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義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます  作者: 桜 こころ
こじ恋しゅうりょう!大団円

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第143話 屋上の約束 伝えたい想い

 ひんやりとした朝の空気が、頬をかすめる。

 通学路を早足で歩く中、兄がふと足を止めた。


「少し出遅れたな、急ぐぞ」


 兄はそう言って、手を差し出した。


 え、これって……?

 戸惑っていると、兄が私の手をぐいっと奪う。


「バカ、手を繋ぐに決まってんだろ」


 ニヤッと笑う兄に、胸が小さく跳ねた。


 な、何よこの展開。ときめくじゃない。


「う、うん」


 繋がれた手をぎゅっと握り返すと、兄は嬉しそうに微笑んだ。

 そして私たちは、手を繋いだまま駆け出した。



 学校が見えてきた頃、校門の前に立つ流斗さんの姿が目に入った。

 にこにこと笑いながら、私たちに手を振っている。


「おはよう。相変わらず仲がいいね」


「おお! 流斗、おはよう」


「おはようございます」


 兄が足を止め、私もつられるように立ち止まる。

 息を整えていると、兄が早口で言った。


「あー、昼休み、屋上に集合な。話したいことがあるから」


 言い終えると、ちらりとこちらを見た。


 ――ああ、そうか。変身のこと、ちゃんと話さないと。


 私は小さく頷いた。


「え? 何、嬉しい報告? ふたりの惚気は聞きたくないよ」


 わざとらしく肩をすくめて笑う流斗さん。

 でもその冗談を、兄の真剣な声が一変させた。


「そんなんじゃねえ。大切な話だ」


 珍しく強い口調に、流斗さんの表情が少しだけ引き締まる。


「ふーん、わかった」


「やばっ、遅刻する!」


 兄が急に走り出し、私は強引に手を引かれる。

 転びそうになりながら必死についていく。


 ふと振り返ると、流斗さんがやさしく目を細め、こちらを見送っていた。


 ……流斗さん、ありがとう。そして、さようなら。


 そんな思いを込めて、せいいっぱいの笑顔を返す。

 流斗さんも察したように、にこりと笑った。


「なにへらへらしてんだ、行くぞ!」


 兄はスピードを緩めることなく、ぐいっと私の手を引く。


 ――ほんと、強引なんだから。

 ため息まじりに兄の背中を見つめる。

 それでも、やっぱり愛おしいんだよなあ。


 その勢いのまま教室まで走り抜け、どうにか遅刻は免れた。

 けれど、私の息はもうすっかり上がっていた。




 昼休み。

 私は蘭を誘い、屋上へ向かっていた。


 ――彼女にも、話しておかなくちゃ。


 階段を上るたび、鼓動が速くなる。


 変身のこと。蘭にはずっと黙っていた。

 ……騙していたようなものだ。


 許してくれるだろうか。


 胸に不安が渦巻いていく。

 屋上に着くと、すでに兄と流斗さんの姿があった。


「おう、来たか」


 兄が笑いかける隣で、流斗さんがじっと私を見つめる。

 嬉しそうな顔なのに、どこか瞳が潤んでいる。


「唯さん……」


 感極まったように近づいてきた流斗さんが、そっと私を抱きしめた。


「よかったねえ、元に戻れて」


 その言葉で、すぐに察した。


 ああ、もう聞かされてるんだ。

 私が元に戻って、もう変身しないことを。


「ありがとう、流斗さん」


 抱き返そうと、そっと腕を伸ばしかけた、そのとき――。


「てめえ、人の女に何してんだ!」


 慌てて駆け寄ってきた兄が、私たちを引き剥がす。


「なんだよ、ちょっとくらいいいだろ?

 咲夜は毎日唯さんを堪能してるんだから」


「なっ!」


 兄は顔を真っ赤にし、流斗さんは拗ねたように視線をそらした。


「おまえ、なに言ってんだ! そ、そんな――」


 兄がさらに詰め寄ろうとしたところで、私は二人の間に割って入った。


「もう、やめてよ! 喧嘩するためにここに来たんじゃないでしょ?」


「あ……ああ」


 私がたしなめると、兄はしゅんと肩を落とした。


「あ、あのぉ。私、事情がよくわかってないんですけど」


 しばらく静観していた蘭が、ぽつりとつぶやいた。

 置いてけぼりをくらった子どものように、きょとんと立ち尽くしている。


 そうだ、蘭にもちゃんと話さなきゃ。


 心を決め、彼女へ向き直った。


「――蘭、話があるの。驚くかもしれないけど、聞いて」


 私の真剣さに少し驚きつつも、蘭は戸惑いながら小さく頷いた。


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