第28話 お兄ちゃんの彼女は、完璧すぎて
誰? この可愛い子……。
私は思わず目を奪われる。
ふわりと巻かれたピンクラベンダーの髪。
長くて濃いまつげに、大きな瞳。
小さな口元にそっと手を添え、恥じらうような仕草。
その小さな顔と、バランスの取れたスタイル。
出るところはしっかり出ていて、ウエストはキュッと締まっている。
どう見ても、完璧な美少女だった。
そんな彼女が、にっこりと微笑んだかと思うと、すぐさま兄の元へ駆け寄っていく。
「咲夜くん! もう、探したんだから」
兄のそばにぴたりと立ち、嬉しそうにその手を握る。
そのまま一歩身を寄せ、可愛らしい顔をぐっと近づけた。
至近距離で見つめられても、兄はどこかあっさりとした表情で見つめ返していた。
「おまえ、なんでこんなとこに?」
兄は嫌そうに眉をひそめる。
けれど彼女は気にも留めず、にこにこしながらぐいぐいと距離を詰めていく。
「それはこっちの台詞よ。
最近、休み時間もいないし、お昼も見かけなくて。
やっと見つけたと思ったら、屋上って。しかも……」
言いかけて、ふと私に視線を向ける。
まっすぐな瞳が、品定めするようにじっと見つめてきた。
「あの……もしかして、咲夜くんの妹さん?」
どこか訝しげな表情で、ぐっと距離を詰めてくる。
そこで、はっとする。
しまった、私、今男子のブレザー姿なんだっけ!
どうしよう。
緊張で喉が詰まりそうになる中、私はなんとか声を絞り出した。
「あ、はい。そうです。川野唯っていいます。あの……」
私がまごついていると、彼女がニコッと可愛い笑みを浮かべた。
「申し遅れました。私、咲夜くんの恋人の水梨加奈です。よろしくね」
……は?
あまりに無邪気な笑顔で放たれた、衝撃の自己紹介に、私は呆然と立ち尽くした。
兄に彼女がいることは知っていたけれど……実際に会うのは初めてだった。
こんなに可愛い子が、お兄ちゃんの彼女だなんて。
驚きと共に、胸の中が絶望感でいっぱいになる。
「咲夜くんったら、こんなに可愛い妹さん、どうして早く紹介してくれなかったのよ。
存在は聞いてたのに、なかなか会わせてくれなくて……ちょっと寂しかったんだからね」
そう言いながら加奈さんは頬を膨らませ、すっと手を差し出してくる。
握手……だよね?
私は緊張しながら、その手を取った。
「よろしくね、唯さん……ところで、その服装は趣味?」
にこやかにそう尋ねられ、私は一瞬で固まった。
「あ、えっと」
頭が真っ白になる。どうしよう――
「そ、そうなんだよ! こいつ、コスプレ……趣味でさ!」
兄がすかさず口を挟んだ。
「ふーん、そうなんだ。可愛い、似合ってるよ」
加奈さんは満面の笑みを向けてくる。
よかった。あまり気にしていないみたい。ちょっと変わった人だな。
――でも、なんでだろう。
その笑顔が、どこか息苦しい。
友好的なはずなのに、視線が妙に鋭くて、じわじわと胸が詰まるような気がする。
とりあえず笑顔を返したけれど……うまく笑えた自信はなかった。




