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義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます  作者: 桜 こころ
運命の体育祭

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第73話 借り物は……まさか私⁉

「な、なんで……?」


 スタートラインに並ぶ二人を見た瞬間、私は呆然と立ち尽くした。


 なんで、よりにもよって――

 お兄ちゃんと流斗さんが、並んでるのよ!?


 どっちを応援すればいいか、わからないじゃない!


 一人で苦悩していると、隣で蘭がぽつりとつぶやいた。


「あちゃー、これは波乱の予感しかしないわね」


 ほんと……あの二人か。

 いったいどっちが勝つんだろう。気になる。


 私たちの不安をよそに、周囲は異様なほど盛り上がっていた。


 それもそのはず。

 お兄ちゃんも流斗さんも、女生徒たちからかなり人気がある。

 いや、男子からもあるか。


 とにもかくにも、

 黄色い歓声があちこちから飛んでいて、まるでアイドルみたい。


「よーい……」


 ライン際に立った生徒が、スタートガンを構える。


 ――パンッ!


 乾いた音が鳴り響いた瞬間、二人はものすごい勢いで飛び出した。

 他の選手たちを引き離して、あっという間に先頭に躍り出る。


 さすが……格好いい。

 なんて見惚れているうちに、二人は借り物カードの台に到着した。


 同時に紙を引き、すぐに目を通すと、あたりに視線を走らせる。


 どうやら何かを探しているらしい。

 そりゃそうか、借り物競争だもんね……って、あれ?


 流斗さんの視線が、ピタリと私で止まった。


 そのまま、一直線に駆けてくる。

 風を切って迫るその姿に、目を見開いた。


 え、何だろう。こっちに何かあるのかな?


 慌てて周囲を見回すけれど、“借り物”らしきものは見当たらない。


 まさか……ま、まさかね。


 浮かんだ妙な考えを振り払うように首を振った、次の瞬間だった。

 勢いよく駆けてきた流斗さんが視界いっぱいに迫る。


 その手が、私の手をぎゅっとつかんだ。

 息を切らせながら、真っすぐに私を見つめてくる。 


「唯さん、僕と来てください」


「ま、待て!」


 すぐ後ろから兄の声が響いたかと思うと、視界の端にその姿が飛び込んできた。

 息を荒くし、鋭い眼差しで私と流斗さんを交互に見据えている。


「唯、俺と来い」


 真剣な眼差しが突き刺さる。


 えっ、えっ!? なにこれ!

 お兄ちゃんまで、どうして……。


 今って借り物競争の真っ最中だよね?


 驚きに足がすくみ、その場で固まる。

 そんな私をよそに、事態はどんどん進んでいく。


「ダメです、僕が先でした!」


 険しい表情の流斗さんが、兄に向かって声を張った。

 兄もしきりに眉間に皺を寄せ、低くぼそっと言う。


「ちっ……。だったら本人が選べばいいだろ」


 二人は火花を散らす勢いで睨み合った。


 ちょっと待って……どういう状況?

 まって、借り物ってわたし!?


 困惑する私に、流斗さんが勢いよく振り向く。


「唯さん! 僕と咲夜、どちらと行きますか?」


「は、はいっ!?」


 張り詰めた空気に迫られ、声が上ずる。


 どうしてそうなるの!? 私、何もわかってないんですけど!


 そして極めつけに――


「唯、好きな方を選べ!」


 お兄ちゃんのその一言に、思わず叫んだ。


「えっ……じゃ、じゃあ……お兄ちゃん!」


 ああ、しまったっ。

 つい、本音が。


 頭の中が真っ白になっていく。


「よしっ!」


 満面の笑みでガッツポーズを決める兄に、あぜんとする。


 でも、なんだか懐かしい。

 こんなに嬉しそうに笑うお兄ちゃん、久しぶりに見た気がする。


 やっぱり……笑った顔、いいな。


 見惚れていると――


「行くぞ!」


 兄が流斗さんの手を振り払い、私の手をつかんだ。


「えっ、ちょ、ちょっと! どういうこと?」


「いいから、早く!」


 笑みを浮かべた兄に引っ張られ、訳もわからないまま必死で走った。


 ……なにこれ、意味わかんない。

 私、借り物になんて、なった覚えないんだけど!?


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