表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます  作者: 桜 こころ
運命の体育祭

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/152

第81話 嘘つきな私と、まっすぐな君

「え!? 優くん?」


 私の姿を見た瞬間、蘭の目がぱっと見開かれる。

 そのまま勢いよく近づいてきて、上から下までまじまじと見つめられた。


「え、どうして? 今日お休みだったんじゃ……」


「あー、優くんは先ほど来られたんですよ」


 流斗さんが、あくまで自然な調子で言った。


「朝は体調がすぐれなかったらしいんですが、お昼頃には回復して、体育祭をちょっとだけ見に来たみたいです」


 しれっと嘘をつく流斗さん、さすがだ……。


「はぁ、そうなんだ……。でもよかった。

 なら、一緒に体育祭楽しみましょう!」


 嬉しそうに笑う蘭の顔がまぶしくて、胸がちくりと痛む。

 嘘をついてばかりの自分が、彼女の想いを踏みにじっているような気がして。


 その喜びに応えるように、私は無理やり笑顔を作って頷いた。


「うん……羽鳥さん、ありがとう。よろしくね」


 そう言うと、蘭はふわっと頬を染める。


「そんな。あ、ところで唯は?」


 キョロキョロと辺りを見渡しながら、蘭が尋ねる。


「流斗さん、唯のこと見に行ってくれたんですよね? 大丈夫なんですか?」


 ぐいっと流斗さんに詰め寄る蘭の顔は真剣そのものだった。

 その必死さに胸が熱くなる。こんなにも心配してくれているなんて……。


「ええ、大丈夫ですよ。あの悪女からは無事救出できましたし……」


 え、悪女?


 思わず、流斗さんを見つめる。

 それってまさか、加奈さんのこと?


「ただ、唯さん……少し体調を崩されてしまって。大事を取って帰宅されたんです」


「ええ!? 唯、大丈夫なの? あの女に何かされたんじゃ!」


 蘭が流斗さんにしがみつき、体を思いきり揺さぶる。

 流斗さんはよろけながらも苦笑を浮かべ、やんわり蘭の肩を押し返した。


「だ、大丈夫ですから。安心してください。唯さん、羽鳥さんに感謝しておられましたよ」


「そっか……」


 蘭はほっとしたように笑ったけれど、その目にはまだ心配の色が残っている。


 しばらく何かを考えていた彼女が、ふと私の方を見た。


「ねえ、優くん」


「な、なに?」


 蘭がじわじわと距離を詰めてくる。


「いろいろお話したいな。

 唯と一緒にいたんだけど、彼女も帰っちゃったみたいだし……私、一人で寂しくて。

 だから、一緒に体育祭、見学しましょ?」


 そう言って、少し照れたように笑うその顔が、たまらなく可愛い。


「え……うん、いいよ」


 自然に頷いていた。

 いつも迷惑ばかりかけている蘭に、少しでも楽しい時間を過ごしてもらえたら――そんな気持ちだった。


 流斗さんへ視線を向ける。

 彼は軽く肩をすくめ、あきれたような笑みを浮かべてから静かに頷く。


「そうですね、僕はこれからまた競技に出なければなりません。

 優くんのことよろしくお願いしますね、羽鳥さん。あまり優くんを困らせないように」


 最後の言葉に、微妙な棘を感じる。

 蘭も同じように思ったのか、少し眉をひそめて流斗さんを見つめた。


 でも、たぶんあれは――流斗さんなりの気遣いだ。


 そうだ、気を引き締めないと。

 ずっと彼が傍で守ってくれるわけじゃない。


 蘭の前で余計なボロを出さないようにしなくちゃ、と気合を入れる。


「もう、変な流斗さん。私が優くんを困らせるとでも思ってるの?」


 蘭は怒ったように頬を膨らませたが、すぐに明るく笑った。


「さ、咲夜さんと流斗さんのこと応援しなくちゃね!

 あ、あっちのほうが見やすいわ。行きましょう、優くん!」


 そう言うと、私の手を引いて駆け出した。


 そっと横顔を覗くと、瞳がきらきらと輝いている。

 こんなにはしゃぐ彼女は久方ぶりだ。


 頬を染めて、楽しそうに笑うその顔は、まさに乙女の表情。


 彼女が喜んでくれるのは、うれしい。

 けれど……この状況を、私はうまく切り抜けられるだろうか。


 不安を押し隠しながら振り返ると、流斗さんは優しい目を向けながら手を振っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ