破滅へのロンド-The rondo to ruin -
※投稿当時にタイムリーなメタが存在します。読む際には、その辺りも含めてご注意ください。
「そんな、まさか―」
【こんな事があるのか…?】
【これが現実…これが、現実なのか?】
周囲は驚いていた。それだけ、エイジが叩きだしたスコアが恐ろしい物だった…と言うべきなのだろうか?
【EIJI:9950000PTS】
まさかの1グッド判定というハイスコアだった。彼が使用したのはライトセイバーだけではなく、マイクロミサイル、ロケットランチャー、レールガン、ビームチェーンソー等…多種多様の武器を使用していた。
「あれだけの数のスターダストを把握して的確に使用するとは―」
「まるで、化け物―?」
【複数スターダスト使用は反則ではないが、複数使用すると言う事は使用する武器の使用方法を全て把握していないと難しいだろう―】
【それをわずか数カ月でマスターするとは…】
「間違いなく、彼こそが優勝候補―」
あのスーパープレイを見た瞬間、誰もがエイジの優勝は揺るがない…そう思っていた。
『そう簡単に、優勝者が決まる訳はないよ。これは予選、いくらハイスコアを出そうとも上位に入り込まなければ本戦に進む事は出来ないのだから―』
中央モニターに映し出されたのは、グルグルメガネ、天使の羽が生えているようなドレス、ロングスカート、スパッツ、隠れ巨乳、ムチムチな体格と言う女性…。オーディーン本人だった。
『確かにエイジは現時点で暫定首位。しかし、これで優勝は揺るがないと思ってもらっては困る』
「じゃあ、どうやって首位を取るつもりなんだ?」
オーディーンは、観客の一人がぶつけた質問に、こう答えた。
『簡単な話さ。要するに1000万点のパーフェクトを出せばいい。破滅へのロンド【ANOTHER】を超える難易度の曲を―』
オーディーンが端末で選曲した曲は、観客をも驚くような選曲だったのである。
《NightMare【Another】:ZERO》
曲名が出てきたと同時に歓声が上がった。この曲は、アーティスト表記こそZEROという名義なのだが…。
「難易度レベルは平然と20を超える楽曲…この曲で1000万点を出す気なのか?」
「Aクラス到達者でも、この曲のハイパーをフルコンボするのに時間がかかると言われている楽曲…それがNightMare―」
「アナザーでもフルコンボ到達者は指折り数えるレベルで、しかも達成者はバルムンクとグングニル、ナツキと言った初期プレイヤー限定と聞く…」
「そんな楽曲をフルコンボしようなんて、無茶過ぎる」
周囲の観客も反応は様々だが、ネット上では…。
【この曲で来るのは順当だな】
【しかし、難易度ハイパーではグングニルやバルムンクも1曲目に選曲している以上、あの2人を抜く為にもアナザーは必須か…】
【これ以上の楽曲と言うと、レベル20オーバーの曲はフルコンボ達成者が0人と言うクラスになるからな…】
【レベル30を超える発狂系楽曲に特攻するよりも、クリアに望みがある曲を選んだか】
【この選択が吉と出るか凶と出るか―】
オーディーンの選曲は予想外と見るイベントの観客に対し、ネット上では順当と見る意見が多かった。それだけ、スコア上位との差を広げる為に必要なのは…。
【NightMareのアナザーはレベル25、フルコンボ達成者も1ケタ、パーフェクトなんて夢物語…そう言われている】
オーディーンは演奏を始める前、何かのパネルに数字を入力していた。どうやら、プレイする前にオプションを設定しているようだ。
【オプションを設定したと言う事は、手持ち武器を複数投入する気か?】
【初期プレイヤーでも使用武器を曲によって変えると言うプレイをする人物はいるが、1曲の為に複数武器を使用するなんて…】
【二刀流というプレイスタイルも確立されているからな。特に1曲で複数武器を使うのも反則ではないが、公式で推奨されているプレイとは―】
【確か、エイジもビームサーベルとビームライフルという2つの武器を使用していたな…】
【まさか、オーディーンの狙いは…】
ネット上では、オーディーンが複数武器を使うのでは…という話題で盛り上がっている。観客は、この事実に関しては全く気付いていない。
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「さて、始めるか―」
最初にオーディーンが構えたのは、大型のロケットランチャーとガトリングガンである。しかも、プレイフィールド上にはセントリーガンと言われる設置ガンが2つ、武器の入っていると思われるアタッシュケース5個、更には大型のスナイパーライフルも用意されている。
-Are You Ready?-
曲開始10秒としない所で、オーディーンはロケットランチャーを全弾発射、弾切れを確認した後に1個目のアタッシュケースを開け、そこからアサルトライフルを取り出す。
【ロケットランチャーの先読み発射で、ターゲットに全弾命中…だと?】
【上級プレイヤーの場合は、先読み発射をするプレイヤーが多いと聞くが―】
【それよりも、使い勝手が悪いと言われているセントリーガンを何故配置したのか…。あれはターゲットに向けて自動発射されるが、パーフェクト狙い等では逆に判定で苦しむ事になるのでは?】
セントリーガンは、自動的に発射されるタイプの設置武器と言う事もあってパーフェクト狙いとしては不向きというのがネット上でも半数である。しかし、今回はアナザー譜面と言う事もあってフルコンボを狙う為にあえて設置をした…と言う方向とも考えられていた。
(微妙にずれた?)
オーディーンは、アサルトライフルを撃ちながら、ロケットランチャーの先読み発射で命中したターゲットを見て思った。あのタイミングより、0.1秒単位でズレが生じたのだろうか?
【何と言う先読み】
【これが上級者のプレイなのか?】
【信じられない…】
オーディーンが秒単位でズレが生じたとする部分も、一般人の感覚等では全く分からないと言うのが半数以上と言う事がネット上でのコメントでも分かる。
曲の大筋の流れは『Are You Ready?』というサンプリングボイスに始まり、電子ピアノを思わせる音源で怒り、悲しみ、憎しみと言ったような負の感情が奏でられる。それが、前半部分に当たる。
ZERO自身、この曲のコメントでは『特に語る事はないが、あえて言うなればとある世界線で起こっている音楽業界の激闘をイメージした』とある。
後半は、音楽業界を襲う脅威、全ての元凶等をハイスピードトランスで表現している。
【出た! 文字通りの悪夢とも言える階段地帯が…】
【単独武器だけでも苦戦するエリアを、複数武器でどうやって…】
【あの地帯、スコアを犠牲にしてのフルコンボ狙いでも至難の業なのに、どうやってクリアする気なんだ?】
ネット上でも心配しているのは、曲の後半部分に登場する大量のターゲットが出現するエリアである。音楽ゲームによっては階段等で表現される為に階段地帯と呼ばれている。それ以外にもトリルや1次発狂等も存在し、この曲が如何に難しいかを物語る。
「それを待っていた!」
オーディーンは、手に持っていたハンドガンの全弾を撃ち尽くしたのを確認して空に向けて放り投げ、アタッシュケースのビームライフルを右手に持って速射、左手にはショットガンという異質な組み合わせで無数のターゲットを撃破していく。ここまでくると、正確な射撃よりも撃破ミスでペナルティを受けるのを防ぐという意味合いの方が大きい。
【セントリーガンも健在、更にはAパート途中で射出したマイクロミサイル、ファンネル、有線型ビームキャノン…これはパーフェクトもあるのか?】
【あれだけの武器を扱うなんて、オーディーンに常識と言う物は通用しないのか?】
【武器のレンタルだけでも、あの量だと5000円ではきかないだろう…。購入しただけでも、カテゴリーによるが10万円を軽く超える】
【あの武器は見た目こそは実在武器にも匹敵するような物もあるが、全て殺傷能力が皆無って信じられるか?】
【実際、あれを携帯していても銃刀法違反等では捕まらないからな。違法改造等でなければの話だが…】
色々と雑談のような会話も流れているが、オーディーンのスーパープレイには圧倒されるばかりで、上手く解説する事が出来ないのである。
「これで、フィニッシュ!」
放り投げた物が戻って来たハンドガンを回収し、最後には背中に背負った高出力ブラスターキャノン、両腕に固定したバルカン砲で一斉射撃を行い、残ったターゲットを撃破した。
【もしも、これが戦争だったとしたら彼女に勝てる保証なんてあるのか?】
【そうだな。今見ている光景が音楽ゲームと言う事も未だに信じられないが…】
【あれだけの装備を扱うだけでも相当な体力がいるだろう】
【あの発言の裏に、これだけの実力を持っていたのか】
ネット上でも、オーディーンに対する認識を改める動きがあった。そして…。
「これで分かっただろう?」
【ODIN:9950000PTS】
オーディーンのスコアを見た観客は目を疑った。あれだけの発言をした後で、ハッタリだったとしたら…と。
「信じられない…」
「本当にフルコンボを達成したのか?」
「これが、オーディーンの実力…」
プレイ終了直後は沈黙していた観客だったが、そのスコアを見てオーディーンのプレイスキルの凄さを改めて知ると歓声が上がったのである。
【あの曲は1000万点が理論値ではないのか?】
【良く見て見ろ…】
【1グッドだと?】
【どうやら、ロケットランチャー辺りで誤差が生じていたようだ。これは解説動画が出回るのを待つしかないか】
【あの曲で理論値があっさりと出たら、不正と疑われても無理はない。それを考えると、あえて1グッドで寸止めした可能性もある】
【巷で問題になっている無気力試合か…。スターダストの場合は、そのプレイが即座無効という事だったか?】
【無気力かどうかは別として、予選であろうと全力を尽くすのが普通だとは思っているが…】
【これがチーム制に変わってくると、色々と違う見方が出来るのかもしれないな】
【これは、ゲームという領域をはるかに超えている。スタイリッシュミュージックスポーツだ】
基本的に難易度に関係なく1000万点が理論値となっている。そして、スターダストでは一定のスコア以下やプレイ内容によってはプレイ途中でも無気力と判定されて即座に演奏失敗になる。
【その昔、全てが完全管理されたスポーツを題材にしたゲームがあったな。実際、野球での敬遠騒動等を考えると、管理された方が幾分かマシに思えてくる】
【オーディーンが警告しているのは、音楽業界が超有名アイドルによって都合よく管理されている事が問題になっている事なのかもしれない】
【いずれ、地球も完全掌握されるのか…】
【どの世界でもアクシデント等は付き物だろう。ない方が逆に疑われておかしくはない…という世の中になっている気配もする】
中には、オーディーンのプレイを見て、スターダストをスポーツにすればメダル量産も夢ではないのか…と言う話等も飛び出していた。
【しかし、あれをスポーツにすると…逆に他の諸外国が兵器転用を考えるのかもしれない。それほどにスターダストは危ない橋を渡っているのと同じだ―】
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イベントも終了し、上位の30名が本戦へと進出する流れとなった。公式ホームページでも掲載されているのだが、そのメンバーを見て一同は衝撃を受けた。
【大半が初期プレイヤーばかりか。あのスコア合戦では、ライセンス曲メインのプレイヤーでは無理があったか?】
【グングニル、バルムンク、ナツキ、オーディーン…この辺りは順当に勝ち進んだようだな】
【新鋭プレイヤーはエイジ1名だけか。彼のスキルを見た後では、他の新規プレイヤーの実力は…】
上位30名の中には、有名プレイヤーや動画勢、オーディーンやナツキと言った作曲家も兼ねているプレイヤーが目立っていた。その中でもエイジの存在は極めて異例だった。
「これが、例の動画か…」
ナツキが視聴していたのは、エイジが予選突破のきっかけとなった例の動画である。
《破滅へのロンド【ANOTHER】:オーディーン》
【EIJI:9950000PTS】
「このスコアは理論値に最も近いとされているスコア…」
理論値である1000万点に到達可能な楽曲は、ほぼ全て…とされている。しかし、初期プレイヤーやランカーと呼ばれる上位プレイヤーが未到達の領域を初見で理論値を出すと、反応としては2つにわかれる。
【チートではないのか?】
【どんな武器を使えば理論値を出せるのか?】
超有名アイドル楽曲で何度か発生した不正スコア事件の影響を受けてチートと考える人物、もう一方は自分とは違う武器で理論値を出したと思いこみ、どんな武器を使ったのか…という2種類である。
「理論値はノーマル譜面やライセンス曲で出すのであれば、特に何も周囲が驚く事ではない。問題は、難易度アナザーやレベル15を超える譜面で理論値が量産されるケース…」
破滅へのロンドは、曲のジャンルとしてはエンドオブミュージック…直訳すると【音楽の終わり】という意味になる。実際、曲ジャンル表記はジャンルによっては実在ジャンルではなかったり、全くの創作ジャンル、この作品内でしか通じない物等…音楽ゲームのジャンルではよくある事である。
『ジャンル名を直訳すると、この曲が伝えたい意味が分かると思います。この曲が生まれる事になった事の意味、それを音楽業界が理解する事で特定ジャンルだけが永久に追放される流れが起こらない事を―(後略)』
当時、この曲を完成させた当時のオーディーンはラグランジュポイントを発表後だった。その為、この曲辺りで闇堕ちをしていたのだと分かる。
「闇堕ちをする前と後で楽曲の方向性も変わり、客層まで変化するとは…」
ナツキも当時、この現象に関しては疑問を抱いていた。
【オーディーンが闇堕ちした理由は何だったのか?】
【もしかすると、オーディーンは何かの問題提起を考えているのかもしれない】
【それだけ、オーディーンが音楽業界に不信感を抱いていたと言う事か…】
オーディーンに対する疑問はネットでも広がっている。本来のオーディーンに戻って欲しいと願うファンもいる中、超有名アイドルの殲滅が終わらなければ…と言うファンもいる。
「もしかして…?」
ナツキは、動画を再生しようとした直前に停止ボタンをクリックする。そこには、ライトセイバーとは別のビームライフルを持っていたのである。
「確か、彼の主力武器はライトセイバーのはず…。ネット上で複数武器を使用していたと言う話もあったけど、まさか―」
そのナツキの予想は、この後で的中する事になる。
まず最初に、エイジがマントを投げ捨てると、そこには見た事もないようなデザインをしたガントレットを左腕に装備、右腕にも左腕とは別デザインのガントレットを装備していた。
「そこだっ!」
エイジが10メートル程走りだし、とあるエリア内に入った直後、左腕のガントレットを展開、そこから現れたのは何とマイクロミサイルだったのである。その数は3箱、1箱辺り80発と言う小型ミサイルが搭載されており、そのミサイルがターゲットに向けて放たれる様子は、まさに戦闘機同士のドッグファイトでのミサイル発射シーンを思わせる。
【四角柱の1面に20発、4面で合計80発、それを3つで240発…どう考えても、あのサイズで実用化出来るレベルではない】
【それをスターダストで再現するのもおかしいレベルだが、それを扱うエイジも超人レベルか―】
過去、オーディーンや一部の上級プレイヤーもマイクロミサイルは使用経験がある。しかし、その重量や左腕で他の武器を扱う際に邪魔になる等の欠点があり、マニア御用達の武器になってしまっている。
「レールガン!」
エイジが叫ぶと、目の前から大型のコンテナが地面から現れ、そこからエイジはレールガンを取り出したのである。スターダストで扱われているレールガンは、アサルトライフル位の大きさで大きくても両手で扱えるレベルが一般的なのだが…。
【!!】
【サイズがおかしい】
【どう考えても、3メートル以上はある】
エイジがコンテナから取り出したのは、折りたたんだ状態で2メートルという大型レールガンだった。展開すると、5メートルに近くなる。
「落ちろ!」
大型レールガンは1発でエネルギーチャージに30秒かかるという、ペナルティが非常に大きい武装なのだが…その威力は想像を絶する物だった。
【50~60位集まっていたターゲットの集合体が、いとも簡単に…】
【あれは、エディット譜面等で100とか1000の集合体エリアがあっても瞬時で撃破出来るな…】
【あれを曲のリズムに合わせて撃つなんて、ほぼ不可能じゃないのか?】
【それを言うなら、スターダストの場合は全ての武器が適当に撃っているだけではスコア上昇は期待できない。曲のリズムに合わせて撃っているからこその、理論値スコアと言う事だ】
レールガンの斜線上にいた60程のターゲットが瞬時にして蒸発する。ターゲットに関しては、CGで出来ている為に蒸発と言う表現が適切かどうかは不明だが…。
「まさか、ターゲットの接近を許したか? ならば―」
レールガンでターゲットを蒸発させた後、数メートルまでターゲット数体の接近を許していた。そこでエイジは右腕をターゲットの目の前に突きだした。
【ちょっと待て!】
【ここまでくると、あいつ1人でいいんじゃないか…って思えてくる】
【何処かの地球防衛する人か!?】
動画に流れてくるコメントでも、衝撃を語るかのようなコメントが多い。それほどに、彼の装備が異常だった事を物語る。何と、彼が右腕に装備していたのは射突式ブレードだったのである。しかも、その本数は最大展開した状態で12本…。
【何と言うロマン武装…】
【ああいう武器もあったのか、スターダスト…】
【本戦が楽しみになって来た…!?】
それら全てが常人では使用できないオーバーテクノロジーだった事、それに加えてエイジの戦歴等を踏まえると…彼が他の予選突破者よりも突出している事が動画でも見てとれた。
「今度は、これを使うか…」
先程の射突式ブレードをパージし、別のコンテナを開いて装備したのは、ビームチェーンソーだった。しかも、シールドとしても使用可能な程に大型である。そして、それを軽々と振り回して周囲のターゲットを真っ二つにした。
【これでラストか…】
【色々と凄かったな】
【果たして、本戦はどんなロマン武装を持ってくるのか…】
「どういう事なの?」
動画を見終わり、彼が同じ複数武器を使用するオーディーンや固定武装メインのバルムンク、グングニル等とは別の意味で規格外だったのである。
「ヨーヨーやベーゴマ、遂にはビー玉を武器にしてしまう作品はあったけど、彼の場合はそれ以上の―」
実在兵器に似たようなデザインも存在するスターダストは、ヨーヨーやブーメラン、フリスビーと言った物までスターダスト化され、ベーゴマやビー玉、吹き矢まで存在する。しかも、それらは全て殺傷能力が皆無と言っていい程に軽減されている。あくまで軽減されているだけで、迂闊に違法改造等を施せば、殺傷能力は段違いに上がる。
【エイジの武装は、いわゆるロマン武装が多すぎる。スターダスト公式でも人知を超えたオーバーウエポンは存在するが、それを軽々と扱えるなんて…】
【彼が最初に使用していたライトセイバーも、元々は試作型だったらしい。もしかすると、オーバーウエポンが使える理由は…】
【色々な意味で、優勝候補が分からなくなってきた】
そして、本戦開催となる日曜を待つだけと思われていた…。