第41話 波乱のダブルデート
「おう! おまえらも来てたのか」
聞き覚えのある声。
驚いて振り返ると、すぐそこに兄と加奈さんが立っていた。
「お、お兄ちゃん!? ……と、加奈さん?」
ニコニコと微笑む兄。その隣には、兄に腕を絡ませた加奈さん。
私は目を丸くしてふたりを見つめる。
ど、どうしてここに?
「確か唯と流斗もデートだよな。俺もなんだ、加奈とデート」
へへっと呑気に笑う兄の隣で、加奈さんはじっと私を見つめたまま軽く会釈した。
その視線にわずかな棘を感じるような……。
「お兄ちゃんもここでデートだったの?」
全然知らなかった。お兄ちゃんも今日デートだったなんて。
「おう。でも偶然だよなあ、デートの場所が被るなんてさ」
兄はどこか薄ら笑いを浮かべながら視線を外す。
「ほんと偶然だね。じゃあ僕たち、行くから」
流斗さんが私の手を取り、颯爽とゲートへ向かおうとする。
「なあ!」
兄の大声で、私たちは足を止めた。
視線が兄に集中する。
「あ、えっと……。ここで会ったのも何かの縁だし、一緒に行かねえ?」
「は?」
私は呆れ顔で兄を見つめる。
流斗さんは穏やかに微笑み、加奈さんは驚きの表情で兄を凝視していた。
そりゃそうだよ。せっかくのデート、ふたりきりがいいに決まってる。
「お兄ちゃん、何言ってるの?」
少し怒った口調で問いかけると、兄は笑顔を崩さずに答えた。
「いいじゃんか、大勢の方が楽しいし! そうだ、ダブルデートってことにしよう」
兄は一人で盛り上がっている。
「咲夜くん、私ふたりきりがいいな」
加奈さんがぽつりと本音を漏らす。
それでも兄は動じず、明るい声で言った。
「別にいいだろ? 二人でなんて、いつでもできるんだから。
決まり! 今日は四人で楽しもう!」
妙にテンションの高い兄はさっさとゲートへ向かってしまう。
それを追う加奈さん。
その後ろ姿を、私と流斗さんは唖然としながら見つめていた。
「……こうなったら、付き合いましょうか」
流斗さんがため息交じりに言う。その顔は笑っている。
なんて大人なの、と改めて彼の懐の大きさに感心する。
それに比べて、お兄ちゃんは子どもみたい。昔から何も変わってないんだから。
……でも、そこが可愛いんだけどね、なんて思っていると――。
ふと、視線を感じた。
前を向くと、兄に寄り添う加奈さんがこちらを振り返っていた。
一瞬、睨まれているのかと思うほどの視線。
だけど、目が合うとすぐに笑顔に変わったので、ほっと胸をなでおろした。
加奈さんにはあとで謝らないと。
すっごく邪魔してるよね。ほんと申し訳ない。
なぜか妹の私が気を遣わないといけないのが、ちょっと切ないけれど。
「さ、行こう」
流斗さんが私の手を引き、眩しい笑顔を向けてくれる。
「はい!」
兄たちを追うため、私たちも急ぎ足でゲートへ向かった。




