第33話 みんな、まっすぐすぎ
思わず顔が熱くなる。
けれど隣で、流斗さんはおかしそうに肩を揺らし笑っていた。
「わかってるって。唯さんのこと、大切にするから。
僕も本当の彼氏に昇格したいし、唯さんの嫌がることは絶対にしないよ」
その言葉に、驚いて目を丸くする。
え? 今すごい発言が……。
呆然としていると、兄が私の手を強引に掴んだ。
「ほら、行くぞ」
そのまま、当然のように引っ張っていく。
いま交際を発表したばかりなのに、彼氏の前で手を繋ぐ!?
どういう神経してんのよ、お兄ちゃん!
私は振り返って流斗さんの様子をうかがった。
彼は笑顔を崩さず、肩をすくめている。
さすが親友。
こういう兄の行動にも、慣れているのかもしれない。
けれど、流斗さんの笑顔の奥に、ほんの少しだけ――寂しげな色が見えた気がした。
教室の前まで来ると、ようやく兄が手を離してくれた。
強く握られていた手のひらには、じんわりと熱が残っている。
兄はその場に立ち止まり、私をまっすぐに見つめた。
……何かを言いたげな沈黙。
その真剣な眼差しに、思わず視線を逸らす。
「じゃあ、またお昼に来るから」
「別に、そんな毎日来なくていいよ」
「いいから」
有無を言わせない一言に、口を閉じるしかなかった。
反論の余地なんて与えてくれない。
「え、咲夜さん? なんでここに?」
その声に振り返ると、蘭が驚いたように目を丸くして立っていた。
ぱちぱちと瞬きを繰り返しながら、蘭が私たちのほうへ駆け寄ってくる。
その瞳は輝いている。きっと兄に見惚れているのだろう。
「珍しいですね! 朝から咲夜さんが教室まで来るなんて」
蘭が嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。
「ああ、羽鳥さんか。おはよう。いつも唯のこと、ありがとうな」
兄が柔らかく微笑むと、蘭の頬がみるみる赤く染まった。
「い、いえ……そんな……」
小さく頷きながらも、蘭はぽーっと兄を見上げていた。
兄はそんな様子に気づいているのかいないのか――私に軽く笑いかけると、背を向けて歩き出す。
蘭はぼんやりとその背中を目で追いながら、うっとりとした表情を浮かべている。
「……ほら、行くよ」
私は、夢見心地な蘭の腕を引っぱって、教室の中へと連れていった。




