第144話 蘭への告白
昼下がりの屋上。
やわらかな風が私と蘭の間を通り抜けていく。
空を見上げれば、青がまぶしい。
緊張する。私はふぅと息をつき、口を開いた。
――怪しい奴に薬を飲まされて、優になっていたこと。
そして、今はもうその体質が治ったこと。
ひとつずつ、言葉を重ねていく。
蘭は目を丸くしたまま、じっと耳を傾けていた。
言い終えた瞬間、私はそっと視線を落とした。
「蘭……黙っててごめんね。
本当は、ずっと言いたかったんだけど。あなたの優への気持ちを知れば知るほど……悲しませたくなくて、言えなかった。
騙すような形になってしまって、本当にごめんなさい」
深く頭を下げる。
蘭は黙ったまま何も言わない。
沈黙が重い。
いったいどんな顔をしているのか。
想像すると怖くて、頭を上げることができない。
ただ、必死に下げ続けた。
ようやく、ぽつりと蘭がこぼす。
「唯……」
おそるおそる顔を上げる。
蘭は目を見開いたまま、呆然と立ち尽くしていた。
その顔からは何も読み取ることができない。
じっと見つめると、彼女が一歩踏み出し――
いきなりぎゅっと抱きしめられた。
柔らかな温もりに締め上げられ、息が詰まる。
予想もしなかった展開に、目を白黒させる。
「ら、蘭?」
戸惑う私を、蘭がまっすぐ見据える。
その目はきらきらと輝き、頬はほんのり紅潮していた。
「唯、優くんだったの!? マジで?」
その勢いに押されながら、私は小さく頷いた。
「う、うん……」
「すっごーい! そっかあ、なるほどね。
だからドタイプだったわけだ。納得~」
蘭は嬉しそうに何度も頷く。
いったい何がどうなっているのやら。
今度は私が呆然と蘭を見つめた。
「いやー、そうだよね。おかしいと思ってたんだ。
めっちゃ唯に似てたし。
私ね、ずっと前から唯が男の子だったらよかったのになーって思ってたの。
だって、唯、めっちゃタイプなんだもん!
……あ、でも別に唯を恋愛対象として見てるわけじゃないから。勘違いしないでね!」
蘭はまくしたてるように一気にしゃべりきると、ふうっと息をついた。
「う、うん……」
彼女の勢いに圧倒された私は、ただただ頷くことしかできない。
「まあ……さ。そりゃ、優くんがいなくなったのは残念だよ。
でも、これではっきりした。私には唯しかいないって!
これからは今まで以上に、唯のことを愛しぬくよ」
力強く宣言しながら、どこか遠くを見つめる蘭。
その目は少し切なげだった。
優のことを思っているのだろうか。
でも……いったい、どういうこと?
私は目を瞬かせながら、彼女を見つめた。




