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足元を見る女

作者: 鯣 肴

 私はA子といいます。みなさんは、何か自分が嵌り込んでいて、抜け出せないものはありますか?私にはあります、とても強いのが。それを頭からひとときも消し去ることができない、それについて考えないなんてとんでもない。さらに、そのすばらしさを他の人にも理解してもらいたい、同じ道に入ってほしい。きっとそんなものが誰にでもあるはず。


 私にとってのそれは靴。これがすべて。


 今日は靴までおしゃれな友達とケーキを食べる約束をしている。私は友達との待ち合わせ場所へと向かうため、町に出る。


 私は町を歩くとき、つい視点が下を向く。通り過ぎる人々の足元に目が行く。どんなに上質なスーツを着た紳士であっても、足元がお留守な人は多い。例えば今通り過ぎた素敵なスーツの紳士。スーツはきれいでシワも無く、ネクタイもばっちりとしていても、靴は色が剥げて傷だらけだ。ぼろぼろちぐはぐだった。さらに、今私の前を横切ったパーカーを羽織り、ジーンズを穿いているカジュアルな格好の淑女。穿いているスニーカーの踵が斜めに激しく磨り減っていた。どちらもちぐはぐだ。服はちゃんとしているのに靴で手を抜いてしまうとは。それでは足元を見られるぞと。


 そんなことを考えながら歩いているうちに待ち合わせ場所である公園の大噴水の前に着いた。しばらくすると友達のB子が私に気づいて手を振った。こちらへ掛けてくる。


「A子、お待たせ。待った?」、とB子は私の顔を覗き込んできた。

「いいえ、では行きましょうか。」と、私は答えた。


 ケーキ屋までの道の途中、B子はいつも言うように私に言った。「A子、また同じ服装なの?会うたびいっつもいっしょの服着てるんじゃない?靴だけはいつも違うのみたいだけど。そんなんじゃ、『この人おしゃれだめなんだわ』って足元みられちゃうよ。」と。


 会うたびに聞かされているが、今日は殊更心に響いた。これでは私もさっき見た人たちのこと言えないなあと。

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