第57話 ハンバーガーと、覚悟の返事
やってきたのは、某有名ファストフード店。
店内のざわめきを背に、注文を終えた私たちは窓際の二人席に腰を下ろす。
トレイの上にはハンバーガーとポテト、ジュースが並んでいた。
おいしそう。空腹に誘われ、頬がゆるむ。
「いただきます!」
勢いのまま、大きな口でハンバーガーにかぶりついた。
すると、目の前の流斗さんが一瞬きょとんとして、それからふっと笑う。
「ほえ?」
口いっぱいにハンバーガーを頬張りながら、小さく首を傾げる。
「ははっ、唯さんってほんと、可愛いなあ」
くすくすと笑う声にくすぐったくなり、頬がほんのり熱を帯びる。
あわててハンバーガーを飲み下し、ジュースで口を潤してから拗ねたように抗議した。
「る、流斗さん、人が美味しく食べてる姿を見て笑うなんてひどいじゃないですか!
私だって、一応乙女なんですよ?」
言ってから反省する。あの食べっぷりは乙女としてどうなのか。
何も考えてなかった――恥ずかしい。
「いえいえ、好きに食べてください。僕が悪かったです、笑ってしまってごめんなさい。
でも、悪い意味じゃなくて、いい意味での笑いですから」
流斗さんは微笑みながら、じっと私を見つめる。
「そ、そうですか……」
私は口元を拭いながら、視線を伏せた。
もっと女の子らしい子の方がいいんじゃない? なんで流斗さんは、私なんか――
そっと視線を上げると目が合った。
優しい笑みが返ってきて、胸が高鳴る。
やっぱり、流斗さんって格好いい……。
綺麗な顔してるし、スタイルもいいし、見惚れちゃう。
告白されてからというもの、ますます意識してしまうようになった。
意識すればするほど、さらに素敵に見えてしまって、ほんと困る。
「よかった」
「へ?」
不意につぶやかれたその言葉に、私は目を瞬かせる。
流斗さんは、ほっとしたように口元をゆるめた。
「今日はなんだか元気がなかったから、少し心配で。
でも、よく食べてくれるから安心しました」
そう言って、また優しく微笑んだ。
その瞳は、まっすぐに私を見ている。
「流斗さん……」
胸の奥がじんわり温まる。
こんなに想ってくれているなんて。
私には、流斗さんは勿体ないくらいの人だ。
これ以上待たせるわけにはいかない――そう思った私は、背筋を伸ばした。
「流斗さん!」
「は、はい」
突然の大声に、彼も驚きつつ姿勢を正す。
「あの……返事を、したいと思います」
一瞬、流斗さんが動きを止める。
けれどすぐに状況を理解したのか、真剣な表情で私を見つめた。
「はい。聞かせてください」
緊張からか、心臓が激しく音を奏でる。
流斗さんの喉がごくりと動くのが見えた。
彼でも緊張するんだ……あたりまえか。それだけ本気ってことだよね。
「――正直に言います。流斗さんのこと、まだ、本当に好きなのかよくわからなくて」
告白されたときから、ずっと考えてきた。
けれど、はっきりした答えはまだ出せないままだった。
「もちろん、好きなんです。でもそれは友達としてとか、兄の親友としての好きで……」
流斗さんは静かに頷いた。
「前に流斗さんは、私の兄への気持ちを知っているって言いましたよね?」
無言のまま、彼の視線が私を捉えて離さない。
「その気持ちを知っていても、ずっと私を想ってくれていたことが、すごく嬉しかったです。
私も流斗さんを好きになれたら、どんなに幸せだろうって思いました」
一度、深呼吸する。
二人の間に、張り詰めた緊張が続く。
「わがままだって思われるかもしれませんが……それでも、流斗さんがいいって言ってくれるなら……」
彼の真剣な眼差しが、胸をきゅっと締めつけた。




