第50話 即興芝居でピンチを乗り越えろ!
加奈さんと優は、たぶん面識がない。私が知る限りは。
でも、もしかすると学校で見かけたことがあるのかもしれない。
いや、それとも――唯に似ているせいで、既視感を覚えているとか?
「えーと……」
困っている私を庇うように、流斗さんが助け舟を出す。
「それはそうでしょう。彼はうちの学校の生徒ですから」
さらに兄も話に加わってきた。
「そうだよ、こいつ最近転校してきたんだ。
学校で見かけたのかもしれないぜ。ついでにこいつ、俺の従弟な」
兄は私を差して、わざとらしい笑顔を浮かべている。
「まあ、そうだったの? 知らなかったわ」
驚いた表情を見せながら、加奈さんが私にゆっくりと近づいてくる。
そして、じっと私の顔を見つめてからニコリと微笑んだ。
「本当に、どことなく咲夜くんや唯さんに似ているわ。
あら? そういえば唯さんは?」
核心を突かれ、私たちは一斉に反応する。
三人の視線が交錯する中、答えを探す沈黙が流れた。
「あ、あの、唯さんは急に体調を崩されて、急いで帰られました。
私も付き添おうとしたのですが、迷惑をかけたくないと固く断られまして……。
僕もひとりで帰すのは心配だったんですが」
流斗さんがぎこちなく説明する。
どこかこじつけたような言い訳に、たどたどしさがにじんでいた。
「ふーん。で、この従弟さんは、なぜここに?」
当然の疑問だ。
私は必死で言い訳を考える。
「俺が呼んだんだ! みんなで遊んだ方が楽しいし。
俺と唯がいるのに、こいつ呼ばないのも可哀そうだろ? な?」
兄がそう言って笑う。
絶対に今思いついた、その場しのぎの言い訳だ。
果たして、加奈さんは納得してくれるだろうか。
私たちは息を呑んで、加奈さんの反応を待つ。
「――そうですか! まあ、唯さんも帰られたことだし、ちょうどよかった。
ここからはこの四人で楽しみましょう。ええと、あなた、お名前は?」
あっさりと兄の言い訳を信じた加奈さん。
なんだか嬉しそうなのは、なぜ?
……もしかして、唯がいなくなったことを喜んでるのかな。
そうだとしたら、ちょっと悲しい。
「あ、僕は南優って言います。
咲夜と唯の従弟です。よろしくお願いします」
私が微笑むと、加奈さんもにこやかに笑って手を差し出す。
その手を握ると、彼女はどこか満足げに頷き、ぱっと明るい笑顔になった。
「じゃあ、行きましょうか」
加奈さんはそう言うと、軽やかな足取りで先頭を歩き出した。
その後ろで、兄と流斗さんが何やらこそこそと話している。
きっと流斗さんが、ことの成り行きを説明してくれているのだろう。
とりあえず、なんとか切り抜けられたことにほっと胸をなで下ろす。
けれど――加奈さんの反応が少し気になる。
やっぱり、私って嫌われてるのかな……。
小さくため息をつき、肩が自然と落ちる。
みんなの背中を追うように、どこか晴れない気持ちのまま歩き出した。




