第135話 変身の秘密と、謎の男の正体
兄と……そして、あの男と一緒に公園へやって来た。
彼の言葉が気になっていたし、なにより――ずっと探していた相手だ。
ようやく会えたからには、きちんと向き合って話したかった。
道ばたでは落ち着いて話せそうにない。
だから私は、すべての始まりとなったこの場所を選んだ。
彼は何も言わず、ただ黙ってついてくる。
かつて出会ったあの場所で足を止め、振り返った。
そして、正面から男を見つめる。
「どういうことか、説明して」
睨みつけるように告げると、隣にいた兄も力強くうなずいた。
男はキャップを深くかぶっていて、表情はほとんど見えない。
そのせいか、かえって不気味さが際立っていた。
やがて男が小さくうなずき、口を開いた。
「君には……本当に悪いことをしたと思っている。
私が、君に薬を飲ませた」
そう言って帽子を取り、深々と頭を下げる。
顔を上げた男を見て、私は思わず目を見張った。
無精ひげを剃って服を整えれば、かなりイケてる部類に入るんじゃないだろうか。
整った目鼻立ち、スラリとした体形。どこか優しげな雰囲気をまとった――いわゆる“優男”タイプ。
「僕は、ある施設の研究員なんだ。詳しい情報は教えられないけど……薬を開発していたんだ」
男はそう言いながら、ゆっくりと空を見上げた。
その瞳が怪しく揺らめき、語り口にも次第に熱がこもっていく。
「来る日も来る日も、研究に没頭していた。
そしてある日、ついにとんでもない薬を完成させてしまったんだ!」
男は、まるで何かに取り憑かれたかのように目を光らせながら語る。
「そう! 君が飲んだ薬だよ。
それを飲むと、性別が逆転するんだ!」
手を広げ、興奮気味に叫ぶ。
だがその直後、ふと肩を落としため息をついた。
「でも……それは、あくまで理論上の産物。実際に人に試したことなんてなかった。
研究員仲間やその家族、いろんな人に頼んだけど、誰も試してくれなくて……」
そりゃそうだろう。
そんな怪しげな薬、普通は誰だって飲みたくない。




