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義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます  作者: 桜 こころ
初デート、ダブルデート⁉

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第51話 心の波紋、三人の距離

 あれから、加奈さんは元気いっぱいだった。

 まるで遊園地を全力で満喫している子どものように。


 私たちは、そんな彼女についていくだけで精一杯。


 ついに兄と流斗さんは途中でギブアップしてしまい、最後まで加奈さんに付き合ったのは、私ひとりだった。


 これ……誰のためのデートなんだろう。


 ここへやってきた本来の目的がよくわからなくなってきた。

 私も唯から優になってるしね。


「もうそろそろ、帰りましょうか」


 加奈さんがそう言ったとき、どれほどホッとしたか。

 ……って、こんなこと言ったら失礼かな。


 でも、兄も流斗さんも、どこかほっとした表情をしている。


 うん、さすがに私も疲れた。



 地元の駅に着いた私たちは、それぞれの帰路へと向かう。


 加奈さんは私たちとは逆方向。ここでお別れになる。


 名残惜しそうに兄を見つめる加奈さん。

 送ってくれないの? と視線が訴えていた。


 けれど兄は気づいているのかいないのか、あらぬ方向に視線を逸らしている。


「咲夜くん、みなさん、さようなら。今日は楽しかったです」


 兄の態度に不服そうだった加奈さんも、どう訴えても無駄だと悟ったのか、あっさりと手を振って笑顔で帰っていった。



「はあー、疲れた」


 加奈さんの姿が見えなくなった途端、兄が大きなため息をつく。


「ちょっと、失礼だよ。彼女なんだからもっと楽しそうにしなよ」


 呆れて眉をひそめると、兄は嫌そうな顔を向けた。


「んー……。そうだな、おまえは楽しかったみたいだしな」


 どこか不機嫌そうに、私と流斗さんを睨みつける。


「なによ、その態度」


「おい、さっきから女言葉になってるぞ。気をつけろよ」


 ぶっきらぼうに忠告してくる兄に、私はムッとする。


 いったい、なんなのさっきから。


「……帰りましょう」


 流斗さんが優しく微笑みかける。

 私と兄の空気を察してのことだろうか。


 その笑顔に、ほんのり気持ちが和らいぐのを感じた。

 それでも、まだ苛立ちは少し残っていたけれど。



 そのまま三人で、ゆっくりと歩き出す。

 誰も何も言わない。


 気まずい沈黙が漂う中、兄はふてくされたように前を見つめ、流斗さんも静かに歩を進める。


 私はふたりの背中を追いながら、どう声をかけていいかわからずにいた。


 しばらくの間、三人の間に沈黙が流れていく。

 道は夕暮れ色に包まれ、あたり一面がやわらかな赤に染まっていた。

 三人の影が長く伸びて並んでいる。


 私は兄をじっと見つめながら、物思いにふける。

 やっぱり、兄の態度はどこか変だ。

 いったい何が気に食わないのか。


 悶々としていると、ふと流斗さんが足を止める。


「じゃあ、僕はここで」


 気づけば分かれ道に差し掛かっていた。

 私の家はこの先だけど、流斗さんはここから別方向だ。


「流斗さん、今日はありがとうございました。とても楽しかったです。

 ……それに、助かりました。優に変身したとき、色々と」


 お礼を伝えながら観覧車でのことを思い出す。

 急に恥ずかしくなってしまい、思わず視線を伏せた。


「いえ……。あの、今日言ったこと、真剣に考えてもらえますか?

 返事はいつでもいいので。僕はいつまでも待ちます」


 真剣な眼差しがまっすぐに向けられる。


「あ……はい。わかりました」


 心臓がドキドキと脈打つ。

 もう変身してるからこれ以上変身はしないけど――

 本当に今日は流斗さんにドキドキさせられっぱなしだ。


「おい! もう行くぞ」


「あ、う、うん」


 急かされた私は、流斗さんに軽く頭を下げて兄のもとへ駆け寄った。


「じゃあな、また」


 ぶっきらぼうに告げる兄に、流斗さんは優しい笑みを返す。


「ああ……またな」


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