第97話 素敵なお誘い
「流斗さん、知り合いだったんですか?」
首を傾げて尋ねると、流斗さんはいつもの優しい笑顔で頷いた。
「ええ、まあ。生徒会の子たちですね」
さっきまでの怒りのオーラはどこへやら。
あっけらかんとしたその表情に、少し拍子抜けする。
……そうだ、流斗さんって、生徒会長だった。
だから顔見知りだったんだ。
でも――あの怯えよう、やっぱり妙じゃなかった?
「ね、唯さん。あんなのがまた現れると嫌ですし。もうメイドさんはやめて、僕と学園祭を回りませんか?」
「え、でも……」
私は周りを見わたす。
店はすごく繁盛していて、私が抜けたら迷惑がかかりそう。
返事を渋っていると、流斗さんが尋ねてきた。
「ここのリーダーは誰ですか?」
「え? 蘭ですけど」
「なるほど」
なにか納得したように頷いて、きょろきょろと辺りを見まわす流斗さん。
「お、発見」
そう言って、蘭の方へと向かっていく。
何やら話し込んだあと、流斗さんは満足そうに笑って戻ってきた。
「了解が取れました。唯さんは私と行動を共にしていいそうですよ」
へっ? あっさり通っちゃったの?
思わず遠くにいる蘭を見つめると、彼女はにやっと笑って、ぐっと親指を立ててきた。
「OK、行ってきな」と心の声が聞こえた気がした。
……どうやって口説き落としたんだろう。
「さあ、リーダーのお許しも得たことですし、行きましょう。
あ、その格好は着替えてからにしてくださいね。
とても似合ってますけど……他の男の視線が気になるので」
流斗さんが困ったように笑いかけてくる。
「あ、はい」
私は着替えるため、更衣室へと向かった。
やっとこの格好から解放されると思うと、ほっとする。
ふと鏡を見ると、メイド服姿の自分。
まあ、似合ってなくはないけど。
この格好はやたら緊張感があるし、肩もこってくる。
それに、何より着ていると恥ずかしい。
こんなに早く解放されるのは、正直嬉しい。
学園祭も回ってみたかったし、ラッキー。
……これも、流斗さんのおかげだな。
頬がふわりと緩んだ。
――私は、流斗さんとふたりで学園祭を回ることになった。




