第82話 迫る親友にたじたじ
そして――次の競技が始まるまでの間、私は蘭の質問攻撃にあっていた。
人混みから離れた、体育館脇の階段にふたり並んで腰を下ろす。
座るや否や、蘭はマシンガンのように喋り出した。
けれどその口調はどこか上品で、時折見せる仕草も妙に愛らしい。
唯といるときには見せたことのない、乙女そのもの。
頬をほんのり染め、両手を膝の上にそっと揃え、ちらちらと私の顔を見上げてくる。
なんとも、複雑な気持ちだ。
こんなふうに蘭に見つめられる日が来るなんて、思いもしなかった。
蘭が優に想いを寄せていることは知っている。
でも、私はその気持ちに応えることはできない。
だったら、せめて誠意を込めて向き合おう。
だって、今の私にできることは、それだけだから。
「ねえ、優くんの好きなタイプって、どんな人?」
ぱちぱちと瞬きを繰り返しながら、蘭が恥ずかしそうに問いかけてくる。
頬をほんのり染め、上目遣いでこちらを見つめるその仕草には、どこか艶っぽさすら感じられた。
……なんというか、あざとい。けど、自然だからこそ厄介だ。
こんなふうに見つめられて、やられない男なんているんだろうか。
先ほどから、周囲の視線がやけに痛かった。
男子生徒たちの視線が、じりじりと突き刺さってくる。
きっと蘭に想いを寄せている連中だろう。
私が蘭と親しく話しているのが気に入らないのだ。
そんな睨まれても、どうすることもできないんだけどね……。
「うーん。優しくて、料理上手な子?」
私は適当に答えてみた。
最後の条件は、自分の好みも入っている。
「へえ、そうなんだ。じゃあ……綺麗系と可愛系、どっちが好み?」
質問の意図を察した私は、そっと蘭の顔をうかがった。
期待のこもった眼差しが突き刺さる。
彼女は、どう見ても綺麗系だ。
ここは、「綺麗系」と言うべきなのかもしれない。
でも、変に期待を持たせてしまうのも……。
だって、どうせ気持ちには応えられないし。
ああ、困った、どうしよう。
どう答えればいいのか分からず、ぎこちない笑みでごまかした。




