表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます  作者: 桜 こころ
運命の体育祭

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/152

第74話 お兄ちゃん、ちょっとずるい

 私たちは、勢いそのままにゴールテープを駆け抜けた。


「はあ……はあっ……やった! やったな、唯!」


 兄は膝に手をつき、肩を大きく上下させながら息を整える。

 そして顔を上げたその表情は、なんとも嬉しそうで。


 一瞬、見入ってしまい、私は照れ隠しのように小さく頷き返した。


 ふと目を向けると、流斗さんがひとりでゴールテープをくぐる姿が見えた。

 誰の手も引かず、ただ静かに走り終え、その場に立ち尽くしている。


 その姿が、やけに寂しそうで、胸がぎゅっと締めつけられる。


 やがて彼は無言のままこちらへ歩み寄ってきた。

 兄を睨みつけるような表情のまま、私の目の前に立ち止まると、黙って一枚の紙を差し出してくる。


 そこには、こう書かれていた。


『一番大切なもの』


「え……」


 その瞬間、ようやく私は気づいた。


 この借り物競争の“借り物”って、そういう意味だったの?


「……僕を選んでほしかったな」


 ぽつりと呟くと、流斗さんは寂しげに背を向け、静かに歩き出す。


「あっ」


 何か言わなきゃ。そう思うのに、声にならない。

 だって、今さら何て言えばいいの?


 その背中を、ただ黙って見送ることしかできなかった。


 そして、ゆっくりと兄の方へ視線を向ける。


 “借り物”が「一番大切なもの」で、兄が私を連れて行ったということは――。

 そういうことなの?


「ちっ……そんな顔で見つめんなって。照れるだろ」


 視線に耐えられないのか、兄はぶっきらぼうにそっぽを向いた。


「ま、俺を選んだことは褒めてやるよ」


 その頬は、ほんのりと赤く染まっている。


 本当に……私のこと大切に思ってくれてるの?

 信じていいのかな。ちょっとだけ、己惚れてもいいのかな。


 嬉しさと驚きが入り混じって、言葉にならない。


 兄から目を離すことができなかった。




 でも――それっきり、兄とはろくに話せず。


 もやもやした気持ちを引きずったまま、次の種目が始まってしまった。


 さっきのことをちゃんと聞きたかったのに、なんだか気まずくて、結局何も言えない。


 だって、急にあんな態度取られても、こっちは気持ちが追いつかない。

 今までずっと避けてたのは、どういう意味だったの?


 嬉しかった。すごく嬉しかったけど……。


 ふと、流斗さんの顔が思い浮かぶ。


 申し訳ないことをしてしまった。


 彼は私のこと、大切だって思ってくれていたのに。

 私は、流斗さんを選ばなかった。


 ああ、なんて酷いことを……。最低だ。


 一人で落ち込んでいると、突然、元気な声が飛んできた。


「あっ、こんなとこで何してるの? 次、流斗さんの出番だよ!

 今度は綱引き。しかも、また咲夜さんと勝負らしいよ!」


「ええっ!?」


 蘭の言葉に、私は目を丸くした。


 ちょっと待って、なんでまた!?

 次から次へと――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ