第26話 名推理、そして見透かされた心
「いただきます」
三人で一緒にお弁当を広げた。
兄と私のお弁当は、今日も母の手作り。
そして例によって――母の趣味が全開のキャラ弁だった。
私はその可愛らしさに、にんまり。
ふわりと笑みがこぼれる。
こっそり隣をチラ見すると……案の定、兄は苦い顔をしていた。
どうやら、キャラ弁には毎度うんざりしているらしい。
「ふふっ、相変わらず二人のお弁当は可愛いですね」
流斗さんがそう言って微笑むと、私は嬉しくなって、ぺこりと頭を下げた。
けれど兄は、どこか複雑そうな表情のままだった。
「ところで、変身したときのこと、詳しく教えてもらえますか?」
不意にそう切り出され、私は少しだけ姿勢を正した。
ちゃんと答えなきゃ、と胸の内がそわそわする。
変身のときの状況や、どんな感覚だったか――記憶をたどりながら、言葉を選んで説明していく。
「うーん……なるほど」
話を聞き終えた流斗さんは、ゆっくりとうなずき、腕を組んで少し考え込んだ。
沈黙が落ちる。
その表情を読み取ろうと、私はそっと彼の横顔を見つめた。
そして、やがて静かに口を開く。
「一つ、仮説が浮かんだんですけど、言ってもいいですか?」
私は身を乗り出して、真剣に頷いた。
「唯さんから優くんになるきっかけは、心拍数が急激に上がった瞬間なんじゃないかと思います。
そして優くんから唯さんに戻るときは、胸が苦しくなって、発作のような症状が起きたとき。
その発作の原因まではまだ分かりませんが……」
流斗さんは、私と兄を順番に見つめる。
まるで「どう思いますか?」と問いかけてくるようなまなざしだった。
たしかに。私が優になるとき、毎回、お兄ちゃんと何かしら接触して、ドキドキしていた気がする。
……って、ちょっと待って。それって。
流斗さん。私が兄と触れ合ってドキドキしてるって、気づいてるってこと?
私、変身の状況しか話してないのに。
それでそう思ったってことは――私の気持ち、バレてる?
思わず目を見開き、流斗さんを凝視した。
すると流斗さんは、すべてをわかっているように、ふっと笑った。
この笑顔……ああ、やっぱり。全部見透かされてる気がする。
ひえ~。恥ずかしいやら、悔しいやら。
私は動揺を隠すように、ぎこちなく笑い返した。
……うん。深く考えるのはやめよう。
今はそれより、変身のことだ。
流斗さんの仮説は的を射ている。
変身するときの動機も、戻るときの発作も、彼の言う通りだった。
さすが流斗さん。名推理かも。
「おまえ、すごいな。さすが流斗、生徒会長様だな」
「それ、関係ないよ」
兄の軽口に、流斗さんが苦笑混じりに返す。
ふっと空気が和らぎ、私はそっと息を吐いた。
変身のきっかけが、少しでも見えてきた気がして――それが嬉しかった。
何もわからないより、ずっと心強い。
不安だった気持ちが、少し軽くなる。
きっと、流斗さんがいてくれたから。
そう思った、その瞬間だった。




