第129話 最強幸せ家族 おかえり、恋するふたり
私は両親の反応を見るのが怖くて、ぎゅっと目を閉じた。
……沈黙。
しばらく誰も声を発さない。
気になって、そっと目を開けると、
両親は驚いた表情のまま、固まっていた。
目を丸くし、口を少し開けたままぽかんとしている。
その反応……いいの? 悪いの? どっちなの。
不安が胸をよぎったそのとき――
「うん、わかってるよ」
「ずっと前から、咲夜は唯ちゃんラブだもんねぇ」
さっきのぽかん顔はどこへやら、両親はにこにこと顔を見合わせ、うんうんと頷いた。
「え? 二人とも、俺の気持ちに気づいてたの?」
兄は目をぱちくりさせる。
私も同じように目を瞬かせた。
「うん、もちろん。唯の気持ちも、ちゃんとわかってたよ」
父が優しく目を細めて笑い、母もあたたかい眼差しを向けてくる。
「え、え? なに、どういうこと? ……いいの?」
私はすっかり気が動転してしまった。
まさかこんな展開になるなんて、夢にも思わない。
ずっと前から、両親にバレていたなんて――。
「いいって、もちろんいいに決まってるよ。
唯と咲夜くんは本当の兄妹じゃない。
血が繋がっていないんだから、恋をしてもいいんだよ。
もちろん、結婚だってできるしね」
「まあ素敵! 二人が結婚してくれたら、私たちずっと一緒にいられるじゃない!」
父と母が嬉しそうに手を取り合う。
私はぽかんとその光景を見つめていた。
こんなにあっさり受け入れてもらえるなんて……
もっと反対されたり、難しい顔されるのかと思ってた。
「最近、二人の空気が変わったのはわかってたよ。
あれ、これはついに来たかな? って感じだった」
父が幸せそうに微笑み、母も頷く。
「そうそう。こんなに想い合ってるのに、なかなか進展しないから……こっちがムズムズしちゃって。
まるで少女漫画やドラマのすれ違いを見ているみたいだったわぁ」
母は頬をほんのり染め、嬉しそうに声を弾ませる。
勝手に盛り上がる両親。
完全に置いてけぼりの私たち。
そっと兄の様子を窺うと、あっけに取られたような顔で両親を見ていた。
私の視線に気づくと、兄が苦笑いを浮かべる。
「ほんと……俺の母親と唯の父さんって、最強カップルだな。
いろいろ悩んでたのが、アホらしくなるわ」
あきれたような、でもどこか嬉しそうな笑顔。
「……うん、わかる。でも、すごく嬉しい。
こんな両親がいてくれて、私、幸せだよ」
ふっと笑うと、兄も吹っ切れたように笑った。
「だな!」
「あらあら、二人して、なにラブラブしてるの?」
母は口元を緩め、すかさず茶々を入れる。
すると父がちょっと真面目な顔になって、兄へ向き直った。
「いけないなぁ、両親の前でいちゃいちゃするのは。
咲夜くん、唯とは健全なお付き合いを頼むよ?」
「は、はあ……」
兄がたじたじになりながら、頭をペコリ。
「も、もう、お父さんったら!」
私がツッコミを入れると、四人で笑い合った。
こうして――
心配していた両親への報告は、思いがけないほどあっけなく終わったのだった。




