第14話 波乱の転校初日
教室に足を踏み入れた瞬間、クラス中の視線が一斉に私へと向けられた。
ドキンと胸が跳ねる。
注目されるの、苦手なのに……これはきつい。
戸惑いながらも、一歩一歩、床を踏みしめ前へ進む。
教壇の前に立ち、ぎこちなくクラスを見渡した。
「皆さん、今日からこのクラスの仲間になります。南優さんです」
先生が紹介すると、教室はざわめきに包まれる。
うう〜、緊張する!
「南、優です。人見知りなところもありますが、仲良くしてください」
なけなしの勇気を振り絞って笑顔を作ると、控えめな拍手が起こった。
けれど、視線の集中砲火は相変わらず。
こそこそと話す女子たちの視線が痛いほど刺さる。
ま、転校生なんてこんなもんだよね……。
っていうか、正体バレてないよね!?
自己紹介を終えた私は、促されるまま席へと座った。
ふう……ひとまず第一関門突破かな。
そう思ったのも束の間だった。
休み時間になると、私の席はあっという間に人だかりに囲まれてしまった。
「どこから来たの?」
「好きな食べ物は?」
「兄弟いるの?」
矢継ぎ早の質問に、たじたじになりながら笑顔で応じていく。
その中に――どこか見覚えのある顔。
ら、蘭?
驚いて目をこらすと、確かに彼女がこちらを見ていた。
えっ、なんで蘭が!?
蘭がにこりと微笑み、人だかりをかき分けて歩み寄ってくる。
そして、顔を近づけ、低い声で囁いた。
「ねえ、南……優くん? あなたって、うちのクラスの川野唯に似てるわよね」
背筋がピンと伸びる。
ば、ばれた!?
目を丸くして蘭を見る。
どうしてみんな、そんなに鋭いの!?
流斗さんといい、蘭といい……。
やばい、なんとかごまかさないと!
私は必死に昨日の家族会議で決めた設定を思い出す。
「ああ、川野唯ね。僕、唯の従弟なんだ」
そう言った瞬間、その場にいた全員が「ええっ!?」と声を上げた。
蘭の笑みがすっと消える。
一瞬の静寂のあと、教室はざわめきに包まれた。
「へー! やっぱり似てると思った」
「ね、可愛いと思った!」
「咲夜さんとも従弟ってことだよね? なるほど〜」
飛び交う声に、私はついていけない。
蘭がじっと顔を覗き込んでくる。
美しい顔が近づき、思わず見惚れてしまった。
……やっぱり綺麗だなあ。
蘭って美少女だ。
「ふーん、唯の従弟なの。……ふーん」
じろじろと見つめるその視線に、私は慌てて顔を逸らした。
「私、羽鳥蘭。唯の親友なの。よろしくね」
蘭はにこっと微笑み、瞳を輝かせる。
その表情はまるで恋する乙女のようで――ぎくりとする。
まさか……いや、気のせいだよね?
私は首を振り、浮かびかけた考えを振り払った。
その後も質問攻めは続き、私は応戦するしかなかった。
なぜか皆、私や兄のことを興味津々に聞いてくる。
なんでそんなに、私たちのことが気になるの?
ふと気づけば、蘭の姿は輪の中から消えていた。




