第27話 仮説と確信と、加奈の登場
「うっ……」
胸の奥に、いきなり強い痛みが走った。
息が詰まり、思わず胸を押さえてその場にうずくまる。
「おい、大丈夫か!?」
「優くん? もしかして……」
二人が急に慌て出す。
これって……もしかして、戻るサイン?
心臓がギュッと締めつけられる。
ドクドクと激しく脈打ち、全身が熱を帯びていく。
く、苦しいっ。
一瞬、心臓が大きく跳ねるように鼓動し、体が沸騰するような感覚に包まれた。
「はっ……ん……」
荒く呼吸を繰り返しながら、必死に自分を落ち着けようとする。
やがて、火照った体が少しずつ静まりはじめ――
二人の視線を感じながら、私の鼓動もようやく平常に戻っていった。
鼓動が落ち着き、ようやく呼吸が整ったころ――私はゆっくりと顔を上げた。
目の前には、兄と流斗さん。
二人とも、すぐそばにしゃがみこみ、心配そうに私を見つめていた。
そのとき、不意に兄の腕が私の体を包み込む。
「よかった! ……また元に戻れたんだな」
驚いて目を瞬かせながら、私は兄の腕の中からそっと見上げた。
真剣なまなざしがまっすぐにこちらを捉え、隣では流斗さんが微笑みながら小さくうなずいていた。
そっか……私、戻ったんだ。
ほっと息をついてから、ふと思う。
流斗さんの仮説、当たってるかもしれない。
今回も、戻るときの症状は前回とまったく同じ。
優になったときだって、二回とも似たような動悸があった。
まだ確証はないけれど、少しずつ手がかりが見えてきている。
そんなことを考えていた、そのときだった。
屋上の扉が、ガンッと大きな音を立てて開く。
「咲夜くん!」
甲高い声が響き、扉の向こうからひとりの女生徒が姿を現した。
一瞬で、場の空気が変わる。
彼女の姿を見た瞬間、兄の目が大きく見開かれた。
「加奈……」




