第66話 「大丈夫」って言ってくれたから
私がじっと見つめると、蘭はふっと笑った。
「唯はさ、自分の気持ちに正直でいてほしいな。
結果がどうなっても、大丈夫。みんな、きっと受け止めてくれるよ。
だって、咲夜さんと流斗さんでしょ?
どっちを選んでも、唯のこと幸せにしてくれると思う」
深呼吸ひとつ。
そして、まっすぐに見つめてくる。
「それと……咲夜さんのことだけど」
一瞬、言葉を選ぶように間を置いて――力強く続けた。
「兄妹だからって理由だけで、諦めないでほしい。
義理の兄妹なんだから、法律で禁じられてるわけでもないし。世間の目なんて気にしなくていい。
あとは唯が、勇気を出すだけ。
本気で咲夜さんのことが好きなら、頑張って想いを伝えなくちゃ。
私の大好きな唯なら、きっとできる!」
そう言って、蘭が私の手をぎゅっと握る。
「大丈夫。もし失恋して泣きたくなったら、私が全部受け止めてあげる。
私はずっと唯のそばにいるから」
その優しさが胸いっぱいに染み込んでくる。
「蘭~~っ!」
堪えきれず、蘭の胸に飛び込んだ。
そして――泣いた。
こんなにも心強くて、優しくて、あったかい親友がいてくれる私は……本当に幸せだ。
泣き続ける私の頭を、蘭は優しく撫でてくれる。
「蘭、大好き」
「私も、大好きだよ」
お互いにぎゅっと抱きしめ合う。
「でもさ、でもぉ……私、流斗さんのことも本当に大切で、好きなんだよぉ!
自分の気持ちがもう、よくわからないのぉ~!」
蘭の胸の中で、しゃくりあげながら感情をぶつける。
「うん、うん。わかってるよ。
二人とも最高の男だもんね。だからこそ、悩んじゃうよね……。
でもこれは、唯が自分の気持ちと向き合って、答えを見つけるしかないんだよ」
母親みたいに優しい目で見つめる蘭。
私は胸元からそっと顔を上げ、小さく頷いた。
「……うん。わかってる。ありがとう」
その言葉を耳にした途端、蘭が勢いづいた。
「よしっ! こうなったら今夜はとことん語り合おう。
ジュースもう一杯持ってくるから、待ってて」
そう言ってお盆を手に、部屋から出ていく。
私は涙を拭いながら、
一人きりになった部屋で、蘭への感謝をそっと噛みしめた。
そして心の奥で――あの二人のことを、静かに想い続けていた。




