第16話 恋と謎が絡み合う午後
「なるほどねえ」
ぽかぽかと暖かな日差しが降り注ぐ中、流斗さんはタコさんウインナーを口に頬張りながら、うんうんと頷いている。
あのタコさんは、流斗さんの手作りなのだろうか。
もしそうなら、意外な可愛い一面を発見してしまったみたいで、なんだか嬉しい。
流斗さんって、そういう素をなかなか見せない人だから。
掴みどころがないというか……。
私もお弁当を広げるけれど、あまり喉を通っていかなかった。
やっぱり、そんなにすぐ気持ちを切り替えられるほど、私は能天気じゃない。
誰かさんとは違って――。
ちらりと兄に視線を向ける。
兄はガツガツとお弁当を平らげ、もうすぐ完食しそうな勢いだった。
けれど、その目だけは流斗さんをじっと睨んでいる。
食べるか睨むか、どっちかにすればいいのに。
この場所をあっさり当てられたことが、かなりショックだったらしい。
自分の考えを読まれたのが気に食わない、と。
正直、私にはその気持ちがよくわからなかった。
兄が何をそんなにムキになっているのか、やっぱり謎だ。
でも、それ以上に驚いたのは、流斗さんに私の正体がバレていたこと。
いつ、どこで気づかれたのかはわからない。けれど――
私は思い切って、変身のことを全部打ち明けた。
流斗さんなら、信じてくれる気がしたから。
案の定、彼は真剣な表情で、ひと言も遮らずに最後まで話を聞いてくれた。
しばらく沈黙が続いたあと、流斗さんはふと顔を上げた。
「僕の見解だけど……その前日に食べたクレープが怪しいと思う。何か変な感じしなかった?」
流斗さんの問いに、私はハッとする。
――そういえば。
おまけで貰ったイチゴ。
あれを飲み込んだ瞬間、電流が走ったような感覚があった。
「何か、思い当たることあるの?」
考え込む私に、流斗さんが訝しげに尋ねる。
「あ、はい。……イチゴを飲み込んだとき、電流が走ったような感覚があって。
でも一瞬だったし、そのあと何もなかったから気にしなかったんです。
もしかして、あれが原因……?」
「おまえ、そんなことがあったのか? なんで早く言わないんだよ」
兄が不満そうに顔を寄せてくる。
端正な顔が目前に迫り、鼻が触れそうな距離。
「もう、お兄ちゃん! 近いってば!」
慌てて押し返すと、兄はそっぽを向きながら口を尖らせた。
「なんだよ、今さら。別にいいだろ」
ん? 顔が少し赤いような……。
しかも目が泳いでる? 気のせい?
私が横目で兄を確かめていると――
「それだよ。そのイチゴに何か仕込まれてたのかもしれない。クレープ屋が怪しいね」
流斗さんが名探偵ばりに鋭く言い切った。
でも、確かにそうかも。
普通に考えて思い当たるのは、あれくらいしかない。
――っていうか、私あのとき言ったよね? ビリってしたって。
……うん、確かに言った!
でも二人とも、全然取り合ってくれなかったじゃん。
私はひとり悶々としながら腹を立てていた。
すると兄が、自分の手柄みたいに意気揚々と告げる。
「よし、今度また公園に行ってみようぜ。あのクレープ屋に会えるかも」




