第18話 理事長室で、ぎゅっと
父に連れられ、私は理事長室へとやってきた。
ソファーに腰掛けると、父が温かいお茶を差し出してくれる。
湯気がふわりと立ちのぼり、ひと口飲むと、じんわりと心がほぐれていく気がした。
「それにしても驚いたよ」
父は私の向かいに腰掛け、目を細めて微笑む。
「まさか、急に元に戻るなんてね」
じっと見つめるまなざしは、どこまでも優しい。
――そう、さっきの発作で、私は元の姿に戻っていた。
偶然そこに父がいてくれたからよかったけど、もし他の誰かに見つかっていたらと思うと、ぞっとする。
今日は休みのはずの唯が、学ラン姿でいたら、きっと驚くだろう。
でも……どうして戻れたんだろう。
発作が引き金になった? けど、優になったときは、そんなことはなかったはずなのに。
考えが巡る中、休憩時間を知らせるチャイムが鳴った。
その音が鳴り終わるころ、理事長室の扉が勢いよく開かれる。
「唯!」
息を切らして兄が飛び込んできた。
「お兄ちゃん……」
兄は私を見つけるなり駆け寄り、ぎゅっと抱きしめる。
「心配したぞ! 授業中に父さんから連絡がきて……すぐにでも飛び出したかったのに、我慢したんだ」
そう言いながら、兄の腕にぐっと力がこもる。
授業中に連絡って、それアウトじゃない?と心の中で突っ込みつつ、
抱きしめられたまま、ふっと肩の力が抜けるのを感じた。
このぬくもりに、やっぱりほっとしてしまう。
「元の姿に戻ったんだな。よかった」
兄は腕をゆるめ、そっと私を見つめる。
「う、うん。私もびっくりしてるの。ありがとう」
見つめ合う私たちのすぐそばに、父が静かに立った。
間に割って入るように視線を差し込み、穏やかに口を開く。
「咲夜くん、ちょっと落ち着こうか」
兄ははっとしたように私から体を離し、気まずそうに隣へ腰掛ける。
父も向かいのソファに腰を下ろし、軽く咳払いをしてから口を開いた。
「さて、なんで唯が戻ったのかはわからないけれど……。
今の時点で分かっていることを整理しようか」
その声に、私も兄も真剣な顔で頷く。
普段はおっとりした父が、今はなんだか頼もしく見える。
さすが理事長といったところか。
「唯の証言から推測するに――。
唯が優になったきっかけは不明。ただし、唯に戻る時は発作が関係している可能性がある……と」
父が淡々と整理してくれる。
私は息をのんで父の言葉を待った。




