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義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます  作者: 桜 こころ
謎と変身、すべての終わりに

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第138話 愛の解毒剤、そして逃走

 兄の迫力に怯んだ男が、慌ててポケットを探る。

 取り出した手には、飴玉のような包みが握られていた。


 兄はそれをひったくると、鋭い眼差しで男を睨みつける。


「これ、本当に解毒剤なんだな?」


 男はブンブンと首を縦に振った。


「もしまた変な薬だったりしたら……ただじゃ済まないからな」


 そう言い捨て、兄は男に背を向ける。

 怒気をまとったまま、まっすぐ私のもとへ歩いてきた。


 そして目の前に立つと、そっと手を差し出した。


「ほら、これ」


 兄の掌には、さっき男から奪い取った小さな包みが乗っていた。

 カラフルな包装に包まれた丸い球体。

 ……ほんと、飴玉みたい。


 これで、私の体質が戻るって?


 その包みをじっと見つめながら、ゴクリと唾を飲み込む。

 本当に飲んで大丈夫なの?

 もし、また変な薬だったら――。


 不安がじわじわ広がっていく。


 そんな私の気持ちを見透かしたように、兄が優しく微笑む。


「大丈夫。あいつ、嘘をついてる感じじゃなかった。俺を信じろ」


 まっすぐな瞳。

 どこまでも澄んでいて、見ているだけで心が落ち着いていく。


 信じたい――自然とそう思えた。


 私はそっと頷いた。


 あの男はどうあれ、お兄ちゃんのことは……信じられる。


 覚悟を決めて、その飴玉を口に放り込む。

 ごくりと飲み込んだ。


「……」


 特に何も感じない。

 本当に、元に戻ってるのかな?


「どうした? 何か変化あるか?」


 兄が少し期待したように私を見る。


「ううん、特に……」


 その返事に、兄の眉がぐっと寄った。


「おい! 本当に元に戻ってるんだろうな!?

 もし嘘だったら、おまえどうなるかわかってんだろうな!」


 怒鳴りながら兄が振り返る。

 ――けれど、そこに男の姿はもうなかった。


 さっきまで確かにそこにいたのに、まるで煙のように消えていた。

 辺りを見回しても、影ひとつ見当たらない。


「しまった。逃げやがったな!」


 兄は悔しそうに地面を思いきり蹴った。


「くそ……っ、やられた」


 その場に力なく座り込み、悔しそうに唇を噛む。

 肩を落とした横顔が、なんだか切なかった。


 私のために、必死になってくれる。

 そんなお兄ちゃんが、どうしようもなく愛おしい。


「もういいよ、ありがとう。

 ……とりあえず、もう遅いし、帰ろ?」


 私が微笑むと、兄は一瞬だけ戸惑ったような顔を見せ、それからそっと微笑んだ。


 手を伸ばすと、兄の手が静かに重なる。

 触れ合った手が、あたたかい。


 たとえ何があっても、大丈夫。

 そう、心から思えた。


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