第22話 二人きりの夜、ドキドキ
兄が作ってくれたオムライスを夢中で平らげた私は、後片付けに精を出す。
料理はできないけれど、せめて皿洗いくらいは率先してやりたい。
「じゃあ俺、風呂入ってくるな」
兄はそう声をかけると、そのまま浴室へと向かっていった。
皿洗いを終えた私は、兄がお風呂から出てくるのを待ちながら、なんとなくテレビを眺める。
特に面白い番組も見つからず、ぼんやりと画面を見つめていた。
十五分ほど経ったころだろうか。
兄の足音がこちらに近づいてくるのが聞こえた。
胸が、ひそかに高鳴る。
なんだか、お風呂上がりの兄を迎えるって、ドキドキしてしまう。
……私だけなのかな、こんなふうに感じるのは。
ずっと一緒に住んでいるのに、どうしても緊張してしまう。
このふたりきりの時間。
毎月訪れるたび、胸の高鳴りが増している気さえする。
落ち着け、私。
いつも通り、普通に振る舞えばいい。
「あがったよ。唯もお風呂入りな」
兄がリビングに入ってきて声をかける。
私は何でもない顔で振り返り、笑顔を向けた。
「うん、そうするね……っ!」
思わず声が詰まる。
視界に飛び込んできたのは、兄の艶やかな肌。
寝間着の上のボタンはすべて外され、上着を羽織っただけの無防備な姿だった。
開いた隙間から覗く素肌に、目が釘付けになる。
私が固まったまま見つめていると、兄は首をかしげながら近づいてくる。
「どうした? ぼーっとして」
距離が縮まり、私は慌てて立ち上がった。
「な、なんでもない! さ、お風呂行こっかな」
目線を逸らし、急いで歩き出したとき――
「きゃっ」
兄の横を通り過ぎる際、体がわずかにぶつかってしまった。
「おっと」
とっさに兄が私の体を抱きとめる。
「お前、ほんっとドジだな」
支えられたまま、至近距離で兄と見つめ合う。
触れ合う体、至近距離からのまなざし、微笑み。
しかも、無防備な肌が目に入る。
もう、どこを見たらいいのか分からない。
心臓がドクドクと速く脈打つ。
ひーっ、た、助けて!
私はぎゅっと目をつむった。
「え? わあ! おいっ」
兄が驚いたような声を上げる。
え? なに、どうしたの?
恐る恐る目を開けると、兄が目を大きく見開き、驚いたように私を見つめていた。
まって、この反応は、まさか……。
悪い予感が胸をよぎる。
「唯……残念」
兄のそのひと言で、すべてを悟った。
――また、優になったんだと。




