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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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婚約破棄された公爵令嬢はすべてを失ったふりをする~裏で糸を引いていたのは私ですので、今さら泣きつかれても遅いのですが?~

作者: 結城斎太郎
掲載日:2026/03/25

「エリザベート・フォン・クラウディア。貴様との婚約を、ここに破棄する!」

王城の大広間に、王太子アレクシスの声が高らかに響いた。

ざわめきが一斉に広がる中、私は静かに目を伏せる。

――ついに、この時が来たのね。

「理由は明白だ。貴様は聖女リリアナを執拗にいじめ、命すら危険に晒した!」

非難の視線が突き刺さる。

だが、私はただ穏やかに微笑んだ。

「……証拠は?」

一瞬、空気が凍りつく。

「な、なんだと……?」

「私がそのようなことをしたという証拠です。お持ちなのでしょう?」

アレクシスの隣で、リリアナが震える声で口を開く。

「わ、私……何度も階段から突き落とされそうになって……」

「それを見た者は?」

「そ、それは……」

「いないのですね」

私は一歩、前に出る。

「では、証言のみで断罪なさると?」

「き、貴様!聖女の言葉を疑うのか!」

「ええ、疑いますわ」

その言葉に、場が騒然とする。

だが、私は止まらない。

「そもそも、私は彼女とほとんど接点がありませんもの」

「嘘よ!」

リリアナが叫ぶ。

「あなたはいつも私を睨んで……!」

「それは貴女が私の婚約者に必要以上に近づくからでは?」

静寂。

次の瞬間、アレクシスが怒号を上げた。

「もうよい!これ以上の言い訳は聞き飽きた!」

――ええ、そうでしょうね。

私はゆっくりと頭を下げた。

「承知いたしました。婚約破棄、謹んでお受けいたします」

「……なに?」

「ただし――」

顔を上げ、まっすぐに彼を見据える。

「その決断、後悔なさらぬよう」

冷たい声だった。

その言葉に、アレクシスの顔がわずかに歪む。

「脅しか?」

「まさか。ただの忠告ですわ」

私はくるりと踵を返す。

もう、ここに未練などない。

――だって。

すべて、計画通りなのだから。

公爵家に戻った私は、執事のルーカスに声をかける。

「準備は?」

「すでに整っております、お嬢様」

彼は深く一礼した。

「王都の商会、貴族家、すべて“こちら側”です」

「ご苦労様」

私は窓の外を見た。

王城が遠くに見える。

「これで、ようやく始められるわね」

数日後。

王都は混乱に包まれていた。

「クラウディア家が取引停止だと!?」 「ありえない、あの家が止まれば……!」

そう。

我がクラウディア公爵家は、この国の経済の中枢を握っている。

その我が家が――

すべての商取引を止めた。

さらに。

「税収が激減!?どういうことだ!」 「地方領主たちが納税を拒否しています!」

当然だ。

彼らの多くは、我が家の支援を受けているのだから。

王城では、アレクシスが激昂していた。

「なぜだ!なぜこうなる!」

「殿下……クラウディア公爵家を敵に回した影響かと……」

「たかが一貴族が!」

「……その“たかが”が、この国の半分を支えております」

沈黙。

そして、彼はようやく気づく。

「まさか……あの女……」

その頃、私は隣国の使節と対面していた。

「お待ちしておりました、エリザベート様」

優雅に微笑む青年。

隣国の第二王子、レオン。

「あなたが提示した条件、すべて飲みましょう」

「ありがとうございます」

「ただし」

彼は私の手を取った。

「あなた自身も、こちらへ来ていただきたい」

「……亡命、ですか?」

「いいえ」

彼は笑う。

「“迎え入れる”のです。あなたを」

私は少しだけ考え――

頷いた。

「いいでしょう」

どうせ、この国にはもう用はない。

「では、契約成立ですね」

その瞬間。

私の復讐は、次の段階へと進んだ。

数週間後。

王国は、崩壊の危機に瀕していた。

物資は不足し、税収は落ち込み、貴族たちは離反。

すべては――

たった一人の令嬢を追い出した結果。

「エリザベート……戻ってきてくれ……!」

だが、その願いが届くことはない。

私はすでに――

敵となったのだから。




ーーーー




「エリザベートを呼び戻せ!今すぐだ!」

アレクシスの怒声が、王城に響き渡る。

だが、返ってきたのは冷たい報告だった。

「……すでに隣国へ渡ったとのことです」

「なに……?」

「しかも、同盟締結の交渉役として」

その瞬間、彼の顔から血の気が引いた。

一方その頃。

私は隣国の王宮で、正式に迎え入れられていた。

「本日より、エリザベート様は我が国の客人にして――」

レオンが言葉を区切る。

「最重要人物です」

ざわめきが広がる。

当然だろう。

敵国の元公爵令嬢が、ここまでの待遇を受けるなど。

「あなたの情報と影響力は、それほど価値がある」

彼は小声で言う。

「そして……あなた自身も」

「お世辞は結構ですわ」

「本心ですよ」

私は小さく笑った。

――悪くない。

やがて。

王国との戦争が始まった。

といっても、実際には戦うまでもなかった。

「補給線が壊滅!?」 「兵士たちが動けません!」

当然だ。

その補給網を構築していたのは――私なのだから。

「エリザベート……なぜだ……!」

絶望するアレクシス。

だが、私はただ告げる。

「なぜ、ですって?」

通信越しに、彼を見下ろす。

「あなたが私を捨てたからですわ」

そして、最後の舞台。

和平交渉の席。

だが、それは名ばかりのものだった。

「条件は三つです」

私は静かに言う。

「第一に、王太子アレクシスの廃嫡」

「なっ……!」

「第二に、聖女リリアナの偽証罪による処罰」

リリアナが青ざめる。

「そ、そんな……!」

「第三に」

私は微笑む。

「クラウディア家への全面謝罪と、特権の永久保証」

沈黙。

やがて、王が重く口を開いた。

「……受け入れよう」

すべてが終わった。

アレクシスは王太子の座を追われ、地方へ追放。

リリアナは偽証が暴かれ、すべてを失った。

そして私は。

「これで満足ですか?」

レオンが隣で問いかける。

「ええ」

私は静かに頷いた。

「すべて、取り戻しましたもの」

「それ以上も、でしょう?」

彼は私の手を取る。

「この国で、新しい人生を」

私は少しだけ考えて――

微笑んだ。

「……悪くありませんわね」

数年後。

私は隣国の王妃となっていた。

かつて“悪役令嬢”と呼ばれた女は、

今や国を支える存在となる。

そして、遠い地では。

「エリザベート……」

すべてを失った男が、名を呟いていた。

だが。

もう、その声が届くことはない。

「今さら後悔しても――遅いのですわ」

私はそう呟き、微笑んだ。

――これが、私の選んだ結末。

完璧な復讐と、福音が告げる新しい物語である。

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― 新着の感想 ―
節目、節目の◆が文章を読みやすくしていてスラスラと楽しめました。 国王、そんな大事な公爵家の令嬢を何故にボンクラ王子の婚約者にしてしまったのだ。これは王子よりも国王の責任が大きい。
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