表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます  作者: 桜 こころ
からまわる想い、すれちがう心

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/152

第59話 恋人なのに、心は揺れ

 さっき優に変身してしまった私は、店内のトイレでこっそり着替えを済ませた。


 いつも持ち歩いている大きめのバッグには、優用の制服が忍ばせてある。

 父と兄のアイデアだけれど、こうして困ったときには本当に助かる。

 ……二人には、ほんと感謝だよ。


 着替え終えて外に出ると、流斗さんがいつもの笑顔で待っていてくれた。

 その姿にほっとしつつ、私は彼と並んで帰路につく。



 夕焼けに染まる帰り道。

 人通りもまばらな住宅街を、二人の影が長く伸びていく。


 しんと静まり返った道に、私たちの足音だけが響く。

 気づけば、家まではもう数分というところまで来ていた。


 だけど――流斗さんは、さっきからほとんど言葉を発していない。

 それは私の告白のせい? それとも、優に変身してしまったから?

 ……よくわからない。


 不安を押し隠すように、私はこっそりと横目で彼の様子をうかがった。

 するとすぐに、その視線がこちらをとらえ、目が合ってしまう。


 胸が跳ねる。


「どうしました?」


 柔らかな笑みを浮かべながら、流斗さんが問いかけてくる。

 その笑顔は、いつもと同じはずなのに、どこか特別に見えた。


「あ……えっと、なんだか静かだなって思って」


 そう言うと、彼は照れたようにふっと視線を逸らした。


「そりゃあ、一応、好きな子と二人きりですからね。

 僕だって緊張くらいしますよ」


 思いがけない言葉に、目を丸くする。


「え? だって、今までだって二人きりなんて、いくらでもあったじゃないですか」


 そう、この状況は初めてじゃない。なんで今更……?


 夕日が差しているせいか、それとも本当に照れているのか。

 流斗さんの頬が、ほんのりと赤く見えた。


「だって、想いを伝えて……一応、受け入れてもらえたわけで。

 つまり正式にお付き合いしてるってことじゃないですか。

 そういう状況は、初めてですから。

 大好きな子と一緒にいて、緊張しない男なんていませんよ」


 流斗さんは、愛おしそうに目を細め、見つめてくる。

 その目はまるで、大切なものを見るように優しくて――。


 わ、私まで緊張してきた。


 ――そっか、正式なカップルになったんだ。

 そう思った瞬間、胸が騒ぎ出す。


 高鳴る胸を手で押さえ、気持ちを落ち着けようとする。


「それに……少し反省しているんです。さっき、唯さんを変身させてしまったこと。

 もっと注意を払わないといけないなって。本当に、ごめんなさい」


 流斗さんが真剣な表情で、頭を下げた。


「そ、そんな! 謝らないでください。

 あれは、私が勝手にドキドキしちゃったからで――」


 言いかけて、自分の言葉に赤面する。


 な、何言ってるの私!?

 これじゃまるで、流斗さんのことを意識しまくってるって言ってるみたいじゃん。

 いや、実際そうなんだけど!


「……嬉しい。僕のこと、意識してくれてるんですね。

 本当に唯さんは可愛いな。あ、今は優くんって呼ばなきゃいけませんね」


 いたずらっぽく笑うその顔に、私もつられて微笑んでしまう。


 この人と一緒にいると、不思議と安心できる。

 すべてを包み込んでくれるような、あたたかさがあるから。


 この人となら、きっと幸せになれる――そう思うのに。

 心の奥では、兄の存在がちらつく。


 今もそう。流斗さんといて幸せなはずなのに、気づけば兄の姿が脳裏に浮かんでしまう。


 どうしたらいいんだろう。


 そんなことを思ってしまう自分が、情けなくなる。

 流斗さんに申し訳ないよ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ