ドラバルド傭兵団の名前を聞いたガルは目を見開いた。

 目の前の少年の後ろにいる2人をよく見ると確かにドラバルド傭兵団のマークがついたローブを羽織っていた。


「おお! お前らがあのドラバルド傭兵団だったのか! それならこっちも損はねえな。ヤマズまで乗せていくだけでいいんだろう? じゃあ交渉成立だ。頼んだぜ」


 こうしてシュウたちはなんとかヤマズまでの移動手段を手に入れた。



 シュウたちが今いる村からヤマズまでは普通の馬車なら1日と半日ほどかかる。

 シュウたちもこれなら期限まであと2日半あり、十分に依頼をこなせるだろうと踏んだ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 早速馬車に荷物を乗せ終えたシュウはガルと話していた。


「ガルさんってどういうものを売ってるんですか?」

「ん? おお、俺は基本はポーションや武器だな。大体は戦う時のためのの道具だよそういえばシュウ、なんかえらく丁寧な口調じゃないか?」


 気が抜けていつもの口調に戻っていたシュウは慌てて口を開いた。


「え? ああ、ガルさんと交渉する時は丁寧な言葉はやめたほうがいい相手に口調を合わせろって宿の店主の方に教えられたんですよ」

「ハハッ、なんだ、そういうことかよ。別にその口調でもいいんだけどな。ていうかシュウ、お前もドラバルド傭兵団なんだよな?そんなにちっさいのによくやるな」

「いえ、僕は最近入ったばかりで、この仕事が初めてなんですよ。だから緊張しちゃってます」


 話している途中でシュウは元からいた護衛のことについて聞いておかなければならないということを思い出した。


「そういえば僕たちの他の護衛って誰がいるんですか?」


 それに対してガルは、


「ああ、ベラっていう女のやつだ。お前らにはかなわないかもしれないが結構やるやつだぜ! まあ、坊ちゃんには少し刺激が強いかもしれんが」


 シュウとガルが話していると突然女の声が聞こえてきた。


「ちょっとガル! この人たちは何なの?」


「おっと噂をすればなんとやらってな。あいつがベラだ」


 ガルが指差した先にはレイナに睨まれた女が立っていた。

 シュウはベラと呼ばれたその女に目が釘付けになった。

 正確にはベラの胸に、だ。

 そこには豊満な双丘が自己主張していた。シュウは楽園が広がっているかのような錯覚に陥っていた。

 シュウだけでなくジンもそれに見入っていたが、


「ちょっとシュウ! じろじろ見てないで何か知ってるなら教えなさいよ!」


 というレイナの声にシュウは現実に引き戻された。


「ああ、レイナ。その人は僕たちの他に最初からガルさんの護衛をしていたベラさんだよ」

「そう、ベラっていうのね! よろしく!」


 と、レイナがベラに手を差し出すと、ベラはその手をつかんで答えた。


「えっと、いまいち状況が飲み込めないのだけど……あなたたちは追加の護衛ってことでいいのね?」


 それに対してはシュウが答えた。


「はい、そうです。今回一緒に護衛をやらせてもらいます。ドラバルド傭兵団のシュウと言います。そっちの人がジンです。よろしくお願いします」

「お、おう。ジンだ。よろしくな」


 ドラバルド傭兵団と聞いたベラは喜んでいるようだった。


「まあ、あのドラバルド傭兵団? 私一人じゃ不安だったから嬉しいわ! ベラよ。よろしくね」


 ベラとシュウが話している間ジンはずっと一点ばかりを見ていた。それに気づいたレイナがジンを睨むというやりとりが起こっていたのだがシュウもベラも気づかなかったようだった。

 こうしてシュウたちは護衛として出発した。


 馬車の中で他愛もない会話を交わしながらその日は過ぎていくのだった。

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