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伝説の傭兵団  作者: メガネ右
 
2/12

プロローグ《入団》

 ここはアース王国王都「アースランド」の城下町である。

 今日もアースランドは活気に溢れている。

 しかし、ここ「ドラバルド大通り」だけは少し違う様子を見せていた。



「あのー、すいません。どなたかいますかー?」


 赤い髪の少年シュウ・トラストはドラバルド傭兵団が集まるという酒場「ゴージャス」の扉を叩いていた。


 そう、「ドラバルド大通り」が違う様子を見せていたというのはこれが原因だった。扉を叩いていたのは10歳にも満たないような少年なのである。普通酒場の扉を少年が叩いているということですらおかしいことであるのに、その酒場があのドラバルド傭兵団が集まる酒場なのだ。この奇異な現状に周囲は驚いてしまっている。これがこの普段喧騒がやまない大通りを静かにさせている原因である。


 そんな他人から見たら身の程知らずと思われてもしょうがない少年に絡んでくる人間は当然いるものだ。


「おい、坊ちゃん。ここがどこだかわかってんのか?」


 シュウが後ろを振り返ると2人の大柄の男が立っていた。そんな2人に対し、全く警戒していない様子で答えた。


「ええ、わかってますよ? ドラバルド大通りでしょう?」


 しかし、そう答えたシュウに対し苛立った様子で右の男が言った。


「あん? ま、合ってはいるんだが違ぇな。」


 そしてまるで2人は同じ思考をしているかのように左の男が言った。


「ゲヘヘ、ここはあのドラバルド傭兵団様の集まる酒場ゴージャスだぜぇ?」


 しかしシュウはその2人に対し顔を顰めながら言った。


「いや、だからその傭兵団にーー」


「あー、なるほどな。依頼があって来たっていう訳だ。だがあの傭兵団様は直接依頼を受けてはくれないぜ?まずはちゃんとギルドに行ってーー」


 しかし、途中で遮られたシュウは誤解を解こうと思わず叫んだ。


「そうじゃなくて、傭兵団に入るの!」



 しかし、それは静かだったドラバルド大通りを騒がしくすることになる。



「……はぁ? お前みたいな小っちゃい坊ちゃんが?ドラバルド傭兵団に? 入る? ……ハ、ハハハ!……嘘だろオイ! 冗談キツすぎるぜ?」


「オイ! お前ら僕が黙って聞いているからって偉そうに! そんなに弱そうに見えるのか! 僕だってもう10歳なんだ!」


 この世界において10歳というのはある程度は大人として扱われ始める歳だった。だからシュウは怒ったのだ。しかし、それでも10歳で傭兵団というのは珍しいだろう。2人の男はさらに笑いながら言った。


「ああ、とにかくよ! ここはお前みたいな坊ちゃんがくるとこじゃーー」



 しかしその騒がしさも顔に傷の入った男の登場で止むことになる。


「オイ! お前らうちの店の前で何を騒いでやがんだ! ってそっちの2人はケラとケルじゃねぇか! また2人してうちの前をほっつき歩いてたってぇのか? あんだけやめろって言っただろうがッ!」


 扉を開けていきなり怒鳴り散らした男を見てケラとケルと呼ばれた2人の顔は少し、どころではなくかなり引き攣りあたりは静かになった。

 しかし、その静寂はさらに顔に傷の入った男の後ろから出てきた緑のローブを着込んだ青い髪で青い目をした男によって壊される。


「おいおいクラスバ、そんなに怒鳴り散らしてるとその禿げ散らかした頭がさらに禿げるぞ?」


 その男が出てきた瞬間、シュウの目は急に輝きだした。それもそのはず、なぜならその男が着ているローブの胸についているマーク、龍の形をしたそのマークはドラバルド傭兵団のマークだったからだ。

 そして興奮したシュウは、


「うわぁ! おじさんドラバルド傭兵団の人ですよね! お願いします! 僕を傭兵団に入れてください!」


 シュウがそう叫んだ瞬間、シュウにはその男の目の色が変わったかのように見えた。自分の周りの空気がビリビリと自分の肌を刺激してくるのだ。


「あ、あの、入れて……くれない……で、しょうか……?」


 なんとかその空気の変わり様を克服し声を出したのだが、シュウは自分の出した声がかなり動揺していることに気付いた。



 すると青髪の男は、


「クッ……ハッハハハハ!」


 と、笑いだしたのだった。

 しかし、それにはシュウもいい気はせず、


「ちょっと! 入れてくれないか聞いてるんですよ! 笑わないでください!」


 と、顔を赤くして言うのだったが青髪の男は、まだ笑っていた。

 そこにこれでは店の邪魔だとばかりにクラスバと呼ばれた男が、


「おい、ジン! お前いつまでも笑ってないで話ぐらい聞いてやったらどうなんだ! このままだと俺ァお前ごと全員まとめて外に放り出さなきゃならなくなるぞ!」


 それに対しジンと呼ばれた青髪の男は、


「あぁ、スマンスマン。ちょっと意外だったもんでな! いやぁしかしそうか、おい坊主! お前名前なんていうんだ?」


 その疑問が明らかに自分の方に向けられていると分かり、シュウは慌てて答えた。


「シュウ・トラストです!」


 するとジンは、


「そうかシュウか。いい名前だ。ついて来い入れてやるよ」


 と、答えるのだった。






 そんな二人のやり取りの後、クラスバはケラとケルの2人を哀れみの見ていた。その2人の下半身が濡れていたのだ。しかし、それも仕方のないことである。先ほどシュウがジンの目の色が変わった様に見えた時に感じた空気の揺れはジンがシュウに向けてジン自身の魔力を放ち、シュウが耐えられるかを試したからである。

 その魔力が前だけを向いていたからジンの横に居たクラスバは逃れられたが、シュウの横に居た2人は余波だけであるもののジンの、いや「ドラバルド傭兵団団長ジン・ファルド」の魔力を受けてしまったのだ漏らしてしまっても仕方のないことである。


 とはいえ、それに動揺しながらも耐え切ったシュウにはある程度の実力はあるということなのだが。


「おい! ケラ! ケル! いつまでもつっ立ってないではい帰った帰った! 仕事の邪魔だ!」


 その声に驚き2人は


「「は、はいぃぃぃ!」」


 と、叫びながら逃げるように消えていくのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 シュウはジンに連れられ酒場「ゴージャス」のなかに入っていた。


 やはり酒場というだけありなかは喧騒に溢れて……いなかった。中にはシュウ、ジン、クラスバ、の他に奥の方に座っている2人しかいなかったのだ。さらにその2人も女であったために騒ぐものなど1人もいなかった。


 この状況にシュウは疑問を抱いた。その疑問とは騒がしくないことではなく人数である。シュウの知る限りではドラバルド傭兵団の現在の人数は7人であったはずだったからだ。


「どうしてこんなに人が少ないんですか?」


 その疑問に対して答えたのはシュウたちの方に近づいて来た黒髪の女性だった。


「みんな仕事で出て行っちゃっててね。今いるのは私とジンとあの子の3人だけよ」


 そう言って黒髪の女性は先程座っていた席の方をさした。

 指のさした方向に目を向けると、そこには青の長い髪を結んだ少女がいた。さすがにシュウもそれには驚いた。なぜなら黒髪の女性が人数に入れたということはその青い髪の少女もドラバルド傭兵団の1人であるということだからだ。シュウはその自分より幼いであろう少女に驚いたのだ。

 シュウが驚いていると今度はジンが喋り出した。


「というわけでシュウ、今は3人しかいないがとりあえず自己紹介だ。俺の名前はジン・ファルドだ。一応団長やってる。よろしくな」


 それでこっちがーーとジンが言おうとしたのだが黒髪の女性はいらないとばかりに、


「リノよ、リノ・ディッツ。よろしくね。副団長よ」


 そして2人が終わった後青い髪の少女を見るのだが、青い髪の少女はよく見ると青い目をしていた。


「あたしの番ね。私はレイナ・ファルド。11歳よ。よろしく」と、早口で言った。


 シュウは驚いた。それは3つ、まずは歳である。レイナは11歳と言った。自分より年下であると思っていたシュウはすこし悲しく思ったりしたのだが。

 そして2つ目は名前である。レイナはファルドと名乗ったということだ。そして青髪青目である。そう、レイナ・ファルドとはジン・ファルドの娘だったのである。

 そして最後に彼女自身にだ、シュウはその時とても可愛らしいと思った。要するにただの一目惚れである。その辺りはシュウもまだまだ子供なのだが。


 しかしシュウは歳の割には普段から落ち着いていたので大丈夫だった。


「シュウ・トラストです。よろしくお願いします」


 なるべく歳を聞かれないように、動揺を隠しながら言ったのだが、


「シュウはいくつなの?」と、リノに聞かれてしまった。


 そこでシュウは嘘をつけるわけもなく10歳です、と答えた。


「なんだ歳下なのね」


 レイナが冷たく言い放ったのを聞き、シュウは少し心の中で落ち込んだ。


 そこでなんとか沈黙を打開しようと、シュウは話を切り出した。


「あ、あの。他の4人の方について聞いてもよろしいでしょうか?」


 それにジンが答えようと口を開いたのだが、


「あとは無口と変態とアホ姉妹よ、だいたいどこか頭がいかれてるわ」


 と、レイナが答えるのだった。

 が、なんとなくシュウは聞かなかったことにした。


「おいおい俺を忘れてもらっちゃ困るぜ!」


 後ろから急に聞こえた声に身構えたシュウだったが、その必要はなかった何しろその声の主はクラスバだったからだ。


「俺だけ仲間はずれとかやめろよな! 俺はクラスバ・ゴージャスだ! よろしくな!」


 それに対してシュウも分かってますよとばかりに頷いた。

 それを見たクラスバは頷き、


「よし、今日は歓迎会だ! お前ら飲め! 飲め!」


 と、酒を勧めるのだった。

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